イタリア料理でよく使われるパスタには、驚くほど多くの種類があります。棒状のパスタから貝殻やリボンに似ているもの、真ん中に穴の開いたもの、ひねりがあるものなど、数え出すと切りがありません。一方、うどんやそば、そうめんなど、日本でよく食べられる麺類は、棒状のものがほとんどです。なぜ、パスタには、さまざまな形をしたものがあるのでしょうか。イタリア人の遊び心なのでしょうか。料理研究家の長田絢さんに聞きました。

おいしく味わう工夫

Q.うどんやそば、そうめんなど、日本でよく食べられる麺類は、棒状のものがほとんどです。なぜ、棒状以外の形の麺類がないのでしょうか。

長田さん「日本では、古くからうどんやそば、そうめんなど、棒状の麺をすする独特の文化が定着していることが理由です。すすることができる麺となると、必然的に棒状になります。

麺をすするようになった背景には、(1)麺をすすって空気を取り込みながら口に含むことで麺やつゆの香りがより一層引き立つ(2)空気を取り込むことで熱い麺を食べやすくする(3)立ち食いでも急いで食べる時にも早く食べることができる─などの理由があるとされています」

Q.イタリア料理で使われるパスタには、さまざまな形のものがあります。なぜ、さまざまな形のパスタがあるのでしょうか。イタリア人の遊び心なのでしょうか。

長田さん「パスタの種類は多種多様で、形も原材料もさまざまで味わいも異なります。また、同時にパスタと合わせるソースや具材も、とても多くの種類があります。つまり、パスタによって食感やソースとのからみ具合が違うので、ソースに適したパスタを選ぶ必要があり、さまざまな形をした多種多様なパスタが存在するのです。

さまざまな形のパスタが存在するのは、見た目を楽しむというイタリア人の遊び心もあるとは思いますが、それ以上に料理としておいしく味わうための工夫でもあるのです」

Q.大きく分けると、パスタにはどのような形がありますか。それぞれの形に意味があるのでしょうか。

長田さん「パスタは、一般的に形状によって種類が分けられていて、大きくは『ロングパスタ』と『ショートパスタ』の2種類になります。

ロングパスタは、『スパゲティ』に代表される麺状になった長いパスタを指します。ロングパスタだけでも、直径が0.8〜1.9ミリぐらいまで、0.1ミリ単位で多くの種類があります。

ショートパスタは『マカロニ』のような短いパスタを指します。具体的には、『ペンネ(ペン)』『カラマリ(イカ)』『ファルファッレ(チョウ)』『コンキッリエ(貝殻)』『リゾーニ(コメ)』『オレキエッテ(耳)』など、形を表す名前が多いですね。

この2種類に加えて、パスタの形状による種類で『メッゼ』と『リガーテ』があります。メッゼとは、『短い』という意味を持ち、リガーテは『溝がある』という意味を持ちます。例えば、『メッゼペンネリガーテ』なら『表面に溝がある短いペンネ』ということになります」

Q.さまざまな形のパスタがあり、どのような料理にどのパスタを使えばよいのか、迷うことがあります。料理に対する適切なパスタの選び方を教えてください。

長田さん「一般的に、パスタは太い方が小麦の味が強くなり、濃いソースと合わせるとバランスが取れます。例えば、太いパスタに適したソースは、クリームソースやチーズソースなどのこってりと濃厚なソースです。

また、細いパスタは、さらっとした薄いソースに絡みやすく、相性が良いとされています。例えば、バジルソースやオイル系といった、あっさりした味の薄いソースがよく合うといわれています。

日本でもよく使われるマカロニなどのショートパスタは、サラダやグラタンに使うのが便利で、ペンネは穴が開いた内側にソースがよく絡むので、イタリアのローマでは『アラビアータ』、ミラノでは『ゴルゴンゾーラ』のソースがよく用いられます。

ラザニアは、そのまま料理名となっている『ラザニア』に、ニョッキはもっちりとした団子状のパスタで、濃厚なクリームソースやミートソースとよく合い、煮込み料理やスープにも使われます」

Q.「この料理にはこのパスタ」という組み合わせがあると思いますが、家庭では都合よくない場合もあります。あまり組み合わせないパスタを使っても問題ないでしょうか。

長田さん「特に問題はありません。スーパーなどでよく見かける『スパゲティ』は、割とどのようなソースにでも合わせやすいので便利です。パスタとソースや料理の組み合わせに、『この組み合わせなら、よく合う』ということはあっても、『絶対にその組み合わせでなければならない』というような正式な決まりがあるわけではありません。お好みの味を楽しんでくださいね」