高校の新しい学習指導要領が、この4月の入学生から全面実施となりました(「総合的な探究の時間」など一部は2019年度から先行実施)。小学校は2020年度から、中学校は2021年度から、いずれも全学年で全面実施に入っています。そんな始まって間もない新指導要領ですが、実は早くも「次期改定」に向けた準備が始まっています。背景には、何があるのでしょうか。

おおむね10年に1度が通例

 学校の授業や教科書の基となる指導要領は、時代の変化や学習の定着状況に合わせて、これまで(1)1958〜60年(2)1968〜70年(3)1977〜78年(4)1989年(5)1998〜99年(2003年に一部改正)(6)2008〜09年(2005年同)――と、おおむね10年ごとに告示(改定)されてきました。新指導要領は、2017年(小中学校など)、2018年(高校)、2019年(特別支援学校高等部)に改定されたものです。

 改定時期に決まりがあるわけではありませんが、教科書は4年で1サイクル(編集、検定、採択、使用開始に各1年)ですから、2サイクルを回すだけで8年かかります。学校現場でも、指導要領の趣旨を理解し、授業を計画するには準備が必要です。全面実施による授業をある程度積み重ねないと、見えてこない課題もあります。そうした事情を総合的に勘案すると、10年という区切りがちょうどいいのです。

 これまで、高校が全学年で全面実施に入ると「そろそろ次の改定を…」という話が持ち上がるのが通例でした。もちろん、中央教育審議会(省庁再編前は教育課程審議会)に改定を諮問する文部科学相(同文部相)の判断にもよりますが、今回は、いつもより動きが早いのです。

内閣府の提言受け中教審に部会

 新指導要領が高校で全面実施に入る前に「次期改定」を打ち出したのは、内閣府の「総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)」に昨夏設置されたワーキンググループ(WG)でした。4月1日の「教育・人材育成に関する政策パッケージ」最終まとめでは、2017年改定から10年後の2027年を「次期学習指導要領改定(見込み)」と位置付けた上で、まずは2022〜24年に中教審の特別部会(今年2月に発足)で基本的な検討を行った上で、2025〜26年に改定を議論するとしています。

 2027年改定までの期間を考えると、早過ぎる気もしますが、2017〜19年改定を巡っても、専門家による検討会(2012年12月〜14年3月)で方向性を論議してから、2014年11月の中教審諮問に臨んだ経緯があります。

新指導要領の延長線上に

 高校の全面実施を待たずに「次期改定」に着手した背景としては、▽時代の変化の加速化▽山積する子どもや学校の課題解決▽大がかりな改定や制度改正のための準備――が考えられます。

 今の時代は情報社会に続く「Society5.0(超スマート社会)」とされ、人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)など技術の進展による「デジタルトランスフォーメーション(DX=デジタルによる変革)」が求められています。新型コロナウイルス感染症の拡大が変化を後押しし、学校でも児童生徒が1人1台端末を持つ「GIGAスクール構想」が一気に実現しました。

 一方、学校では、不登校はもとより発達障害、日本語指導など、子どもの多様化が思った以上に進んでいることが近年、浮き彫りになってきました。さらに、家庭の経済格差が子どもの学力格差にもつながっていることも明らかになっています。

 そうした大きな課題を受けて、指導要領自体も、在り方が問われます。新指導要領は、学力の範囲を広げた「資質・能力」を3つの柱(「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性等」)で整理したものの、学習内容が増え続ける「カリキュラム・オーバーロード(過積載)」も問題となっています。

 だからこそCSTIの政策パッケージでは今後5年程度、新指導要領の趣旨の実現を全力で後押しすべく関係省庁に役割を分担させた上で、その延長線上で見えてきた課題を次期改定につなげる道筋をつけようと考えたわけです。2022年度からの動向に、目が離せません。