自宅内をはだしで生活している人は多くいると思います。その一方で、靴下や室内スリッパを履いて生活している人も少なくないでしょう。自宅内をはだしで生活することのメリットやデメリットについて、医学博士、循環器内科専門医でディオクリニックを運営する医療法人理事長の藤井崇博さんに聞きました。

転倒リスク軽減にも、つながる

Q.まず、自宅内をはだしで生活することでの効果といった科学的なメリットはありますか?

藤井さん「体と大地が直接つながるといった、自然の中ではだしで過ごすいわゆる『アーシング』(グラウンディングとしても知られています)などの論文はありますが、自宅、屋内での生活でのはだしが健康にいいという論文は残念ながら発見できませんでした。そこで、出来るだけ、科学的にそのメリットを説明します。

まず、はだしになると、足が靴や靴下の締め付けから解放され、開放感を得られます。さらに、はだしで生活すると、普段から足の指を使うようになるため扁平(へんぺい)足の予防につながります。扁平足になると、歩きにくい、少し歩いただけで疲れるなどの問題が生じるようになります。また、はだしで生活すると足の指でしっかりと姿勢を保持するようになるため、転倒のリスクが減るようになります」

Q.室内をはだしで生活することで生じるデメリットはありますか?

藤井さん「はだしだと、足が保護されていないため、ケガのリスクがあります。また、足に傷がある場合、不衛生な環境では傷口から細菌などに感染するリスクが上がります。はだしだと水虫に感染するリスクもアップします。

Q.では、“素足で室内スリッパを履いて生活”した場合のメリットとデメリットとして、どんなことが考えられますか。

藤井さん「冷気に直接触れないという点で保温効果があると思います。スリッパを履くと、物を踏む、ぶつかるなど怪我をするといったリスクが減らせると思います。

その一方で、スリッパが転倒の原因になるデメリットも考えられます。高齢になると、筋力の衰えや姿勢の変化などから、脱げやすい・滑りやすいスリッパは転倒につながりやすいです。高齢者の骨折は寝たきりになるリスクを含んでいるため、室内といえども注意を要します。

また、衛生面でのメリットもあります。足と床が汚れにくくなります。水虫など家族間における感染リスクも減らせると思います。水虫という病気はカビの一種が皮膚の角層に感染して発生します。集団生活では、皮膚の一部から、床やマットなどを介して感染することがあります。家族に水虫の人がいる場合、直接皮膚に触れないようにスリッパを履いて感染を防ぐことができます。もちろんこの際スリッパを共用してはいけません。衛生面のデメリットとしては、同じスリッパを長時間使用して不衛生になることでしょう。人は1日にコップ1杯分の汗を足にかくといわれていますし、ムレた状態でスリッパを履き続けると、ニオイや細菌の発生源にもなります。定期的にスリッパを洗う習慣も必要だと思います」

Q.“室内で靴下を履いて生活”した場合のメリットとデメリットにはどんなものがあるのでしょうか。

藤井さん「靴下を履くことで温かい足元をキープできるため、血流が悪く足が冷たい方が靴下を履くのは冷え対策に有効です。ただ、足のムレには要注意です。足がムレると臭いも発生しやすくなります。通気性がない靴下だと足汗をかいて乾かないため、逆に冷えの原因につながってしまうこともあります。靴下を履くときは、保温性、保湿性だけでなく、通気性にも着目して快適に過ごせる素材の靴下を選ぶと良いでしょう。長い時間、フローリングのような硬い床面ではだしで過ごすと、思っている以上に足に負担がかかります。靴下を履くことで足裏が保護され、床からの衝撃を和らげてくれるので、足腰への負担が軽減します」

Q.はだしで室外に出るのは、けがなどに気を付けないといけませんが、メリットがあったりしますか。

藤井さん「草、土、砂利、石などと屋外ではだしで自然と触れ合ういわゆるアーシングとは、自然と体が接触すると、生理機能が安定して、炎症、痛み、ストレスが軽減されたり、血流や睡眠が改善されるなど、複数の論文で報告されています」

Q.素足でスニーカーやブーツを履いたりするとどうなるのでしょうか?

藤井さん「靴下を履いていないと、かかとや足首の部分などが靴擦れしやすいというデメリットがあります。これは皮膚が直接スニーカーの硬い部分に擦れてしまうため起こります。

また、先述しましたが、足の裏は、思っている以上にたくさん汗をかくため、汗が直接、靴底に染み込んでしまいます。すると、臭いのもととなりスニーカーが臭くなってしまいますし、靴底や側面にも直接肌が触れて靴が汗を吸ってしまうと、生地が痛みやすくなり靴の寿命も短くなってしまいます」

 藤井さんの説明で、はだしでの生活には「開放感」「扁平足の予防」「転倒リスクの軽減」につながることが分かりました。さらに、屋外で少しの時間だけでもはだしになると、ストレスの軽減、血流や睡眠の改善も見込めるということです。今回は、靴下やスリッパを履いて生活することでのメリットとデメリットも説明してもらいました。運動する機会が減り、扁平足に悩んでいる人や、転倒する機会が増えたりしている人は、はだし生活をすると改善につながるかもしれません。