事件現場や災害時の捜索で活躍する「警察犬」といえば、シェパードなどの大型犬を思い浮かべる人が多いと思いますが、中にはトイプードルなどの小型犬も活躍しているそうです。かわいらしいトイプードルも、シェパードに劣らない活躍ができるのでしょうか。獣医師の増田国充さんに聞きました。

もともとは狩猟犬、運動能力高い

Q.トイプードルの特徴を教えてください。

増田さん「トイプードルは、体高がおよそ24〜28センチ、体重は成犬時に2〜4キロで、小型犬のカテゴリーに属します。性格は、聡明(そうめい)で好奇心旺盛であることが多い傾向にあります。もともとプードルは水猟(湖周辺や川辺での狩猟)で活躍していたことから、小型犬ながら運動能力も高く、また理解力にも優れているため家庭犬としても飼いやすく、愛くるしい外貌であることから、不動の人気を誇っています。少々神経質な面もあるため、苦手意識を持たせないよう、コツコツとトレーニングを行うことが推奨されます。

このような特性がこの犬種の特徴とされるため、何かを発見し精力的に活動することから、アジリティ(犬の障害物競走)やドッグダンスを得意とする子もみられます」

Q.シェパードの特徴を教えてください。

増田さん「シェパードは、正式にはジャーマンシェパードという種類で、体高が60〜70センチ、体重はおよそ30キロ台となり、大型犬に属します。牧羊犬としてつくり出された犬種であるため、飼い主に対しては従順である一方、警戒心も持ち合わせています。

冷静に周囲の状況を把握できる賢さを持ち合わせ、指示に対して忠実にミッションをこなすタイプであることから、使役犬の代表格ともいえます。それゆえ、警察犬としてジャーマンシェパードが重用されているのです。また、体力も十分備わり、勇敢な一面も持ち合わせます。ジャーマンシェパードは、古くから軍用犬や警察犬としてヨーロッパで活躍しています」

Q.警察犬の仕事とは。

増田さん「警察犬の仕事は主に、次の4つに大別されます。

・麻薬探知(主に空港の税関をはじめ麻薬等の薬物を検知する)
・跡追及(事件現場に残された遺留品から、そのにおいをかぎ分け、居場所を追及する)
・気選別(容疑者と、現場に残されたにおいが一致するかの鑑別を行う)
・威警(その存在で犯罪を抑止、不審者の追跡などを行う)

これらの中で、犬種や個々の特性で優れた部分によって、就役します。警察犬が任務を行う上では、十分な体力、従順性、集中力などが特に要求されます。服従訓練のほか、臭気選別訓練や警戒訓練といったトレーニングを経て、適性をチェックします」

Q.トイプードルは警察犬として、シェパードに負けない活躍ができるものなのでしょうか。

増田さん「先ほど述べた通り、警察犬の中でも、それぞれの得意分野に合わせた任務を遂行しています。昨年末に話題となり、2022年から警察犬として活躍が期待されているトイプードルのハンナちゃんは、主に行方不明者の捜索に従事することが予定されています。警察犬が活躍する範囲にもよりますが、建造物の倒壊や狭い場所などで、大型犬では活動が難しい場面で、機動性を生かした鑑識や追跡が期待されます。

犬種による特性はそれぞれありますが、それらの優れた能力を十分に発揮することができれば、シェパード以外の犬種であっても、警察犬として活躍することができます。なお、警察犬には、警察が直接飼育する直轄犬と、要請があった際に出動する嘱託犬とがあります。トイプードルのハンナちゃんは後者に該当するそうです。

ちなみに、公益社団法人日本警察犬協会では、警察犬指定犬種として、ジャーマンシェパードのほか、ボクサー、コリー、ドーベルマン、ラブラドールレトリバーなどを挙げています。近年では指定犬種に限らず、ハンナちゃんのような小型犬も活躍する機会が増えているようです」

Q.ほかにも警察犬として活躍している小型犬がいれば教えてください。

増田さん「警察犬としての任務を担っている小型犬は、普段生活している場でもよく見掛ける、なじみのある犬種が多く、かわいらしい風貌から威圧感が低く、親しみやすい存在といえます。

また、近年は高齢者をはじめとして、行方不明者に関する事案が増えています。このようなときに、活躍の機会があるものと思われます。警察犬は、特定の犬種に限らず、優れた能力を最大限発揮し、私たちの生活を守ってくれる大切な存在といっても過言ではありません」