スーパーやコンビニに行くと、店内が混雑していて、会計に時間がかかることがあります。その際、空腹を我慢できなかったのか、「レジに並んでいる間に、購入予定の商品を食べてしまった」という真偽不明の投稿がSNS上にあります。もし、スーパーやコンビニなどで購入前に商品を開封した場合、購入する意思があったかどうかにかかわらず、法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。

窃盗罪に該当する可能性

Q.スーパーやコンビニなどで購入前に商品を開封した場合、法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。購入の意思があった場合とそうでなかった場合とで、それぞれ教えてください。

佐藤さん「会計前に商品を開封した場合、法的責任を問われる可能性があります。購入の意思の有無にかかわらず、まず考えられるのが窃盗罪です(刑法235条、10年以下の懲役または50万円以下の罰金)。窃盗罪は、他人の財物を、不法領得の意思(権利者を排除して、他人の物を自分の所有物のように経済的用法に従って利用または処分する意思)をもって、窃取(他人の占有する物をその人の意思に反して、自分に移転させること)すると成立します。

例えば、『空腹が我慢できず、レジに並んでいる間に購入予定の商品を食べてしまった』『お金がないので購入できないことは分かっていたけれど、我慢できずに食べてしまった』といったケースでは、店が事実上支配している商品を、自分の物にしてしまっているため、窃盗罪が成立します。

購入の意思がある前者の場合、『レジの順番が来たらすぐに代金を支払うのだから、窃盗罪には問われないのではないか』と思う人も多いと思います。しかし、開封し、食べてしまった時点で窃盗罪は成立しており、後からお金を支払ったとしても犯罪がなかったことにはならないので注意が必要です。

その他、『食べるつもりはなく、いたずら目的で封だけ開けた』といったケースでは、器物損壊罪に問われる可能性があります(刑法261条、3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料)。単に開封だけが目的の場合、不法領得の意思がないため、窃盗罪ではなく、刑罰の軽い器物損壊罪が成立することになります」

Q.誤って商品パッケージを破ってしまった場合、法的責任を問われる可能性はありますか。

佐藤さん「誤って商品パッケージを破ってしまった場合、犯罪の故意がないため、罪に問われることはありません。

ただし、過失により店の商品を傷つけ、売り物にならない状態にしているため、民事上の不法行為責任を問われる可能性はあります。具体的には、商品代金の弁償を求められることが考えられます」

Q.購入前に商品を開封したことで、その後、裁判に発展した事例について、教えてください。

佐藤さん「スーパーで、会計前に刺し身を食べ、その後すぐに精算したケースで、窃盗の罪に問われ、有罪判決を受けた事例があります。この件の被告は、窃盗罪の他、衣料品店に返品を求めて店の業務を妨害した威力業務妨害罪にも問われており、懲役1年6月、保護観察付き執行猶予4年とした判決が確定しています(最高裁2022年3月29日決定)」