コンビニやスーパー、飲食店などで、店員の対応に不満を抱き、その内容をSNS上に投稿する人が、時折います。「こんなひどいことがあったんだ、聞いて!」と、世の中の人に共感を求める気持ちの人が多いと思いますが、中には、その店名や店員の名前までSNSに投稿する人もいます。固有名詞を出して、店員のミスをSNSに投稿することに法的問題はないのでしょうか。佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。

公益性が認められることも

Q.コンビニやスーパー、飲食店などで、店員の対応に不満を抱く人がいます。そうしたとき、店名や店員を匿名にして、不満を抱いたことをSNS上に投稿することは、法的に問題ないのでしょうか。

佐藤さん「店名や店員を匿名にして、不満な気持ちだけをSNS上に投稿したとしても、罪に問われたり、損害賠償請求されたりする可能性は低いと考えられます。そうした投稿は、特定の人の名誉を毀損(きそん)したり、特定の店の営業を妨害したりすることにはならないためです。

ただし、匿名であっても、特定の店や店員について言っていることをにおわせ、特定の店や店員であることを第三者が認識できるような内容であれば、例外的に法的責任が認められる可能性もあります」

Q.では、店名や店員の名前、顔が特定できる状態で、不満を抱いたことをSNS上に投稿することは、法的に問題があるということですね。

佐藤さん「店名や店員を特定できる状態で、不満な気持ちや、不満を抱く原因となった具体的な出来事をSNS上に投稿すると、内容によっては侮辱罪や名誉毀損罪、信用毀損罪、偽計業務妨害罪といった犯罪が成立し、罪に問われる可能性があります。また、その投稿によって、店や店員が損害を被ったとして、民事上、損害賠償請求をされたり、投稿の削除を求められたりする可能性もあります。

しかし、投稿された内容が真実であれば、法的責任を追及される可能性は低いでしょう。例えば、店や店員側に落ち度があり、それをSNS上で指摘した場合、店側に改善を促したり、他のお客さんに注意を促したりする目的(公益目的)があり、多くの人にとって役立つ(公共性がある)投稿と評価できることが多く、そうであれば名誉毀損罪に問われることはありません(刑法230条の2)。民事上も、表現内容が真実であり、公共性や公益目的が認められれば、名誉毀損を理由とする損害賠償請求は認められません。

ただし、不満を投稿する際、気持ちが高ぶって、店や店員に対する誹謗(ひぼう)中傷に当たるような表現をした場合、投稿内容に真実が含まれていたとしても、法的責任を問われる可能性はあります」

Q.実際に、店名や店員の名前を出した投稿で、投稿者が法的責任を問われた事例はあるのでしょうか。ある場合、どのような事例があったのか教えてください。

佐藤さん「自家製スープを使っている人気のラーメン店で、業務用スープを使っているかのような投稿をしたり、店主が反社会的勢力とつながりがあるかのような投稿をしたりしたケースで、裁判所は名誉毀損を認め、損害額を10万円とする判決を出しました。

このケースでは、投稿のせいで売り上げが減少したという事情がなく、また、投稿者の発信力もそれほど高くなく、投稿者の投稿を閲覧できたのが特定の人に限られていたことなどから、損害額が10万円と評価されましたが、事案によっては、もう少し高額の賠償額が認められる可能性はあります」

Q.店員の行動や言動に不満を抱くことは誰しもあると思います。不満のはけ口や共感を得たいがために、たとえ匿名にしても、そうした不満をSNSに投稿することはやめた方がよいのでしょうか。

佐藤さん「私たちには『表現の自由』があるため、批判や否定的なコメントであっても自由にできるのが原則です。先述したように、投稿によって、店側に改善を促したり、他のお客さんに注意を促したりできる可能性があり、不満をSNS上に投稿すること自体は許されるでしょう。

ただし、不快やいら立ちといった負の感情のままに、不満のはけ口としてSNS上に投稿すると、表現が過激になりがちです。そうした投稿は、たとえ店名や店員を匿名にしていても閲覧者を不快にさせたり、場合によっては誰かを傷つけたりする可能性もあります。投稿する前に一度立ち止まり、誰かを不当に傷つける内容になっていないか確認することが大切でしょう」