車の運転中に片手でハンドルを握りながら、もう一方の手で飲み物を飲んだり、おにぎりなどを食べたりする人がいます。運転中の携帯電話の操作は、警察の取り締まりの対象になるといわれていますが、運転中に飲食をした場合はどうなるのでしょうか。佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。

安全運転義務違反に該当する恐れも

Q.そもそも、車の片手運転は法律違反に該当する可能性があるのでしょうか。

佐藤さん「運転の状況によっては、道路交通法の安全運転義務違反に該当する可能性があります。

同法70条では、『車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通および当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない』と定められています。片手運転により、ハンドルなどの操作が困難になったり、他人に危害を及ぼす可能性があったりする場合は、違反になり得ます。

ただし、片手運転自体を禁じる法律はなく、交通の状況のほか、周囲の車両や自身の車両の状況などを踏まえ、安全に運転ができるのであれば、片手運転のタイミングがあったというだけで違反になるわけではありません」

Q.車の運転中にスマホを操作した場合、どのような罰則を科される可能性があるのでしょうか。運転中にスマホを手に取っただけでも法律違反に該当する可能性はありますか。

佐藤さん「道路交通法71条5号の5では、自動車の運転中にスマホを通話のために使用したり、スマホの画像を注視したりすることを禁じており、違反した場合、3点の違反点数が加算されるほか、普通車であれば1万8000円の反則金を納付する必要があります。

反則金の支払いを拒み、刑事裁判となった場合、スマホを通話のために使用したり、スマホを手で保持してこれに表示された画像を注視したりした人は、『6月以下の懲役または10万円以下の罰金』に処せられる可能性があります(道路交通法118条1項2号)。

さらに、スマホの使用や画像の注視により、道路における交通の危険を生じさせた場合は、より重い『1年以下の懲役または30万円以下の罰金』に処せられる可能性があります(道路交通法117条の4第1項2号)。この場合、違反点数は6点で、一発で免許停止になります。

なお、自動運転装置を備えている自動車の運転者が、自動運行装置を使用して運転する場合、一定の条件を満たせば、スマホの使用や画像の注視が許されます(道路交通法71条の4の2第2項)。

運転中にスマホを手に取っただけの場合、通話のための使用にも、画像注視にも当たらず、法律違反にはなりません。ただし、片手がスマホでふさがることによって、運転状況によっては、先述の道路交通法における安全運転義務違反に当たる可能性もあります。

また、スマホを手に取ることで、『画面を見たのではないか』『通話のための動作をしたのではないか』と疑われ、警察から話を聞かれる可能性もあります。走行中にスマホを手に持つことはできるだけ避けた方が安心でしょう」

Q.では、車の運転中にハンドルを握りながらもう一方の手で飲み物を飲んだり、おにぎりなどを食べたりした場合、道路交通法違反に該当する可能性はあるのでしょうか。

佐藤さん「運転中の飲食を直接禁じる規定はありませんが、ハンドルを握りながらもう一方の手で飲み物を飲んだり、おにぎりなどを食べたりした場合、先述の片手運転に当たり、運転状況によっては、道路交通法における安全運転義務違反に当たる可能性があります。運転中に飲食する場合は、ハンドルやブレーキなどの操作に支障がない範囲で、飲み物や食べ物ばかりに注意が集中することのないよう気を付けましょう。

安全運転義務違反の場合、違反点数は2点、反則金は普通車であれば9000円です。反則金を支払わずに刑事裁判となった場合、『3月以下の懲役または5万円以下の罰金』に処せられる可能性があります(道路交通法119条第1項14号)」

Q.ちなみに、信号待ちなど、車を停止させている間であれば、スマホを操作したり、飲食をしたりしても問題はないのでしょうか。それとも、運転席にいる間は、スマホの操作や飲食を行ってはいけないのでしょうか。

佐藤さん「先述のように、道路交通法71条5号の5では、スマホを通話のために使用したり、画像を注視したりすることが禁じられていますが、『当該自動車等が停止しているときを除き』と定められています。そのため、信号待ちなど、車を停止させている間であれば、スマホを操作したとしても、法律違反にはなりません。

飲食についても、信号待ちなどの車の停止中に、周囲の状況に気を付けながらする分には、法律違反に該当することはないでしょう。

しかし、停止中とはいえ、スマホの操作などに集中してしまうと、信号の変わるタイミングや周囲の車両の状況に気付くことができず、大きな事故につながる恐れがあります。警察は、運転前にスマホの電源を切ったり、ドライブモードにしたりすることを呼びかけています。スマホは安全な場所に停車してから使用するようにしましょう」