外食するとき、料理や飲み物を注文した後、店員がすぐにメニューを下げる店があります。しかし、テーブルの脇にメニュー立てを作り、注文後はそこにメニューを戻してもらう方が、都合がよいのではないでしょうか。客がどのような料理や飲み物があるのかすぐに確認でき、追加注文の確率が上がりますし、店もその都度、メニューを持参する必要がないと思うからです。なぜ、注文後、すぐにメニューを下げる店があるのでしょうか。飲食店専門経営コンサルタントの成田良爾さんに聞きました。

フランスのテーブルマナーが起源

Q.なぜ、注文後、すぐにメニューを下げる店があるのでしょうか。

成田さん「17〜18世紀のフランス王室・貴族社会で生まれた『古典的フランス式サービス』では、階級や規律を重視した歴史的背景の影響で、『味覚より視覚の美しさ』が優先される独特のテーブルマナーがありました。

やがて、『古典的フランス式サービス』を改良した『イギリス式サービス』や『ロシア式サービス』が生まれました。その後、19世紀後半ごろ、フランスの高級レストランの多くが『ロシア式サービス』を取り入れて、『レストランのフランス式サービス』として国際的モデルとなり、それが現代のフランス料理店や高級料理店にも受け継がれています。

そこでは、食卓をより美しく魅せることを重視し、食卓の上に必要のないものは置きません。そのため、注文後にはメニューを下げるのです。それが一般の飲食店にも広がって、注文後、メニューを下げる習慣が定着したと考えられます」

Q.注文後、店員がすぐにメニューを下げる理由に、テーブル数と同じ数のメニューを用意していない、客がメニューを汚すのを防ぐといった意見があります。本当でしょうか。

成田さん「確かに、そのように考えるお店もあるでしょう。しかし、テーブル数と同じ数のメニューを用意していなかったり、お客さまがメニューを汚したりするのを防ぐためだけでメニューをすぐに下げることは、お客さま目線ではありません。長い目で見れば、コスト減のメリットより売り上げ減のデメリットの方が上回るでしょう」

Q.注文後、店員がすぐにメニューを下げる理由に、注文の変更が多発するのを防ぐ、「メニューの写真と料理が異なる」というクレームを防ぐといった意見もあります。本当でしょうか。

成田さん「こちらも、そのように考えるお店もあるかもしれません。しかし、先述したように、『お客さまファースト』の視点から言えば、注文の変更の相談を受けたり、メニューの写真と同程度の料理を提供したりするのは当たり前のことです。メニューを下げる理由にしてはならないでしょう」

Q.逆に、注文後もメニューをテーブルに残している飲食店は、どのような意図から残していると考えられますか。

成田さん「例えば、お客さまがメニューを見たいというとき、その都度、店員が持参しなくてもよいので、作業軽減になります。また、回収したメニューのストック場所を確保する必要がなくなり、スペースの有効活用ができます。

そして、お客さまはテーブルですぐに、自由にメニューを見ることができるので、メニューを持っていく時間の分、待たせずに済みます。また、メニューをじっくり見ることができ、追加注文も増えやすく単価アップにつながる傾向があります。メニューをテーブルに残している飲食店は、このようなことを意図しているのでしょう」

Q.店員が注文後、すぐにメニューを下げる行動を肯定的に思われますか。否定的に思われますか。

成田さん「業態や考え方にもよりますが、飲食店のコンサルティングを行う立場からは、注文後もメニューをテーブルに置くことを推奨しています。

お客さまは、ファーストオーダーにはあまり時間をかけない傾向があり、例えば、他にはどんなメニューがあるのか、料理が提供されるまでの時間が手持ち無沙汰で他に食べたいメニューがないか、食後のデザートはどのようなものがあるかなど、これらお客さまの『じっくり見たい』欲求を満たすことができます。

そして、単価アップや再来店のチャンスアップにつながります。メニューを下げた場合は、『追加注文ですぐにメニューを持ってきてほしいけど、忙しそうで頼むのは悪いな』とか『他にもどんな料理があるのか知りたいけど聞きにくいな』など、追加注文の機会を逃したり、あまりよくない店の印象を持たれたりする可能性があります。

お客さまの思いを察して欲求不満にさせない『質の高いサービス力』が必要になります」