「産後、何もしてくれない。私は“ぼっち育児”してる」と夫に不満を言い続け、夫婦仲にヒビが――。

「産後クライシス」という言葉を耳にするようになり、10年余りがたちました。子育てアプリの開発などを手掛けるカラダノート(東京都港区)が2019年9月、子育て中の全国の母親1202人を対象に「産後クライシス調査」を実施したところ、6割以上の母親が産後クライシスを経験し、そのうち9割以上は「産後半年以内」に愛情の冷え込みを感じたことがあったと回答しています。

 最近では、育児や家事は「協力するもの」「手伝うもの」ではなく、「自分事として自発的に行うもの」という意識の夫たちも増えていますが、実際には、10カ月間おなかの中でわが子を育て、大変な思いをして出産し、その日から昼夜構わず授乳の日々を過ごす女性との温度差があっても仕方ありません。

妻の破水中、「自分への愛情が減る」と心配した夫

 雅さん(36歳、仮名)の夫、由幸さん(30歳、同)は付き合っていた頃から依存体質だったといいます。

 毎週末、雅さんの家に泊まりに来て「帰りたくない」と駄々をこね、付き合い出して半年余りで「ずっと一緒にいてくれる?」と雅さんにプロポーズ。こんなにとんとん拍子で結婚を決めていいのかな、と思いながらも、由幸さんの甘え上手なところや、まっすぐに自分だけを愛してくれる部分に喜びを感じ、雅さんは結婚をOKしました。

 結婚後の由幸さんは毎日、雅さんの帰りに合わせて自分も帰宅。改札で雅さんを待ち構えていて、人目もはばからず雅さんを抱き上げ、グルグル回すこともしたといいます。そんなラブラブ夫のことを、雅さんが最初に「あれ? おかしい」と思ったのが、妊娠を伝えたときだったそうです。

 きっと喜んでくれるだろうと思っていたのに、「そうなんだ」と素っ気ない返事。さらに、雅さんがつわりで会社に行けなくなると、「雅と一緒にいたいから俺も会社辞めようかな」と言い出す始末。「あんたが辞めたらどうやって生活していくのよ」と言いたいのをグッとこらえ、「由幸の好きにしたらいいと思うよ」と優しく伝えた雅さん。この頃から、「子どもが生まれた日から、もう一人長男がいると思って生活しなきゃダメなんだな」と思ったといいます。

 そしていよいよ出産です。夜、破水した雅さんが病院に連絡すると、「陣痛が5分おきになったら来てください」と言われました。初産の不安の中、今のうちに体を休めておこうとベッドに横たわっていると、由幸さんが突然、泣き始めました。びっくりした雅さんが「どうしたの」と聞くと、「俺たちの関係は明日から変わっちゃうよ。赤ちゃんが生まれたら俺たちは変わっちゃうんだよ。俺が世界で一番、雅のことを愛しているって覚えておいてね」という言葉が。パパになることで不安定になったのかと感じました。

 出産後、雅さんには、嫉妬に狂う夫と、生まれたての赤ちゃん、大智君(仮名)のお世話が待っていました。慣れない育児にてんてこ舞いの雅さん。あたふたする妻に対し、夫はクールで知らんぷり。妻が自分の話を聞いてくれないと、「大智が泣くから、雅が俺の話を聞いてくれないだろ」と子どもに向かって言ったり、おむつ替えを頼むと「くっせーからやだな」と暴言を吐いたり…雅さんの心はどんどん疲弊していきました。

 ある日、たまらなくなり、夫に「もっと父親らしくしてほしい」と叫んだ雅さん。すると、「まだ子どもは欲しくなかった」と逆切れされました。現在、雅さんは、育休が明けたら別居もいとわないと、実家の母と一緒に準備を進めています。子どもを持つか、持たないかについての話し合いが全くできていなかった典型的夫婦です。

家庭でしなくてはならないことは全て“自分事”

 先述したカラダノートの調査によると、愛情が冷え込む最大の原因は、「産後も産前と変わらない夫の言動」だといいます。1人目の育児は、女性にとっても初めてのことなのに、男性側が「女性なんだから普通にできるだろう」と思い込み、赤ちゃんが泣いているのにゲームをし続ける…などです。挙げ句には、「育休って毎日休みでパラダイスだね」なんてとんでもないせりふを吐く夫もいるようです。

 そして、そんな夫たちに対し、妻たちは愛情が冷え込む前にどんなことをしてほしかったかというと、その回答は大変シンプルです。「ただ、話を聞いてほしかった」「感謝の気持ちを言葉にしてほしかった」「一緒に、育児に取り組んでほしかった」…このシンプルな要望に、なぜ、気付かない夫が多いのでしょうか。

 結婚したら、「相手がやってくれるだろう」とつい思ってしまうことは、男性に多いかもしれません。「自分の両親世代がそうだった」「成長しても母親がほぼほぼ家事をしていた」、そして「女性の方が家事、育児は適性がある」と信じている――。

 結婚後、家庭でしなくてはならないことは全て“自分事”です。役割分担を決めるのもいいでしょう。しかし、あくまでもそれは分担であって、全ては“自分事”です。第1子が生まれてギクシャクする夫婦は、結婚するときに「子どもができてからのこと」を話し合えていないケースが多いです。一緒に取り組んでほしいこと、協力しないと無理なことは、あらかじめ列挙して確認しておくのがよいでしょう。

 人生を共にするパートナー同士になり、子どもができたら、覚悟が必要です。二人きりで見つめ合うだけでいい“胸キュン時間”は終わり、生きていく上で必要な生活時間が始まります。子どもを育てる責任と、健全な家庭を維持する目的。妻も夫も、同じ目的を確認し、「子どもは二人で責任を持って育てようね」と、常に言葉にして伝え合ってください。女性の方が育児に向いている、なんてことはないのです。