サッカーのワールドカップ(W杯)カタール大会で、グループリーグE組の日本は11月23日、W杯優勝4回のドイツに2対1で勝ち、日本国内は一気に盛り上がりました。同27日のコスタリカ戦には敗れましたが、12月1日午後10時(日本時間12月2日午前4時)からのスペイン戦でグループリーグ突破を目指します。

 日本がグループリーグを突破し、さらに初のベスト8に進出した場合の経済効果を、筆者が代表を務めるサイト「経済効果NET」(スポーツや音楽ライブを中心に各種経済効果を算出・公開)が試算しました。その結果、経済効果は900億円を上回ると推定できました(※以下、数値の「約」等は基本的に省略します)。

テレビ観戦者の消費効果大

 大きく分けて、観戦者による経済活動と、放送局やPV(パブリックビューイング)運営者、飲食店などによる運営者経済活動をカウントしました。日本代表選手の出身地などで行われている商店街の割引やセールといった経済活動は、確認するのが困難でしたので、この計算には含んでいません。

 まず、最も大きな金額になったのが、テレビ観戦者による消費です。グループリーグの世帯視聴率は、ドイツ戦35.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区、以下同)、コスタリカ戦42.9%でした。

 スペイン戦は日本時間午前4時開始のため、過去のW杯世帯視聴率から、15.5%と推定。Eグループを2位で勝ち上がったと仮定すると、決勝トーナメント1試合目は「Mach55」(55試合目)になり、試合開始時間は日本時間で12月7日午前0時です。この試合に勝利し、ベスト8になると、準々決勝は「Mach60」(60試合目)に進出し、日本時間で12月11日午前0時開始となります。

 過去のW杯世帯視聴率から、近い時間帯は2010年6月14日午後10時54分からNHK総合でW杯日本対カメルーン戦が放送されており、その視聴率が44.9%でした。Mach55はこの数値をあてはめ計算。Mach60は日本初のベスト8進出、しかも日曜未明(実質的に土曜日の深夜)という好条件のため、2006年6月18日午後9時35分放送開始だった日本対クロアチア戦の52.7%を代入して、テレビ観戦者を算出しました。

 テレビ観戦時の消費額は少なめに見積もりました。宅配ピザなどの売り上げ増加がメディアで紹介されていますが、ドイツ戦の午後10時、コスタリカ戦の午後7時は、ともに夕食時間帯になり、通常の夕食がピザに置き換わった可能性が否定できません。つまり、W杯によるプラス消費とは言い切れません。

 アメリカNFLの決勝戦スーパーボウルについて、ピザ、フライドチキン、スナックなどの消費が1人あたり7.34ドルと計算している論文も存在しますが、今回の計算では、通常の夕食費用を加えずに計算しました。テレビ視聴者は1人あたり、スナック1袋と飲み物2本の合計で300円を、通常からプラスして消費すると設定しました。また、自宅テレビ観戦者の日本代表のレプリカユニホーム着用率は200人に1人(フェルミ推定により筆者算出)しました。その結果、5試合の総視聴者数は1億8690万人、消費額は672億8400万円となりました。

 パブリックビューイング(PV)や、スポーツバーでW杯を観戦する人も少なくありません。PVの会場はホテルなど有償の会場もあります。東京都内には106カ所(11月27日、筆者カウント)あり、収容人数は平均で149人でした。スポーツバーは大手が102店舗展開しており、平均収容人数は72人でした。これに日本代表ユニホームなど応援グッズを加算すると、1ゲームあたり2億6700万円になります。しかしスペイン戦から後は深夜帯のゲームになるため、これらの経済活動はあまり期待できません。

 カタールまで観戦に行くサポーターの人数は推定で3万人強。パック旅行の費用は45万円程度ですが、航空運賃や現地ホテル代なども含まれ、日本国内の経済活動にカウントされるのは、およそ40%になります。またカタールで日本人が消費する飲食・買い物などはカウントしていません。その結果54億2700万円となり、観客による経済活動は合計で732億4600万円となりました。

 テレビ放映権はアベマTVが200億円で購入したとも伝えられています。テレビ番組制作費、PV会場運営費など、製作者による経済活動は202億9000万円となりました。

 その結果、経済効果(推定)の総額は935億3700万円になります。

 また、ここに一次波及効果、二次波及効果を含めると1500億円以上になると考えられますが、今回は推定値ですので、波及効果を含まない経済効果と致します。

 計算方法が異なりますので、参考程度にしかなりませんが、日本シリーズの東京ヤクルトスワローズ優勝による経済効果は343億円(波及効果含まず)(関西大の宮本勝浩名誉教授)、長野市の善光寺で2022年に行われた御開帳は88日間で636万人が訪れ、経済効果は1095億円でした(長野経済研究所)。

 コロナ禍前の東京マラソンは、3万5000人が出走し、101万5000人が沿道で応援をした大型イベントで125億4000万円(波及効果含まず。みずほ総合研究所)。2012年ロンドン五輪(7月27日〜8月12日)による、日本国内での大型テレビなどの買い替え、応援グッズ、テレビ観戦時の飲食などを含めた経済効果は3687億円(波及効果含まず。電通)などがあります。

 日本代表がベスト8まで勝ち進んだ場合の、日本国内における経済効果935億3700万円(波及効果含まず。算出:経済効果NET)をどう見るか、意見の分かれるところでしょうが、まずはグループリーグ突破へ、スペイン戦での日本代表の奮闘に期待しましょう。