5月15日、沖縄県が本土復帰して50年となりますが、その沖縄県でだけ、よく使われているというのが、守礼門(那覇市)などがデザインされた「2千円札」です。九州・沖縄サミットを記念して2000年に登場した2千円札ですが、SNS上では時折、「コンビニで会計のときに出したら、『偽札』扱いされた」「子どものお年玉に使ったら、『偽札だ!』と騒いだ」といった投稿が見られます。

 沖縄県以外では見る機会が少なく、なじみのない人が多いお札ですが、正規のお札を受け取り拒否したり、偽札呼ばわりしたりするのは問題があるように思えます。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

「偽札だ!」は名誉棄損の可能性も

Q.2千円札など、あまり見ないお札の受け取りを拒否することに法的問題はないのでしょうか。

牧野さん「日本銀行券には、無制限の強制通用力が認められています(日本銀行法46条2項)。債権者(投稿事例ではコンビニ)は、債務(商品代)の弁済としてお札の受け取りを法的には拒否できません。日本銀行のウェブサイトに使用できる紙幣の一覧リストが掲載されています。2千円札はもちろんですが、聖徳太子を描いた1万円札や板垣退助の100円札、二宮尊徳の1円札など、昔の紙幣も使用することができます。

ただ、受け取りを拒否しても罰則はありませんので、受け取りを強制することはできません。もし、支払い側が受け取りを主張し続け、相手が受け取りを拒否し続けた場合、『無制限の強制通用力』によって、相手が受け取りを拒否しても債務の弁済としては有効になります。未払いで遅延利息などの債務不履行責任が発生することはありません」

Q.汚れたお札の受け取り拒否はどうでしょうか。

牧野さん「先述したように強制通用力はあるものの、受け取りの強制はできません。変形した硬貨も使用することはできますが、受け取る側に拒否される場合が多いでしょう。汚損、破損したお札および硬貨の交換は、日銀や多くの銀行の本支店窓口で、手数料無料で交換(手数料が必要な場合も)してもらえます。程度によりますが、激しい汚損の場合は、お札がちぎれてしまった場合に準じて、汚損していないお札の面積が3分の2以上残っていれば全額、5分の2以上3分の2未満残っていれば、半額が支給されるでしょう(日銀規定)。

『見慣れないお札』と同様に、支払い側と相手側が互いに譲らない場合、受け取りを拒否されても債務の弁済としては有効になります。とはいえ、汚れたお札の場合は常識的な対応として、その場では別のお札を出すなどすべきでしょう」

Q.記念金貨や銀貨の場合はどうでしょうか。絵柄を知らない人も多いと思います。

牧野さん「法的には使えますが、知られていない硬貨は受け取ってもらえない場合が多いので、それらを使用したければ、日銀などの窓口で現行の硬貨やお札と交換すべきでしょう。

なお、硬貨の場合は『通貨の単位および貨幣の発行等に関する法律』7条によって、同じ硬貨は20枚まで強制通用力を有していると定められています。もちろん、20枚を超えても受け取ってもらえれば問題ありません。他方、紙幣にはこうした制限はありません(日銀法46条2項)」

Q.本物のお札なのに「偽札だ!」と多くの人たちが見ている場で言われ、押し通されてしまった場合、相手の法的責任を問えますか。

牧野さん「民事、刑事両方の可能性があります。刑法230条の名誉毀損(きそん)罪(3年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金)が成立するには、不特定または多数の第三者の面前で、人の名誉を毀損する事実を摘示することが必要です。『偽札だ!』は『所持者の名誉を毀損する事実を摘示する』に該当する可能性があります。民事では、民法709条『不法行為』に基づいて損害賠償が請求できます」