足の指の間や爪などにできる「水虫」。皮がむけたり、かゆみが出たりするなど、不快な症状を伴うのが特徴ですが、水虫に「なりやすい人」には、いくつかの特徴が存在するようです。どのような人が水虫になりやすいのでしょうか。肌クリニック大宮(さいたま市)院長で皮膚科医の相馬孝光さんに聞きました。

足拭きマットやスリッパなどの共有で感染

Q.そもそも、「水虫」とは何ですか。

相馬さん「水虫は、医学的には『白癬(はくせん)』といいます。皮膚糸状菌(通称『白癬菌』)という真菌(カビ)によって生じる感染症です。

白癬菌は、『ケラチン』というタンパクを栄養源に生きているカビなので、ケラチンが多く存在する皮膚の表面の角層に病変を形成することが多いです。また、角層が変化したものが毛や爪なので、毛や爪に白癬菌が感染することもあります。暖かく湿った環境を好むため、靴下や靴で覆われて高温多湿となりやすい足部の皮膚(角層)が、特に好発部位といえます。

最も頻度が多いものは、足に感染する『足白癬』です。そのうち『趾間型(しかんがた)』の水虫は、指の間の皮膚が白くふやけた状態になり、ジクジクしたり、皮がむけたりします。このタイプが最もよくみられる水虫です。

感染経路としては、水虫の人の足から剥がれ落ちた角層に付着した白癬菌が、足拭きマットやスリッパなどの共有によって、他の人に感染していくパターンが多いです。実際に、水虫の人がいる家庭をはじめ、スポーツジムやプール、公衆浴場の足拭きマットには、高確率で白癬菌が存在することが知られています。

ただし、白癬菌が角層に付着してもすぐに感染するわけではなく、その日のうちに足を洗い、清潔にした上で乾燥した状態を保てば、通常は感染しません。一方で、白癬菌が角層についたまま、湿度が高く不衛生な状態で長時間過ごすことで、感染が成立したり、悪化したりします」

Q.水虫になりやすい人の特徴とは。

相馬さん「一般的に、20歳を超えると足白癬の患者が増えるという統計があります。これは、そのくらいの年齢から社会人になり、靴を長時間履く習慣があるためではないかといわれています。『水虫は男性がなりやすい』というイメージを持つ人が多いかもしれませんが、『靴を長く履く』などの生活習慣の違いを除けば、医学的に男女で水虫のなりやすさに差があるわけではありません。

生活習慣としては、『靴を長時間履く必要がある人』『ジムやプール、公衆浴場をよく利用する人』『家族に足白癬の症状がある人』などはリスクが高いです。食習慣は関係ありません。

運動やスポーツは汗をかいて蒸れやすいので、白癬が生じるリスクがあります。特に『股部白癬(いんきんたむし)』や『体部白癬(ぜにたむし)』などに罹患(りかん)することが多いです。

その他、免疫力が低下する疾患にかかっていたり、薬剤を服用していたりする人もリスクが高いです。また、動物に寄生する白癬菌が人に感染することもあるので、犬や猫を飼っている人は注意してください。なお、遺伝的素因は現時点では不明確です」

「水虫になりやすい人」が発症を防ぐには?

Q.水虫になりやすい人が、日常生活で特に注意すべきこととは。

相馬さん「水虫になりやすい人が、水虫の発症を防ぐために、日頃から意識・行動するとよいことは次の4つです」

【足を清潔に保つ】

まず、日常的に足を清潔に保つことを意識し、蒸れを防ぎましょう。家庭内に水虫の人がいる場合は、スリッパや足拭きマット、タオルなどの共有を避けるとともに、小まめに洗濯や清掃を行ってください。

足を洗うときはせっけんをよく泡立て、こすらないように優しく、指の間までしっかり洗いましょう。すすいだ後は、タオルでしっかりと水気を拭き取ってください。擦って洗ってしまうと、皮膚の表面に細かい傷ができ、白癬菌が侵入しやすくなってしまいます。

【靴や靴下の選び方、お手入れ】

靴や靴下は通気性のあるものを選び、長時間、靴を履き続けない方がよいでしょう。もし長時間靴を履き続ける場合は、時々脱いで風を通すことを意識するとよいです。靴は何足かでローテーションするか、サンダルのような風通しがよい靴を履くようにしましょう。

可能な限り小まめに靴を洗い、靴の中の白癬菌を取り除いてしっかり乾燥させ、毎日同じ靴を履かないようにした方がよいでしょう。洗えない皮靴などは、靴の中をぬれ雑巾で拭き、白癬菌がついたあかを取り除いた後、しっかりと乾燥させてください。また、できるだけ靴や靴下を履かずにいる時間を持つことも重要です。

【公衆浴場の利用時にも注意】

銭湯やサウナといった大勢の人が利用する浴場では、足拭きマットにほぼ100%白癬菌がいると考えてよいと思います。そのため、風呂上がりにすぐ靴下や靴を履いて帰宅すると、家庭内に白癬菌を持ち帰ってしまう可能性があります。浴場を出たらきちんと水気をふき取り、靴や靴下を履く前に十分足を乾かすことをお勧めします。

【家庭内に水虫の人がいる場合】

また、家庭内に足白癬や爪白癬の人がいると、白癬菌は家のさまざまな場所で、あかや爪に包まれて存在しています。例えばトイレのスリッパ、バスマットといった皆で共用するものに存在するため、要注意です。タオルやマットなどは洗濯し、洗濯できないものはぬれた雑巾で水拭きしてからしっかり乾燥させましょう。

また、白癬菌は髪の毛やほこり、あかなどにまみれて、家具の下や部屋の隅、階段などゴミがたまりやすい場所にも存在します。白癬菌は、あかと一緒だと1年以上生き続けるため、小まめに掃除しましょう。