銀行預金ではお金がほとんど増えない今、節税のメリットを生かしてお金を増やせる「つみたてNISA」「iDeCo(イデコ)」が注目されています。どちらも、毎月、一定額のお金をコツコツと積み立てていくことで、堅実にお金がためられる制度です。ただ、元本保証がないため、やり方を間違えると損する可能性もあります。今回は、つみたてNISA・iDeCoの制度やおすすめの資産配分の考え方、失敗しないポイントを解説します。

まずは3カ月分の生活費をためる

 つみたてNISAは、年間40万円までの投資の運用益を最長20年間、非課税にできる制度。投資の運用益には、通常20.315%の税金がかかりますが、つみたてNISAならゼロにできます。

 つみたてNISAの対象商品は、金融庁の基準を満たし、長期投資・積み立て投資・分散投資に適する投資信託・ETF(上場投資信託)のみ。手数料も安く設定されています。

 つみたてNISAは、ネット証券では毎月100円から、その他の金融機関でも毎月1000円程度の少額から始められます。資産はいつでも換金して引き出せるので、お金をさまざまな用途に使うことが可能です。

 iDeCoは、毎月、自分で出した掛け金を自分で運用してその成果を受け取る制度。従来は20歳から60歳未満までの人しか利用できませんでしたが、2022年5月からは、60歳から65歳未満の人も新たに利用できるようになりました(60歳以上の人が利用する場合は、国民年金の加入者であることが条件)。「自分年金」をつくれる制度として注目されています。

 iDeCoもつみたてNISAと同様、運用益が非課税になります。その上、自分で出した掛け金が全額所得控除の対象となり、毎年の所得税・住民税が安くなる効果が得られます。さらに、資産を受け取るときにも控除が使えるため、節税効果があります。

 ただし、資産は、原則60歳まで引き出すことができません。老後資金を確実に用意するという意味ではよいのですが、他の用途でお金を引き出すことができない点には注意が必要です。

つみたてNISA・iDeCoでお金はいくら増える?

 つみたてNISAで20年間、毎月1万円ずつ投資して、年利3%で運用できたとします。このとき、元本の240万円に対して利益は88万3020円となります。通常の投資であれば、この利益から20.315%(約18万円)の税金が引かれてしまいますが、つみたてNISAならば税金はゼロ。資産合計は328万3020円になる計算です。

 また、iDeCoで20年間、毎月1万円ずつ投資して、年利3%で運用できたとします。iDeCoは掛け金の全額が所得控除になります。仮に所得税率5%の人(住民税率は一律10%)の場合、年間の掛け金の金額12万円×(5%+10%)=1万8000円、20年間で36万円の税金が節税できることになります。投資の利益はつみたてNISA同様、88万3020円ですから、節税できる金額と投資の利益の合計は約120万円にもなります。

 つみたてNISAでは、毎月約3万3000円まで投資できます。またiDeCoの掛け金は毎月5000円からで、上限は働き方などによって異なります。たとえば、企業年金のない会社員の場合は毎月2万3000円まで投資が可能。投資金額が増えるほど、同じ年利だった場合に得られる利益は増えますし、非課税になる金額も増えます。

毎月いくら積み立てればいい?

 とはいえ、投資には元本保証がないのですから、投資する分以外のお金がまったくないのに始めるのはNG。月1万円以上のお金を投資する場合は、最低でも6カ月分の生活費をためてからにしましょう。

 毎月の貯蓄額の目標は、手取りの2割。手取りが25万円ならば、生活費を20万円で抑えて、残りの5万円を貯蓄に充てたいところです。もっとも、6カ月分の生活費をためるのには割と時間がかかります。ですから、3か月分くらいたまったら、数千円程度の少額から投資を始めます。

 少額で始めるのであれば、まずはつみたてNISAから。つみたてNISAはiDeCoより少額で利用できるうえ、口座開設・維持に手数料がかかりません。それに、万が一まとまったお金が必要になった場合も、引き出すことができます。iDeCoを利用するのは、6カ月分の生活費がたまってからでよいでしょう。

