米ツイッター社を買収したイーロン・マスク氏が、社員の約半数とされる大規模な人員削減に着手したと報じられています。その後、一部の社員を呼び戻しているといった報道もありますが、日本の企業で「クビだ! あしたから来なくていい」と社長に言われて、解雇されるという事態は起こり得るのでしょうか。そうした行為に法的問題はないのでしょうか。ゆら総合法律事務所(東京都荒川区)の阿部由羅弁護士に聞きました。

日本の「解雇要件」非常に厳しい

Q.日本の企業で「あしたから来なくていい」と突然解雇することは可能なのでしょうか。

阿部さん「『解雇要件』を満たしていて、かつ平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払った場合に限り、即日解雇が認められます。解雇は原則として30日以上前に予告しなければなりませんが(労働基準法20条1項)、解雇予告手当を支払う場合、平均賃金1日分ごとに予告期間を1日短縮することが可能です(同条2項)。

ただし、日本の労働法における『解雇要件』は非常に厳しく、客観的に合理的な理由を欠き、かつ社会通念上相当と認められない解雇は無効です(労働契約法16条)。例えば、『経営陣が交代して会社の方針が変わったから』というだけの理由で、会社が従業員を一方的に解雇することは認められません」

Q.解雇要件とは、具体的にどのようなことでしょうか。

阿部さん「例えば、経営危機を理由として人員削減するための『整理解雇』の場合、次に挙げる4要件が必要と考えられています。

(1)人員整理の必要性(高度の経営危機にあること)
(2)解雇回避努力義務の履行(役員報酬のカット、希望退職者の募集、配置転換などによる)
(3)人選の合理性
(4)手続きの妥当性(納得のいく手続き)」

Q.退職金を社の規定以上に積み増すことで、突然の解雇を正当化することはできないのでしょうか。

阿部さん「退職金の積み増しは、従業員に退職への同意を促す材料に過ぎず、会社による一方的な解雇を正当化するものではありません」

Q.もし、自分が「あしたから来なくていい」という事態に遭ったら、どのように対応すべきなのでしょうか。

阿部さん「会社から十分な額の退職金などが提示されていて、かつ転職先が見つかる見込みがあれば、受け入れて合意退職することも考えられます。会社としても、従業員とのトラブルはできる限り避けたいと考えるケースが多く、その場合は増額交渉の余地もあるでしょう。

一方、会社に残りたいと思うならば、解雇の無効と復職を主張することができます。解雇無効などの主張は、会社との交渉のほか、労働審判や訴訟などの法的手続きを通じて行います。会社の姿勢が強硬な場合は、長期戦を覚悟しなければなりません。

なお、解雇無効などを主張する場合には、退職に関する書面にサインすることは避けるべきですが、サインしてしまった場合でも退職の無効を主張する余地があります。会社との交渉・労働審判・訴訟などの対応を専門家に依頼する場合、依頼先は弁護士となります。労働組合に団体交渉を依頼することも考えられるでしょう」

Q.外資系企業の場合、日本の企業とは解雇について、扱いが違うのでしょうか。

阿部さん「外資系企業であっても、労働契約の準拠法が日本法である場合のほか、実際の労働が日本国内で行われる場合などには、労働者は日本の解雇規制の適用を主張できます(法の適用に関する通則法12条1項、2項)」