筋トレやダイエットを行っている人の中には、毎日の食事で「鶏むね肉」や「ささ身」を積極的に食べている人も多いことでしょう。鶏むね肉やささ身は脂身が少なくヘルシーなイメージがあり、筋トレやダイエットの“強い味方”ではありますが、実はプリン体が多く含まれており、多量に摂取すると痛風の原因になるなど健康リスクが高まるようです。これについては、「知らなかった」「体に優しいと思っていたのに…」といった驚きの声をはじめ、「毎日、鶏むね肉を食べているけど大丈夫かな…」「プリン体ってやっぱり“悪”なの?」など、疑問や不安の声も聞かれます。

 鶏むね肉やささ身に、プリン体が多く含まれているのは本当なのでしょうか。管理栄養士の岸百合恵さんに聞きました。

プリン体量が最も多い肉類が「鶏肉」

Q.そもそも「プリン体」とは何でしょうか。

岸さん「プリン体とは、細胞の核の中にある遺伝子の構成成分で、人の体内でも作られる、私たちの生命活動に必要不可欠な物質です。細胞内や食べ物から摂取したプリン体が血液中に運ばれると、肝臓で分解され、最終的に尿酸になります。

通常は、余分なものを尿や便と一緒に排せつし、一定量に調節されていますが、食事や乱れた生活習慣の影響で尿酸が多くなり過ぎると、『高尿酸血症』を起こします。この状態が続くと、尿酸が結晶化して関節に沈着し、炎症を起こして『痛風』と呼ばれる痛みが発生します。

日本痛風・核酸代謝学会の『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン』によると、性別・年齢問わず1日400ミリグラムを目安にしたプリン体の摂取制限が示されています」

Q.プリン体が多く含まれる食品は。

岸さん「プリン体はあらゆる生物の細胞内に存在するため、ほとんどの食品に含まれています。特に鶏レバーや白子、あん肝、タイショウエビ、タラコ、カツオ、イワシ、サンマなどの動物性食品に多いです。アルコール飲料の中では、ビールに多く含まれています」

Q.鶏むね肉やささ身にも、プリン体が多く含まれているというのは事実でしょうか。

岸さん「事実です。100グラム当たり、鶏むね肉には141ミリグラム、ささ身には154ミリグラムのプリン体が含まれます。鶏肉は、肉類の中では最もカロリーが低いですが、プリン体量は最も多い食材です」

Q.「プリン体=悪」だと考える人も少なくないようですが、実際にそうなのでしょうか。

岸さん「プリン体は細胞の核を構成する成分なので、ほとんどの食品に含まれており、生命活動に欠かせない物質です。問題なのはプリン体が分解された後、尿酸の血中濃度が高くなることです。食事による取り過ぎはもちろん、体内で尿酸を作り過ぎたり、余分な尿酸を排せつしにくかったりする体質であることも、尿酸値が高まる原因となります。それには、乱れた生活習慣や食習慣が大きく影響しており、内臓脂肪の蓄積や飲酒、ストレスなどが大きく関係しています。

さらに、プリン体の80〜90%は体内で作られ、食事由来のプリン体は10〜20%ほどです。尿酸値を下げるためには、食事に含まれるプリン体を気にすることは大切ですが、それよりも生活習慣の見直しと肥満や、脂質異常症、高血圧などの改善の方がより重要になります」

Q.筋トレやダイエットをしている関係で、鶏むね肉やささ身を中心に食べている人も多くいます。プリン体を取り過ぎないために工夫できることはありますか。

岸さん「先述の『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン』で示されている、プリン体の1日の摂取量400ミリグラムは鶏むね肉であれば、大きめのもの1枚分程度です。鶏肉に偏らず、豚肉や牛肉、豆腐、チーズ、卵など、プリン体の低いタンパク源を組み合わせることで栄養のバランスもアップします。プリン体は水溶性なので、調理法としてはゆでる・煮るのがお勧めです。3分の2程度を減らすことができるといわれていますが、煮汁やスープにはプリン体が溶けだしているため、注意しましょう。

既に尿酸値が高い人は、尿酸値を下げるために、腎臓から尿酸をスムーズに排せつさせるよう、尿をアルカリ性に近づける必要があります。アルカリ性食品である野菜やキノコ類、イモ類、海藻を多く摂取するとよいでしょう。尿量を増やして尿酸の排出を促すために、十分な水分摂取も大切です。また、激しい筋トレなどの無酸素運動は尿酸値を上げやすいので、ジョギングやサイクリングなどの有酸素運動をお勧めします」

Q.筋トレやダイエットのために毎日、鶏むね肉を食べたり、主食代わりにささ身を食べたりする生活習慣の人が意識すべきこととは。

岸さん「タンパク質は、健康と美容を維持する上で大切な栄養素です。鶏むね肉やささ身は低カロリー・高タンパクなヘルシー食材ではありますが、取り過ぎてしまったり、主食の代わりに食べることで、1日の摂取エネルギーに対するタンパク質、脂質、炭水化物の割合を示した『PFCバランス』を崩してしまうと、脂肪として蓄えられたり、腸内環境を乱したりします。いわば、筋肉のためにやっていたことが、逆に代謝を落とす原因になり得るのです。

また、豚肉や牛肉、魚介類、卵、大豆製品には、鶏むね肉やささ身だけでは摂取できない栄養素がそれぞれ含まれています。タンパク質は栄養素の一種ですから、その他の栄養素とのバランスこそが重要です。1つの食品を取り過ぎると必ず足りない栄養が出てくるので、多種類の食品をバランスよく取ることをお勧めします」