12月3日から12月9日は「障害者週間」です。国民が障害者福祉について広く関心や理解を深めるとともに、障害者があらゆる分野の活動に積極的に参加する意欲を高めることを目的に定められました。

 しかし、身近に障害がある人がいないと、「障害」という言葉にピンとこない人も多いのではないでしょうか。筆者は、知的障害を伴う自閉症がある8歳の息子を育てています。息子の幼児期を振り返りながら、筆者が思う「知的障害」という障害について、紹介します。

1歳半まで変わった様子は見られず

「知的障害と発達障害って、何が違うの?」

 以前、友人にこう聞かれたことがありました。そのときに思ったのですが、障害の名前は聞いたことがあっても、これらの障害について説明できる人は意外と少ないのかもしれません。

 発達障害は、自閉症、注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害など、通常低年齢で発現するさまざまな脳機能障害の総称のような言葉であり、その特性から「発達に凹凸がある」とも言われます。

 知的障害は、医学領域では「精神遅滞」とも言われ、知的機能と適応機能両面の欠陥を含む障害です。知的障害の定義には、次の3つがあります。

【(1)知能検査によって確かめられる知的機能の欠陥】
知能検査でIQ(知能指数)がおおむね70以下だと、知的障害に匹敵する知的機能の欠陥があると判断されます。子どもの場合は発達検査でDQ(発達指数)を見て判断されることもあるでしょう。

そして、たとえIQ70以上でも、IQ70〜85の間に当てはまる場合は、「ボーダー」「グレーゾーン」などと言われることがあります。

【(2)適応機能の明らかな欠陥】
適応機能は、本人が社会の中で生活していくにあたって、問題なく日常生活を送り、社会に適応して生きていけるかどうかという能力です。適応機能の程度を判断するのは難しいですが、適応機能に明らかな欠陥が生じているかどうかも、知的障害の可能性を判断する上で大切なことです。

【(3)発達期(おおむね18歳まで)に生じる】
まだ発達段階にある子ども時代、すなわち18歳までの間に生じたかということも、重要な判断基準です。例えば、大人になってから病気などで知能指数や適応機能が低下し、先述の2つの条件を満たす状態になったとしても、それは知的障害とは言えません。

 なお、筆者の息子のように「知的障害があり、発達障害でもある」という場合もあります。

脳を検査しても異常が見られず

 知的障害というと、「脳に何か異常があるのでは?」と思う人もいると思います。

 しかし、筆者の息子の脳は、MRI(磁気共鳴画像装置)で撮っても特に異常は見られませんでした。後で分かったことですが、息子の知的障害は決して軽くはありませんが、脳の見た目は普通の人と何ら変わりなかったのです。

 もちろん、何らかの病気を要因とした知的障害がある人もいるので、全ての知的障害の人に当てはまるとは言えません。しかし、「自閉症で知的障害」という息子のようなパターンにおいては、このようなケースは珍しいことではないと思います。

 息子は、1歳半健診の後に、発達の遅れとともに頭囲が大きいことを指摘されました。そのとき、脳に何らかの異常が発生している可能性があるということで医師から勧められ、大きな病院で脳をMRIで撮ることになったのです。

 当時の筆者は、検査結果で異常が見られなかったことで、障害の可能性はないだろうと感じてしまい、ホッと一安心したのを覚えています。しかし、息子が4歳で発達検査を受けたときに知的障害が判明し、改めて、判定のためには発達検査か知能検査が必要な障害なのだと認識しました。

赤ちゃんの頃は分からない

「知的障害って、生まれてすぐに分かるんでしょ?」

 息子が生まれる前の筆者は、無知ゆえにそんな風に思っていました。しかし、先ほど述べたように、それは違います。中には染色体異常などによる知的障害で、生まれてすぐに分かる子もいるとは思いますが、息子のような「自閉症で知的障害」のパターンの人には、あまり当てはまりません。

 妊婦健診で異常はなく、出産時に大きなトラブルもないまま、息子が生まれました。0歳の頃の息子は、首すわり(自分で頭を自由に動かせるようになること)やずりばい(腕や足を使い、うつぶせの状態でおなかを床につけたままで体を引きずるようにはうこと)、はいはい、おすわりと、遅れなく発達の階段を進んでいきました。

 ところが、1歳半健診を前にして、「歩かない」「発語がない」「指さしをしない」などが見られ、初めて発達の遅れを意識するようになりました。それでも、息子は非常に育てやすい赤ちゃんで、母親としてそれほど大きな困り事はありませんでした。発達の遅れが気になってからは、発達相談を経て療育(発達支援)や病院にはつながったものの、息子に障害があるとは思えませんでした。

 しかし、ふたをあけてみれば生まれつきの知的障害で、4歳の時点で中等度知的障害と診断されました(その後、重度と診断)。赤ちゃんのときに異常が見られなかったからといって、絶対にないとは言い切れない障害なのです。

 そもそも赤ちゃんの頃は、知的障害がある子もない子も、発達段階的にまだまだできないことが多いものです。そのため、障害の有無による差がつきにくいのだと思います。発達検査を受ける場合でも、ある程度の年齢にならないと、知的能力というのは測り切れないものだと思います。

それでも息子は成長している

 息子を育てていて思うのは、知的障害は、「他の人に比べて経験が積み重なっていきづらい」障害なのだろうということです。これはあくまで、1人の母親として感じる感覚であり、専門家からしたらまた違う見解かもしれません。しかしこの感覚は、同じような障害がある子を育てているのであれば、分かる人も多いのではないでしょうか。

 息子は認知能力や理解力が低く、実年齢に対して精神的に幼いです。その特性ゆえではありますが、何かを教えても、なかなか積み重なっていかないのです。

 教えたときにはできても、少し間を置いたら忘れてしまう。そしてまた同じことを繰り返す。また一から教えるけれど、また忘れてしまう。それを繰り返す。

 これまで、何かができるようになっても、あるとき急にできなくなってしまったことが数多くありました。そしてまた何かができるようになると、別の何かができなくなる…。

 筆者は息子の子育てを、「まるで砂漠の砂で城を作るようだ」と思ったことがありました。ただ、砂の城が崩れても、大まかな形は残ります。

 息子も、何かができるようになって、またすぐに忘れてしまっても、恐らく経験値は少しずつたまっていくと思うのです。「まさに3歩進んで2歩下がる」というような速度ではありますが、息子は今もこれからも、少しずつ歩みを進めていけるはずだと思います。

 息子は一生をかけて少しずつ成長を続け、できることを増やしていけるのだと、信じて見守っていきたいと思います。