近年、地震や台風といった自然災害がかつて以上に頻発しています。住宅の購入時、火災保険に加えて、地震保険の加入を検討している人も多いのではないでしょうか。しかし、「月々の保険料が高いのでは」「地震で家が損壊しても、本当に補償を受けられるのか」と不安に思う人もいるかもしれません。

 そもそも、どのような損害を受けたときに地震保険が適用されるのでしょうか。また、火災保険とはどのような点で異なるのでしょうか。ファイナンシャルプランナーの長尾真一さんに聞きました。

火災保険は台風や水害などが対象

Q.地震保険と火災保険との違いについて、補償対象としている災害や損害を含めて教えてください。

長尾さん「地震保険は『地震の揺れによる倒壊や損害』のように『地震・噴火・津波』を原因とする損害や、地震が原因で生じた火災による損害を補償します。補償の対象は居住用の建物と家財(家具・家電・衣類・食器類など)です。

例えば、建物については主要構造部(基礎・柱・壁・屋根など)の損害の程度に応じて、『全損(建物の地震保険金額の100%)』『大半損(60%)』『小半損(30%)』『一部損(5%)』などの認定を行い、保険金が支払われます。建物の損害の程度が小さく、一部損にも至らない場合は保険金が支払われません。

なお、次に挙げる損害は地震保険の補償の対象外です。

(1)店舗や事務所としてのみ使用している建物や業務用の器具・商品に生じた損害
(2)自動車への損害
(3)門・塀・垣・車庫など、建物の外の設備に生じた損害
(4)1個当たり、または1組当たり30万円を超える宝石や美術品など高額品への損害
(5)地震発生の翌日から10日が経過した後に生じた損害や、地震の際の紛失・盗難によって生じた損害

火災保険は火災のほか、落雷、破裂・爆発、風災(台風など強い風による災害)、ひょう災(ひょうによる災害)、雪災(落雪など雪による災害)、水災(水害)、水ぬれ、盗難などによる建物や家財への損害を補償します。なお、保険のプランによっては『子どもがボールで遊んでいるときに窓ガラスを割ってしまった』といったように、災害時以外で偶発的に生じた破損・汚損などが補償される場合もあります。

また、地震保険と違い、門・塀・垣・車庫など、建物の外の設備に生じた損害も補償の対象となりますが、先述の『地震・噴火・津波』を原因とする損害や、地震が原因で生じた火災による損害は補償されません。具体的な補償内容は加入している保険の種類やプランによってそれぞれ異なるため、詳しくは各保険会社に確認してください」

Q.地震保険や火災保険に加入するときの注意点について教えてください。先述の条件を満たしていても、補償が受けられないことはあるのでしょうか。

長尾さん「一般的に、住宅ローンを組んで家を建てたり、マンションを購入したりする場合は、金融機関から火災保険の加入を求められます。なお、火災保険は単独で加入できますが、地震保険の単独加入はできないので、地震保険に加入するときは、火災保険とセットで申し込む必要があります。また、火災保険と地震保険に別々の保険会社で加入することもできません。

保険契約者や被保険者の故意、または重大な過失による損害については補償の対象外です。過去には、天ぷら油を火にかけたまま長時間、その場を離れたり、危険性を認識しながら、寝たばこを続けたりして火災に至った事例について、重大な過失が認定されているので注意が必要です」

Q.地震保険、火災保険の月々の保険料について教えてください。

長尾さん「火災保険の保険料は主に建物の構造や所在地によって異なりますし、保険会社やプランによっても違ってきます。一方、地震保険の保険料は、どの保険会社で加入しても同じです。ある大手損害保険会社の火災保険(水災や破損・汚損の補償含む)の建物の保険金額は2000万円、家財の保険金額は500万円で、保険期間5年・月払いとした場合、新築の鉄骨造りの建物で所在地が東京都だと、月額の保険料は建物が1220円、家財が450円です。