 6カ月分の生活費が貯蓄で用意できたなら、「預貯金:1万円」「つみたてNISA:3万円」「iDeCo:1万円」といった配分で、お金を積極的に投資に回します。なお、iDeCoで得られる節税分(年1万8000円)も無駄遣いせず、預貯金に回します。

 これらを踏まえて、仮に手取り25万円の人がまったく貯蓄のない状態から、次の資産配分で貯蓄を進め、つみたてNISAとiDeCoで年3%の運用ができた場合、20年後の資産総額は1512万円になる計算です。

・1年目 預貯金:月5万円
・2年目 預貯金:月4万5000円、つみたてNISA:月5000円
・3年目以降 預貯金:月1万円(+iDeCo節税分1万8000円)、つみたてNISA:月3万円、iDeCo:月1万円

 もし、さらに貯蓄額を増やせるならば、つみたてNISAやiDeCoを上限額まで利用しましょう。また、ボーナスが支給されるのであれば、3割から5割は預貯金に回し、投資だけでなく預貯金も一緒に増やしていきます。

 なお、つみたてNISAやiDeCoの運用益については、年末調整や確定申告の手続きは不要です。しかし、iDeCoで毎年の掛け金を所得控除して所得税や住民税を安くするには、国民年金基金連合会から毎年届く「小規模企業共済等掛金払込証明書」を利用して、年末調整または確定申告をする必要があります。また、最終的にiDeCoの資産を受け取るときにも確定申告が必要になる場合があります。

企業型DC利用者もiDeCoを活用できるように

 2022年10月から、「企業型確定拠出年金(企業型DC)」の加入者がiDeCoに加入しやすくなります。企業型DCは、会社が出した掛け金を会社が契約している金融機関の商品から選び、自分(従業員自身)が運用して、その結果、得られる資産を60歳以降に受け取る制度です。掛け金は会社が拠出してくれるので、iDeCoのように、所得税、住民税を軽減する効果はありません。

 これまでも制度上、企業型DCとiDeCoの併用はできたのですが、労使合意に基づく規約の定めなどが必要だったため、iDeCoに加入できなかった人が約750万人もいるといわれています。2022年10月からは、企業型DCを利用していても、そうした規約なしにiDeCoに入れるようになります。

 iDeCoを併用できれば、資産形成のスピードアップにつながる上、所得税や住民税を軽減する効果も得られます。また、金融機関を自分で選べるので、企業型DCでは選べない商品に投資することもできます。老後資金を増やすことにつながるので、可能であれば併用するのがおすすめです。

 ただし、企業型DCのコストは会社負担ですが、iDeCoのコストは自己負担になる点には要注意。掛け金の上限にも決まりがあるので、併用を検討している方は会社に確認してみましょう。

「途中でやめない」ことが大切

 つみたてNISA・iDeCoで失敗しないために一番大切なのは、途中でやめないことです。ロシアによるウクライナ侵攻やコロナショック、さらにはリーマンショック、バブル崩壊など、過去を振り返ると、市場はたびたび大きく暴落していることが分かります。これらのときには、いくら長期投資・積み立て投資・分散投資をしていたとしても、資産は一時的に値下がりしてしまいます。

 しかし、ずっと下落を続けている市場はありません。一時的に値下がりしても、その後再び上昇し、暴落後よりも値上がりするケースがほとんどです。それにもかかわらず、値下がりして心配だからと途中で積み立てをやめたり、売却してしまったりすると、その後値上がりしても資産が元に戻らなくなってしまいます。

 つみたてNISAやiDeCoは長期にわたって投資することでお金を増やす仕組みです。もちろん、「必ず値上がりする」と断言できるわけではありませんが、金融庁が公表しているデータが示しているように、短期的な値動きに惑わされず、淡々と積み立てを続けることで、資産を堅実に築くことができるでしょう。ぜひ、活用してみてくださいね。