ご近所トラブルの代表格である「騒音問題」。特に、周囲の部屋からの騒音が気になりやすいマンションやアパートなどの集合住宅では、大人数での飲み会やパーティーでの騒ぎ声が問題になるケースが少なくありませんが、近年では、ゲーム実況や「歌い手」の活動を行う人による大声や騒音によって近隣住民が迷惑を被ったり、トラブルに発展したりすることもあるようです。

 動画配信者などによる騒音トラブルが起こった場合、どのような法的手段を取ることができるのでしょうか。弁護士の藤原家康さんに聞きました。

騒音が「受忍限度」を超えると不法行為に

Q.騒音や騒ぎ声により、生活に何らかの支障が生じた場合、原因となった騒音を出した人にはどのような法的責任が考えられるのでしょうか。

藤原さん「『騒音』と認められる音の種類については、法的な決まりは特になく、限定されていません。ただ、騒音を出す行為は不法行為(民法709条)に当たる場合があり、この場合を前提として、騒音を出した人は『(1)その行為をしない責任』『(2)損害賠償の責任』を法的に負う場合があります。一般には、(1)よりも(2)の方が認められやすいです。また両方とも、時間帯については日中より深夜の方が、また頻度については多い方が、認められやすいでしょう」

Q.近年は、ゲーム実況などの動画配信時に大きな声や音などを発し、近隣住民とのトラブルに発展する例もあるようです。仮に、苦情を入れたり注意したりしても改善されない場合、何らかの法的手段を取ることは可能でしょうか。

藤原さん「騒音を出す行為が不法行為となるのは、騒音が『受忍限度』を超えた場合とされています。受忍限度を超えているかは、音を出す行為の態様▽音の程度▽継続時間▽防止措置の有無および内容▽効果―など、諸般の事情を総合的に考慮して決定されます。

騒音が受忍限度を超えていることを前提に、騒音を出す人が、先述の(1)や(2)の責任を負う場合があり、民事訴訟などの法的手段において(1)や(2)が認められる可能性があります」

Q.騒音が改善されない場合、損害賠償請求のほかに、騒音を出す住民を退去させたり、自分が引っ越しする際の費用を請求したりすることはできますか。

藤原さん「騒音が受忍限度を超えていれば、騒音が改善されない場合に損害賠償請求が成り立つ場合は十分考えられます。騒音を出す住民に対する退去請求は認められていませんが、先述の(1)や(2)の請求が認められる場合、騒音を出す側がその後の請求を避けて自発的に退去することも考えられます。自分が引っ越しする際の費用の請求が認められるかは状況によりますが、どのようなものが法的な意味での損害と認められるかは必ずしも明確ではないことなどから、少なくとも、簡単に認められるとはいえないでしょう」

Q.騒音に関するご近所トラブルについて、過去の事例・判例はありますか。

藤原さん「裁判例で、受忍限度を超える騒音があったとして不法行為を認めたものには、例えば、カラオケ店での事例があります。

4階建て建物の1階のスナックにおける、深夜のカラオケの音が、その建物の2階に住む人に対する不法行為とされた事例があります。この事例では、深夜の時間帯においては、居住用建物から一定の距離がある場合でも、隣地との境界線上で50デシベルを超える音量は許されていないのに、居住用建物の階上・階下という、距離が全くない位置関係で、最大44.6〜49デシベルという、50デシベルに極めて近い音が出され、しかもこれが深夜2時まで断続的に続いたとして、不法行為と認められました。

今後、ゲーム実況などの動画配信者による騒音トラブルは増えていくかもしれませんが、動画配信をする人と、その周りの人、それぞれの自由が尊重されるよう、騒音トラブルが起こらないことを願います」