地震保険の保険金額は火災保険の保険金額の30%から50%の範囲内で設定できるため、建物1000万円、家財250万円と想定した場合、月額の保険料はそれぞれ2170円、540円です(※建築年割引10%適用)。先述の火災保険の保険料と合わせると、月額4380円です。

なお、同じ条件で建物が木造(非耐火構造)の場合、火災保険の月額の保険料は建物2090円、家財990円、地震保険の月額の保険料は建物3380円、家財830円となり、合計は月額7290円です。鉄骨造りの建物と比べて、大幅に高くなります。また、同じ条件でも、建物の所在地が京都府であれば、鉄骨造りの地震保険・火災保険の合計は月額2350円、木造(非耐火構造)でも月額4250円と東京都よりずいぶん安くなります。

基本的に、破損などのリスクが高い構造の建物や災害の発生リスクが高い地域ほど、保険料も高くなる傾向にあります。

なお、2022年10月から主要損害保険会社が火災保険料を改定するため、物件の所在地や構造によっては数十パーセントの値上げになる場合があります(※値上げ率は所在地、構造、築年数などによって異なり、逆に値下げになる場合もあり)」

地震保険と火災保険は両方必要?

Q.地震保険と火災保険は両方加入すべきなのでしょうか。

長尾さん「地震保険に加入するかどうかで悩む人もいると思いますが、日本が地震大国であることは忘れてはいけません。30年以内に、マグニチュード7程度の首都直下地震が発生する確率は70%程度、マグニチュード8〜9クラスの南海トラフ地震が発生する確率は70〜80%とされています。

万が一、大地震に遭って家を失っても、原則として火災保険では補償されません。住宅ローンの返済が終わっていない状態で被災すると、二重ローンや破産に陥るリスクもあります。保険料はできれば少なくしたいものですが、リスクについても慎重に考える必要があります」

Q.しかし、月々の保険料が高額になると家計を圧迫すると思います。保険料をできるだけ抑える方法はありますか。

長尾さん「保険料が高いということはそれだけ、災害リスクも高いということなので、保険料だけで考えるべきではありません。その上で適切な保険料にするには、必要十分な補償範囲にすることが大切です。特に『水災』の補償を付けるかどうかで、保険料は大きく変わります。水災の対象となるのは洪水や高潮、豪雨による土砂災害などですが、マンションの上層階や、高台で裏手に山や崖がないような場所に住んでいる場合は必要ないかもしれません。

ただし、近年は毎年のように、過去に例のない豪雨被害が各地で発生しているので、安易に判断せず、自治体のハザードマップなどをよく確認するべきでしょう。オプションの特約なども本当に必要なのか、よく確認する必要があります。

今後、家を購入する場合は、家計全体の収支について、よく考える必要があります。もし、火災保険の保険料で家計が圧迫されると想定されるのであれば、購入する物件の予算を引き下げた方がよいかもしれません。そうすれば、月々のローン返済額が減り、火災保険の保険料も下がるので、家計が圧迫されることを避けられます」

Q.ちなみに、賃貸住宅に住んでいる人も地震保険や火災保険に加入した方がよいのでしょうか。

長尾さん「賃貸住宅に入居する際は『借家人賠償責任保険』(入居者が部屋に損害を与えたとき、大家に対する損害を賠償する保険)への加入を求められます。借家人賠償責任保険は賃貸住宅入居者用の火災保険とセットになっているのが一般的です。従って、賃貸住宅に住んでいる人の多くは火災保険に加入しているはずです。

賃貸住宅入居者用の火災保険で補償されるのは基本的に家財のみです。建物は入居者の所有物ではなく、大家さんの所有物なので、入居者が保険をかけることはできません。また、家財の保険金額を選択することができ、地震保険を付けるかどうかも選べます。家財の保険金額や地震保険の有無によって保険料は異なりますがだいたい、2年間で1万5000円〜3万円程度が目安です。なお、賃貸住宅向けの地震保険で補償されるのも家財のみですが、心配であれば加入するとよいでしょう」