夏のような暑い時季だったり、通気性の悪い靴を履いていたりすると、足裏から汗が多く出ることがあります。汗が多く出るほど足が臭いやすくなるため、気になる人も多いのではないでしょうか。ところが、冬のような寒い時季や、素足や靴下を履いただけの状態のときでも、足裏から汗が多く出る人もいるようです。そもそも、なぜ足裏から汗が多く出るのでしょうか。また、足裏から汗が多く出る場合はどうすればよいのでしょうか。アヴェニュー表参道クリニックの佐藤卓士院長(皮膚科・形成外科)に聞きました。

精神的ストレスが主な原因

Q.そもそも、人間が汗をかく理由について教えてください。また、冬のような寒い時季や、素足や靴下を履いただけの状態でも、足裏から汗が多く出る人がいるようですが、なぜこのような症状が出るのでしょうか。

佐藤さん「人間が汗をかく理由は大きく分けて2つあり、主に暑さや運動で体温が上昇したときに体温を一定に保つために汗をかく『温熱性発汗』と、感情や情動、精神的ストレスなどにより汗をかく『精神性発汗』があります。温熱性発汗は、手のひらや足の裏を除く全身の汗腺から発汗しますが、精神性発汗は、主に手のひらや足の裏、脇の下などの汗腺から発汗します。

つまり、足裏から汗が多く出るのは、精神的ストレスが主な原因です。精神的ストレスなどにより、足裏や手のひらから多量の汗が出ることを『掌蹠(しょうせき)多汗症』と言います。

掌蹠多汗症の詳細なメカニズムは分かっていません。例えば、精神的緊張により交感神経の機能が活発な状態が続くことでエクリン腺(全身に分布し、体温を調節する働きをする腺)が活性化され、多量の汗が出ることが分かっていますが、精神的に緊張していないときでも持続的に発汗することもあり、交感神経の機能が活発な状態が続く原因は解明されていません。

また、家族に掌蹠多汗症の人がいる場合、家族内の他の人にも同様の症状が認められるケースが比較的多くありますが、遺伝的原因も解明されていません」

Q.足裏から汗が多く出ると、なぜ足が臭うのでしょうか。また、素足のときよりも靴下や靴を履いているときに臭いやすくなるのはなぜでしょうか。

佐藤さん「もともと足は皮脂やあかがたまりやすい構造になっていますが、汗が皮膚の表面で皮脂やあかなどと混じり合い、それを皮膚の常在菌が分解することで、におい物質が発生して臭くなります。靴下や靴を履いているときは足裏の汗が蒸発しにくく、また足が高温多湿の密閉状態になるので、足が余計に臭いやすくなります」

Q.では、掌蹠多汗症により、足裏から汗が多く出る場合の対策について教えてください。足裏からの汗がひどい場合は、皮膚科を受診すべきなのでしょうか。それとも、市販薬や市販のせっけんなどで症状を改善することは可能なのでしょうか。

佐藤さん「足裏から汗が多く出る場合の主な対策は、次の通りです。

(1)通気性の高い靴を履くこと
(2)靴下は吸湿発散作用の高い素材を選ぶこと(綿よりもウールやシルク、麻などが望ましい)
(3)替えの靴下を持ち歩き、靴下が汗でぬれたら交換すること、
(4)制汗剤や汗拭きシートを使用すること
(5)毎日同じ靴を履かないこと
(6)使用した靴はしっかりと乾燥し、手入れをすること

症状がひどく、足裏が絶えず湿っているような状態が続くと、あせもができたり、皮膚がふやけて角質がむけるようになったり、細菌やカビなどの感染を起こしやすくなったりします。このような状態になるなどして、生活に支障が出る場合は、皮膚科の受診をおすすめします。なお、市販薬や市販の石けんで汗を出なくすることは難しいです。

恥ずかしさから周囲の目を気にして、その緊張とストレスで症状が悪化してしまうケースもあります。掌蹠多汗症を治すのは難しいですが、症状を軽減する治療法はあるので、気になるようなら、皮膚科に相談してみましょう」

主な治療法は?

Q.足裏から汗が多く出る症状に対して、皮膚科ではどのような治療を行うのでしょうか。

佐藤さん「次のような治療法があります。ただし、掌蹠多汗症で保険が適用される外用薬はありません。

(1)塩化アルミニウム液外用治療
塩化アルミニウムは皮膚の汗管に作用し、汗の出口をふさぐとされています。そこで、塩化アルミニウム水溶液を患部に塗ることで、発汗を抑えることができます。ただし、保険が適用されません。

(2)イオントフォレーシス治療
電流を通電した水道水の中に足を浸してその部位の発汗量を減らすという治療法で、保険が適用されます。水中に通電した際に生じる水素イオンが、皮膚にある汗の出口である汗孔(かんこう)に作用して、その部分を狭くする作用があるとされています。

(3)A型ボツリヌス毒素治療
A型ボツリヌス毒素は、交感神経から汗腺への情報伝達を遮断します。そこで、足の裏の皮膚にA型ボツリヌス毒素を注射することで発汗を抑えることができます。この治療は保険が適用されず、注射時に痛みを伴います。

(4)内服治療
保険適用の内服薬は、抗コリン薬と漢方薬があります。保険適用外ですが、自律神経失調症の薬や、抗不安薬などが有効な場合もあります」

Q.足裏からの汗を減らすには、日頃からどのような生活習慣を心掛けるべきなのでしょうか。

佐藤さん「足裏からの汗を減らすためには、交感神経の機能が活発にならないよう、生活習慣を改善することが望ましいです。例えば、『できるだけ強いストレスを避けるような生活を送ること』『十分な睡眠を取ること』『適度な運動を行うこと』を意識してください。また、食生活では、辛い食材や酸っぱい食材、カフェインなどの刺激物を控えて、栄養のバランスが取れた食事を心掛けましょう。喫煙やアルコールの摂取を控えることも大事です」