ロングセラー菓子「パインアメ」が販売を終了したという内容の誤った文章が6月7日、ツイッターに投稿され、ちょっとした騒動となりました。製造元のパイン(大阪市天王寺区)は翌日、「パインアメは今年で71年目。今日も販売を続けております」「安易なリツイートはデマ拡散に加担することになります」などと自社の公式ツイッターにすぐに投稿し、ネット上ではその素早い火消しに称賛の声が上がりました。

 ネット上にデマを投稿した場合や、ツイッターの「リツイート」のような機能を使い、デマの投稿を拡散した場合、どのような法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

損害賠償責任などを問われる可能性

Q.ネット上にデマを投稿した場合、投稿者はどのような法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。デマであると認識して投稿した場合と、自分の勘違いや思い込みなど、不注意が原因で投稿してしまった場合とで、責任の重さに違いは出るのでしょうか。

牧野さん「今回のパインアメの事例を基に解説します。例えば、ネット上に投稿されたパインアメ終売のデマにより、パインアメの売り上げが減少するなど、実際に製造元のパインが損害を被った場合、デマの投稿者は、故意に投稿したかどうかにかかわらず、パインに対して不法行為(民法709条)に基づく損害賠償責任を負う可能性が考えられます。なお、故意にデマを投稿した場合は、自分の勘違いや思い込みなど、不注意が原因で投稿してしまった場合よりも責任が重くなります。

デマの投稿内容が、他人の名誉や信用を毀損(きそん)する場合、刑法上の名誉毀損罪(刑法230条、3年以下の懲役、禁錮または50万円以下の罰金)、信用毀損罪(刑法233条、3年以下の懲役または50万円以下の罰金)に該当する可能性があるでしょう」

Q.今回のパインアメの事例では、「(パインアメ)もう売ってないってほんと?」といったように、事実を断定せず問い掛ける形で投稿されました。この場合も法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。それとも、投稿者がデマを流しているのかどうか判断しにくいということで、法的責任を問われないのでしょうか。

牧野さん「断定的でない投稿であっても、その後、実際にパインが損害を被った場合、投稿者はパインに対して、不法行為に基づく損害賠償責任を負う可能性が考えられます」

Q.では、ツイッターに投稿されているデマをリツイートするなど、ネット上のデマを拡散した場合、拡散した人はどのような法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。故意にデマを拡散した場合と、自分の勘違いや思い込みなどが原因で結果的にデマを拡散してしまった場合とで、責任の重さに違いは出るのでしょうか。

牧野さん「デマ拡散後、企業などに何らかの被害が生じた場合、故意に拡散したかどうかにかかわらず、不法行為に基づく損害賠償責任を負う可能性があります。故意にデマを拡散した場合は、自分の勘違いや思い込みなどが原因で結果的にデマを拡散してしまった場合よりも、責任が重くなります」

Q.ネット上にデマを投稿したことで、企業などに何らかの被害が出たとします。その後、デマの投稿を削除した場合、投稿者は損害賠償責任を免れるのでしょうか。

牧野さん「デマの投稿を削除したとしても、削除以前に発生した被害に対する損害賠償責任は免れません。デマの投稿を削除した時点で、それ以降に発生した被害に対しては、原則として不法行為に基づく損害賠償責任を負うことはありませんが、デマの投稿を削除しても、その投稿のスクリーンショットなどがネット上に拡散してしまい、デマを収束させることができない場合は、削除後であっても損害賠償責任を負う可能性があります」

Q.ネット上にデマを投稿したり、デマを拡散したりして裁判に発展した事例について、教えてください。

牧野さん「デマの投稿と言えるかどうかは分かりませんが、大学教授が発表した論文にねつ造がある、と大学生が自身のホームページで主張し、裁判に発展した事例があります。大学教授は、大学生の主張によって名誉を毀損され精神的苦痛を被ったとして、約1100万円の損害賠償請求をしました。結局、裁判所は、ホームページの内容が論文のねつ造に関する十分な証拠を示していなかったとして、大学教授の訴えを認め、学生に110万円の支払いを命じています」