「謝罪の王様」という、宮藤官九郎さん脚本、阿部サダヲさん主演の映画がありました。上手に謝ることでトラブルを解決し、平穏を取り戻していこうという“謝罪”にまつわる物語です。さまざまな「謝る場面」が繰り広げられるのですが、中には「そんな開き直った態度の謝り方では、さらに腹が立つ」と思える場面もあります。「謝る力」に誠意がこもらなければ、逆ギレを呼ぶことは誰しも気付いていることでしょう。

 この「謝る力」。一生添い遂げる夫婦にとっては最重要の力です。パートナーに責められたとき、話し合うことなく謝るだけで万事が丸く収まるかといえば、そんなことはないからです。夫婦は対話をし、理解し合ってこそ継続します。「ごめん」だけで100%気が済むわけではありません。

口八丁な夫を「手のひらで転がしている」と勘違いしていた妻

 沙織さん(39歳、仮名)と克己さん(45歳、同)は、夫の方が年上ながらも、はたから見れば“かかあ天下”といった夫婦でした。お二人の間には6歳のお子さんがいます。

 沙織さんはいつも「旦那は私にぞっこんで、私が言う通りに動いてくれる」と、人目をはばからず夫をばかにしたり、指図したりしていました。そんな沙織さんに対し、克己さんは「そうなんだよね。俺は沙織ちゃんあってこそだよ」と、素直に受け入れているように見えます。

 一方で、克己さんはつまみ食い的な軽い浮気をするタイプ。それが沙織さんにバレると、「二度としません。愛しているのは沙織ちゃんだけです」と土下座して謝り、沙織さんに言われるまま高価な服飾品などをプレゼントします。沙織さんは、そんな浮気夫を「自分の手のひらで転がしている」と上から目線でいました。

 ここまでの話を聞いたとき、私は「浮気されても、謝ってもらえればそれでいいのですか。なぜ夫が浮気をしてしまうのか、根本的な解決をしないの?」と尋ねました。沙織さんは「愛しているのは私だけって言っているし、土下座して謝るくらい私のことが好きなんですよ。プレゼントも買って謝ってくれるし。男ってつまみ食いしたいものですよね。浮気しない男なんていないと思います」と、思い込みの激しい“男性論”を繰り広げました。

 その後、沙織さんは克己さんから「離婚してほしい」と言われます。驚いた沙織さんが克己さんに理由を聞くと、「愛している人がいる」と。「私のことを一番愛していたんじゃないの」とパニックになる沙織さん。克己さんはせせら笑い、こう言ったそうです。

「そう言えば納得するんだから、本当ばかだよね。デキ婚して本当に後悔したよ。何で結婚しちゃったんだろうって。でも離婚するって体力使うし、面倒くさいなって思ってただけ。適当に浮気して息抜きすればいいやって。本当に一緒にいたい女ができたので、離婚してほしい。そのために慰謝料も用意しているから」

 そうです。克己さんは沙織さんとの離婚を視野に入れ、慰謝料の準備までしていたのでした。沙織さんは、最低夫にしてやられたのです。

家庭の外に、自分の世界や楽しみを持つ夫でいいのか

 ゲンナイ製薬(東京都中央区)が2018年11月、10〜50代の既婚女性2172人と、既婚男性85人を対象に「夫婦げんかに関するアンケート」を行いました。これによると、けんかをして仲直りするときに「どちらから仲直りすることが多いか」という問いに対し、「自分」と答えたのは夫が43.5%、妻が16.5%という結果で、圧倒的に夫が先に仲直りを持ちだしていることが分かります。そして、その方法は「謝る」が60%と断トツだったのです。

 私は、「妻が怒っていると面倒くさいから謝るんです。家事もしなくなるし。子どもにもこっちの悪口を言うし。上司やクライアントだと思えば慣れたもんです」といった趣旨の発言を夫の皆さんがするのを多く聞いています。そして、そういった夫たちは、家庭の外にしっかりと自分の世界、楽しみを持っているものです。

「うちの夫は甲斐性がないから」「うちの夫はモテないから」「うちの夫は真面目だから」。先述の沙織さんのように、そんなことを言っていた妻が夫に浮気をされ、途方に暮れている姿を何人見てきたことでしょう。「(夫が)謝ってくれるからいいや。私の勝ち」と軽く考えるのではなく、なぜ相手が謝る流れになったか、自分が謝ることは本当にないのかと一歩踏み込んでみてください。誠意が感じられない謝り方に気付いているのに、それを放置するのは、夫婦間のほころびの原因になります。

 夫婦は、生活を共にする大切なパートナーです。日常を過ごす相手だからこそ、理解する努力をし続けなければならないと思います。けんかをしたとき、あなたが怒っているとき、パートナーはあなたの気持ちを理解した上で謝っていると思いますか。その場しのぎではないか、口先だけではないか、と観察してみてください。

 もしも、その場しのぎの謝り方だとしたら――。決定的なすれ違いが起きる前に、仲直りの方法を生み出しておいてください。今のうちに早めの対処です。