病院やクリニックを受診した際、薬をもらうときは「処方箋」を医師に出してもらい、薬局で薬を受け取ります。慢性疾患の場合も、薬が切れるたびに受診して処方箋を出してもらう必要がありましたが、「リフィル処方箋」というものによって、制度的には、受診せずとも薬を受け取ることが可能になりました。ただ、課題もあるようです。「リフィル処方箋」について、薬剤師の川口てるこさんに聞きました。

1枚を3回使用できる場合も

Q.リフィル処方箋の仕組みを教えてください。

川口さん「2022年4月から、処方薬の新しい受け取り方として『リフィル処方箋』の制度がスタートしました。『リフィル処方箋』とは『反復利用できる処方箋』のことで、医師の診察を受けなくても、処方箋薬を複数回(処方箋1枚につき上限は3回)受け取れる処方箋のことをいいます。日本ではスタートしたばかりですが、欧米ではすでに慢性疾患の患者さんに対し、活用されてきた制度です。

リフィル処方箋は、医師の判断により、慢性疾患などの患者さんで、症状が安定している人に発行することが可能です。例えば、高血圧の治療薬30日分が記載された処方箋に、医師が『リフィル可(3回)』の旨を記載した場合、1枚の処方箋を3回使用できることになります。

1回目は、薬局で通常通り30日分の薬を受け取り、リフィル処方箋は患者さんに戻されます。処方箋には1回目に処方した薬局名・薬剤師名が書かれ、次回調剤予定日が記載されており、次回調剤予定日の頃、リフィル処方箋を薬局に持参し、薬を受け取ることが可能です。3回目も同様ですが、最終回の際、リフィル処方箋は薬局で保管することになります」

Q.患者にとってのメリット、デメリットは。

川口さん「メリットとしては、医療機関の再診の必要がなくなるため、往復するための時間・診察を受けるための時間が節約でき、医療費や交通費などの経済的負担が軽くなります。

医療機関が遠い人や、医療機関での待ち時間が長いことで負担となる、高齢者、体の不自由な人、仕事などのスケジュール調整が難しい人にとって、メリットは大きいでしょう。また受診する回数が減ることで、外出による新型コロナウイルスなどの感染症リスクを抑えることも期待できます。

デメリットとしては、医師の診察を受ける機会が減るため、体調や症状の変化の把握が遅れてしまう可能性があります。リフィル処方箋を受け取っていても、何か体調に変化がある場合は積極的に受診して、適切な治療を受ける必要があります。薬剤師に相談してアドバイスを求めてもよいでしょう。また、リフィル処方箋は、基本的に管理は自分で行う必要があるため、紛失しないように注意が必要です」

Q.医師にとってのメリット、デメリットは。

川口さん「クリニックや診療所などでは、リフィル処方箋を出すよりも、1カ月に1回受診してもらった方が、患者さんの症状などの変化をいち早く察知しやすいですし、経営上もプラスになります。患者さんへ説明するための時間も、通常診療よりかかることになるでしょう。そのため現時点では、クリニックや診療所の医師にとっては、メリットよりもデメリットの方が大きいかもしれません。

一方、大学病院など大きな病院では、患者さんの変化などの懸念はクリニックと同様ですが、受診する患者さんの人数が減ることで、医師が診察・治療に集中しやすくなり、医療内容の充実が期待できるかと思います」

Q.薬局にとってはどうでしょうか。

川口さん「薬剤師にとっては、医師の診療の役割を一部担うことになるため、求められるスキルは高くなり、医療責任が増加していくことでしょう。治療内容をしっかり把握し、一人の患者さんをサポートする『かかりつけ薬剤師』が普及していくことにもつながっていくと思われます。

デメリットとしては、リフィル処方箋では、患者さんに症状変化などがあり医師の受診が必要と判断された場合など、医師への情報提供が必要になります。また2回目、3回目の来局について、患者さんに連絡が必要になるケースも想定され、スケジュール管理などの業務も増えることになります。

なお、国全体の問題として医療費が増加しており、リフィル処方箋の活用によって、医療機関への再診が効率化され、医療費を抑えることができると考えられています」

Q.まだあまり使われていないとの情報もあります。

川口さん「リフィル処方箋の対象となる患者さんや記載できる薬剤には、制限があります。また、すべての医療機関がリフィル処方箋を導入しているわけではありません。新薬、向精神薬、湿布など、対象外の薬もありますので、リフィル処方箋の発行を希望しても対応してもらえないことがあります。

現在ではジェネリック医薬品(後発医薬品)はかなり普及してきていますが、ここまで来るのに10年以上の歳月が必要でした。リフィル処方箋も、すぐにではないかもしれませんが、ゆっくりと確実に広がっていくものと思われます。

その時は、今まで以上に薬局選びが重要になってくることでしょう。『身近で通いやすい薬局』『信頼できる薬剤師のいる薬局』を選ぶことが大切になってきます。今からお気に入りの身近な薬局・薬剤師さんを決めておくのも良いことですね」