寒くなると、背中にかゆみを感じることがあります。中には就寝時に背中のかゆみが気になってしまい、なかなか眠れない人もいるようです。寒くなると背中がかゆくなるのはなぜでしょうか。また、背中のかゆみを抑えるにはどうすればいいのでしょうか。アヴェニュー表参道クリニックの佐藤卓士院長(皮膚科・形成外科)に聞きました。

皮膚の乾燥でバリアー機能が低下

Q.寒くなると、背中がかゆくなることがあります。なぜでしょうか。原因について、教えてください。

佐藤さん「背中がかゆくなる主な原因は、皮膚の乾燥です。乾燥により皮膚の最も外側にある角層の水分量が減ると、皮膚のバリアー機能が低下します。その結果、外部からの刺激を受けやすくなり、ちょっとした刺激でもかゆみを感じやすくなります。

かゆみを誘発する原因としては、空気の乾燥やアレルギー反応、物理的刺激、皮膚の炎症、生活習慣などがありますが、寒い時期は空気が乾燥するため、肌の乾燥が進み、かゆみを感じやすくなるのです。

かゆみは、何らかの物質に対するアレルギー反応の場合もあります。特定の物質に触れたとき、体の免疫システムがそれを異物と見なすと炎症、かぶれ、かゆみなどの症状が起きます。食べ物や金属、動植物、衣類、洗剤、日光など身近にあるさまざまなものが原因物質となる可能性があります。

寒い時期は湿気を吸収して熱に変える『機能性インナー』など、化学繊維を使った肌着や保温効果の高いウール製品を使用するようになります。化学繊維と皮膚の間で起こる静電気も皮膚への刺激になりますし、ウールはちくちくした感じがあるのでかゆくなりやすいです。

また、背中のニキビや毛穴の炎症である『毛のう炎』ができるとかゆみを生じます。顔のニキビとは違い、洋服による摩擦が常にあるので蒸れやすく、かゆみが出やすいです。

その他、辛い刺激物やアルコール類は皮膚の温度を上昇させかゆみを増強させますし、心理的要因や睡眠不足でかゆみが出ることもあります。ストレスがたまったり、睡眠不足が続いたりすると、ストレスホルモンの分泌が増加し、肌の代謝バランスが崩れてかゆみを感じやすくなるといわれています」

Q.では、背中がかゆいときにかいてしまった場合、どうなるのでしょうか。

佐藤さん「かゆいからといって気の済むまでかき続けてしまうと、皮膚が傷ついて皮膚のバリアー機能を壊してしまいます。皮膚のバリアー機能が壊れると、ちょっとした刺激にも敏感になって、さらにかゆみが起こりやすくなるのです。

かくことでかゆみが鎮まるのは、一時的です。かくとバリアー機能にダメージを与え、『かゆみが増してもっとかく→さらにバリアー機能が壊れる→さらにかゆみが増す→もっとかく』という悪循環に陥って、かゆみがますます悪化してしまいます。また、かき続けて患部の炎症を悪化させたり、かゆいところが広がってしまったりすることもあります。とにかくかかないことが大切です。

なお、夜中に無意識にかいてしまうのは防ぎようがないので、背中をかき壊して傷つけないように爪を短く切っておくことをおすすめします」

Q.寒い時期に背中がかゆくならないための対策について、教えてください。

佐藤さん「まず入浴方法や衣類を見直しましょう。体が温まるとかゆみが増強するので、寒い時期にはつらいかもしれませんが、熱い湯で長湯をしないことです。また、背中の皮膚の乾燥を防ぐために、入浴時にゴシゴシとこすり洗いをしないでください。皮膚の刺激になるボディーブラシやナイロンタオルの使用はお勧めしません。せっけんやボディーソープをよく泡立てて、手を使って泡でなでるように優しく洗いましょう。

入浴後はすぐに保湿ケアをして、皮膚の乾燥を予防することも大事です。ボディー用ローションやクリームでしっかり保湿してください。化学繊維やウールなど静電気が起きやすい素材の衣類や、ちくちく感が気になるような衣類は、肌を刺激したり、かゆみや赤みにつながったりする可能性があるので、綿や絹など通気性が良く、肌に優しい素材でできた衣類を着用するように心掛けましょう。

その他の対策として、冬場は外気の乾燥に加えて、室内では暖房器具を使用するため、さらに湿度が低下します。加湿器を使って室内の湿度を上げましょう。また、アルコールのほか、香辛料やカフェインなどの刺激物を多く含む料理や飲み物をできるだけ控えてください。ストレスホルモンの分泌を増加させ、かゆみを引き起こすことがあります。食事は栄養のバランスを考え、偏食にならないようにしましょう。

仕事などで生じた心理的ストレスや睡眠不足は、かゆみを増す原因になります。ストレスを上手に発散して、ため込まないようにしましょう。夜更かしせず、睡眠を十分に取るようにしてください」

かゆくなったらどうする?

Q.もし背中がかゆくなったら、どうすればいいのでしょうか。

佐藤さん「かゆみを感じてもすぐにかかないで、まずは患部を冷やすようにしてください。患部を冷やすと毛細血管が収縮するので、一時的に炎症を鎮めてかゆみが和らぎます。保冷剤をくるんだタオルやぬれタオルを使って、背中を冷やしてみましょう」

Q.市販の保湿剤で背中のかゆみを抑えることは可能なのでしょうか。

佐藤さん「乾燥が原因のかゆみは、クリームやローションで保湿をしっかりすれば軽減します。また市販の保湿薬を塗れば、大幅に改善するはずです。ただし、適切な量と回数で使用することが大事です。湿疹やかぶれ、アレルギーが原因でかゆい場合も、保湿である程度軽減できますが、症状を改善するには外用薬を使用するか、かゆみの原因を取り除く必要があります」

Q.背中のかゆみがひどい場合、皮膚科を受診した方がよいのでしょうか。受診の目安について、教えてください。

佐藤さん「先述の対策をしてもかゆみが治まらない場合は、単に乾燥が原因によるかゆみではない可能性があります。かゆみがひどくて我慢できないと、皮膚をかき壊してしまい、湿疹になったり、かゆみの範囲が広がったりしてしまいます。かゆみがひどくて夜中眠れない場合、ストレスと睡眠不足が蓄積して、さらにかゆみがひどくなり悪循環となります。

湿疹やかぶれ、アレルギー(じんましんなど)、ニキビ、毛のう炎がかゆみの原因の場合、内服薬や外用薬による治療が必要です。このような場合は皮膚科を受診してください」