新型コロナウイルスの感染が再拡大していますが、人と接触する機会は徐々に復活しつつあります。いわゆる「コミュ障」の人にはつらい状況かもしれませんが、中には「社交不安障害」と診断される人もいるようです。社交不安障害とはどんな病気なのでしょうか。「コミュ障」とはどう違うのでしょうか。精神科専門医の田中伸一郎さんに聞きました。

「生活にひどい支障」半年以上継続

Q.「社交不安障害」とは、どんな病気でどのような症状が出るのでしょうか。

田中さん「人に注目されると緊張して恥ずかしくなるために、人が集まる場面で会話したり、発表したり、食事したりすることを極度に恐れる人がいます。そうした場面をひたすら我慢したり、回避したりして生活にひどい支障が出て、それが半年以上続いている場合に『社交不安障害』と診断されます。

恥ずかしがっている自分に気付き、さらに不安や緊張が高まるという悪循環が見られるのが特徴です」

Q.社交不安障害の原因を教えてください。また、どのくらいの数の人が発症しているのでしょうか。

田中さん「社交不安障害の原因は分かっていません。最新の研究では、交感神経系の調節異常、脳の機能異常などが調べられています。

若年者を中心に数%の人が発症し、女性が男性の数倍多いことが知られています。ただし、いわゆる『あがり症』の人も少なくありませんし、入学、転校、就職、転職、結婚などによって新たな社交場面が増えると『社交不安』が出現するでしょうから、先ほどの『生活にひどい支障が出て、それが半年以上続いている』という定義をきちんと当てはめることが重要となります」

Q.いわゆる「コミュ障」との違いは。

田中さん「いわゆる『コミュ障』は、小さい頃から人との会話やコミュニケーションが苦手な人に対して使われる言葉と思われます。日常語なので、必ずしも障害を意味していません。他方で、社交不安障害は、ある時から人との会話やコミュニケーションが極度に怖くなり、発症するものです。

つまり、いわゆる『コミュ障』と『社交不安障害』の違いは、ある時発症するかどうか、程度が重いかどうか、にあると考えられます。

ちなみに、日本で以前から知られている対人恐怖症や赤面恐怖症なども、社交不安障害に含まれます」

Q.「社交不安障害かもしれない」と本人が思った場合や、周囲が気付いた場合、診療科はどこがよいのでしょうか。

田中さん「冒頭で述べたように、社交不安障害の人は『人に注目されると緊張して恥ずかしくなる』ため、病院で医者と話すことも、その前に受付の人に会うことも、人によっては予約の電話をかけることも、ハードルが高いことが想像されます。

そのため、周囲が『社交不安障害かもしれない』と気付いた場合は、本人と相談しながら、電話予約を手伝ったり、通院に同伴したりして診察をサポートするのがよいかもしれません。

受診するのは精神科か心療内科のクリニックがよいと思います。いろんな診療科がある総合病院は人目が多く、受診自体がつらくなることがあるので、勇気と耐久力が少ない時には、お勧めしません」

Q.治療はどのように行うのですか。

田中さん「治療は、薬物療法と認知行動療法の組み合わせになります。まずは、抗不安薬、またはうつ病やパニック障害でも投与されるSSRIと呼ばれる薬を服用して社交場面での不安感を軽くしておき、次に、先述の緊張感と恥ずかしさの自覚の悪循環を断ち切るため、認知と行動を修正するタイプの精神療法が行われます。

治療のポイントは、症状に向き合いすぎるとかえって悪循環するので、いかに症状と共存しながら対処できるようになるか、ということですね。人に見られて恥ずかしい気持ちになることを自然なこととして受け入れながら、心身の緊張をほぐす、というイメージがよいと思います」

Q.「社交不安障害」を予防することはできるのでしょうか。

田中さん「予防法についてはまだ分かっていません。長い人生の中で新しい社交場面に参加することは避けられませんし、そうした場面では緊張する人が多いでしょう。誰もが社交不安を持ちますが、社交不安障害を発症するのはその一部であることに、予防のヒントがあるかもしれません。

私たちはこの数年、感染症予防のためにマスクを外せない生活となり、顔の半分を見られずに過ごしています。将来、ポストコロナの時代になったら、改めて社交不安について考える必要があるかと思います」