お笑いコンビ「キングコング」の西野亮廣さんが先日、YouTubeチャンネルに「ストーカーに婚姻届を出されました」とのタイトルで動画を投稿。「勝手に婚姻届を提出された」ことを明かして話題となりました。西野さんは、役所から届いた「婚姻届の不備」を知らせる書類で、身に覚えのない婚姻届が提出された事実を知ったといいます。後日投稿された、届けが不受理となったことを報告する動画では、婚姻届に記入された西野さんの「本籍」と「両親の名前」が間違っていたこと、そして証人欄にはタレントのタモリ(森田一義)さんの名前が勝手に使われていたことを明かしています。

 西野さんは今回の件について、被害届を出さないことを決めたそうですが、ネット上では「怖すぎる…」「もし本籍と両親の名前が合っていたら、受理されていたってこと?」「勝手に書かれた証人も迷惑だよね」「訴えていいレベル」など、さまざまな声が上がっています。

 ともすれば、一般のカップル間でも起こり得る「勝手に婚姻届を提出される」問題。もしそうなった場合、取り消しや、法的手段に訴えることは可能なのでしょうか。弁護士の藤原家康さんに聞きました。

当事者間に「婚姻の意思」がなければ無効

Q.勝手に婚姻届を記入・提出する行為について、何らかの法的問題はありますか。

藤原さん「相手の同意なく、勝手に婚姻届に氏名や住所などを記入し、役所に提出する行為については、私文書偽造罪(刑法159条)が成立すると考えられます。また、こうした行為は不法行為(民法709条)に当たり、それによる損害があれば、損害賠償請求ができると考えられます。金額は損害の内容によります。

なお、こうした行為には当事者間に婚姻の意思がないため、婚姻は無効です。婚姻届が受理された場合も、不受理になった場合も同様です。仮に、勝手に提出された婚姻届が受理されてしまった場合、婚姻無効の調停や訴訟によって、婚姻をなしにすることになります」

Q.こうしたケースでは、「証人欄」にも許可なく氏名が書かれることが多いと思いますが、仮に、氏名を書かれた人がそのことで迷惑を被った場合、提出した人に何らかの訴えを起こすことはできるのでしょうか。

藤原さん「これも、先述した『婚姻届に同意なく記入』に該当するため、刑事では私文書偽造罪になると考えられます。民事でも同様に、不法行為による損害賠償請求が可能でしょう」

Q.西野さんのケースでは、婚姻届に“勝手に”記入された「本籍」と「両親の名前」が間違っていたことで不受理となったようですが、仮に、この2つが合っていれば、西野さん本人の同意なく受理されていた可能性がある、と考えてよいのでしょうか。

藤原さん「婚姻届が受理されるための実質的な要件としては、『18歳以上であること(民法731条)』『重婚でないこと(民法732条)』『再婚禁止期間ではないこと(民法733条)』『近親婚など、婚姻を禁止された関係にないこと(民法734〜736条)』の4つが挙げられます。一方、形式的要件としては、『定められた方法での届け出があること(民法739条2項)』『定められた届け出地での届け出(戸籍法25条)』『本人確認がされること(戸籍法27条の2)』などがあります。

このことから、『本籍』と『両親の名前』の2つが間違っているものの、他の記入内容は正しい場合は、まさに、その2つが正しければ受理されていたと考えられます」