ひきこもりのお子さんの中には「仕事をして収入を得なければいけない」といった気持ちを持っている人もいます。しかし、フルタイムで仕事をすることが難しく、短時間就労もままならないといったケースも多くあるようです。就労による収入が不安定だと、お金の不安はなかなか解消されません。何か別の方法で安定した収入を確保することはできないのでしょうか。

就労の意思はあるが、恐怖も

 筆者の元に相談に訪れた母親(53)は、ひきこもりの長男(24)のことについて語りだしました。

 長男は大学生のとき、アルバイトでいくつかの仕事を経験したそうです。しかし、どの職場でもミスが多く、いずれも長続きしませんでした。例えば飲食店の仕事では「注文を間違える」「料理の皿をテーブルに置くときにこぼしてしまう」「レジでの計算が合わない」「お釣りを間違える」「調理場では、作業手順が頭の中で処理しきれずに作業がとても遅い」といった状態です。他の職場でもミスが続き、叱られ続けた結果、長男は働くことに強い恐怖や不安を抱くようになってしまいました。

 21歳ごろから抑うつ症状が現れてしまい、心療内科を受診したそうです。就職活動もうまくいかず、大学卒業後はそのまま家にひきこもるようになってしまいました。

 ひきこもり状態になってから2年余り経過し、長男は現在24歳。「さすがにこのままではいけない。仕事をしてお金を稼がなくては」といった焦りの気持ちも強くなっているそうです。一方で、長男は母親に向かって次のようなことも話しています。

「自分は体力的にも精神的にもフルタイムでの仕事は難しい。アルバイトのような短時間の仕事も続かない可能性がある。仕事が続かなくて、また無収入状態になってしまったらショックが大き過ぎる…そう考えるだけで仕事に向けて一歩踏み出すことができない」

 そのような状況に、母親も長男自身も心を痛めていました。

 一体どうすればよいのか。身動きが取れなくなってしまった長男を心配する母親の表情は晴れません。

「長男の気持ちを後押しできるような、何かよい方法はありませんか」

「そうですね。まずは別の方法で収入の土台をつくり、お金の不安を少しでも解消するところから始めてはいかがでしょうか」

 筆者はそう提案してみました。

「障害年金」で収入を確保することも検討

 筆者の提案した収入の土台とは「障害年金」のことです。ひきこもりのお子さんの中には精神疾患を抱えており、フルタイムで働くことが難しい人もいます。短時間であれば何とか仕事をすることができても、その収入は不安定になってしまうため、常にお金の不安がつきまといます。そのような場合、障害年金で収入の土台をつくり、お金の不安を少しでも解消できないか検討することもあります。

 母親からの聞き取りで、次のようなことが分かりました。長男は大学生のときに抑うつ症状で初めて心療内科を受診。国民年金は20歳のときからきちんと学生納付特例の手続き(納付猶予の手続き)をしていたので、未納状態ではないとのことでした。よって、長男は初診日(初めてその障害で受診した日)に国民年金に加入中だったので、障害基礎年金を請求できることになります。

 そこまで確認した筆者は、母親に金額の説明をしました。

「仮に障害基礎年金の2級に該当した場合、金額は次のようになります。障害基礎年金が月額で約6万4800円。障害年金生活者支援給付金が月額約5000円。合計で約6万9800円の収入が確保できることになります。まずは障害基礎年金で収入の土台をつくるところから始めてみる方法もあります。安定した収入が確保できれば、息子さんも仕事に対して前向きになるかもしれません」

 すると母親は疑問を口にしました。

「長男が働くようになっても、障害基礎年金は支給されるものなのでしょうか」

「仮に息子さんがフルタイムで働けるようになれば、障害基礎年金は一時停止される可能性もあります。厳密には、障害基礎年金の更新をする際に医師の診断書を提出するのですが、その診断書の記載内容によります。ですが、短時間で働くのであれば、そこまで心配する必要はありません」

「そうなんですね、分かりました。でも、障害年金の手続きは大変だと聞いたことがあります。はたして私(母親)ができるかどうか…」

「確かに障害年金は請求までさまざまな準備をすることになり、時間と手間がかかってしまいます。ですので、もしよろしかったら私もお手伝いいたしますよ」

「それは大変心強いです。長男にもそのように伝えてみます。専門家の方にお手伝いいただけるなら、長男も手続きに対して前向きになるかもしれません」

 そう答える母親は、少しほっとした表情になりました。