視力が悪くなったときに、眼鏡やコンタクトレンズを購入する人は多いと思います。ただ、ネット上では「眼鏡やコンタクトレンズを使うと視力が低下する」という内容の情報があり、視力が低下しても眼鏡やコンタクトレンズを使わない人もいます。

 眼鏡やコンタクトレンズを使用すると、視力が低下するのは本当なのでしょうか。視力が低下しても眼鏡やコンタクトレンズを使わなかった場合、どのようなリスクが想定されるのでしょうか。眼鏡やコンタクトレンズを使用すべき目安などについて、いわみ眼科(兵庫県芦屋市)理事長で眼科医の岩見久司さんに聞きました。

視力低下を放置すると緊張性頭痛、斜視などのリスク増

Q.そもそも、眼鏡やコンタクトレンズを使用するタイミングは自分で判断しても問題ないのでしょうか。

岩見さん「大人の場合、車の運転など一定の視力を必要とする作業を頻繁に行わないのであれば、眼鏡やコンタクトレンズの着用は個人の好みで構いません。

ただ、自分では見えていると思っていても、実は物がよく見えていない場合もあります。その場合、気付かないうちに大切な情報を見落としてしまうことがあります。また、暗所など環境の悪い場所で初めて目の不具合に気付くケースもあります。

加齢により、目のピントの調節機能が衰えることで、近くの物が見えにくくなる生理現象である『老眼』が出てくる年齢帯で、適切な老眼鏡などを持っていない人の割合は、先進国では3分の1に達するといわれています。やはり必要に応じて眼科を受診し、眼鏡やコンタクトレンズを作るのが望ましいです。

子どもの場合、視力が原因で学業に支障が出るのは問題であり、視力の低下が著しい場合は眼鏡での矯正が必要です。また、子どもは視力が不安定であり、特に小学生から中学生は近視が特に進行しやすいため、注意が必要です」

Q.では、眼鏡やコンタクトレンズを使用する目安について、教えてください。視力がどの程度まで低下したら、使用すべきなのでしょうか。

岩見さん「例えば運転免許には基準があり、自動車の場合、普通免許で両目0.7以上、大型免許・中型免許・準中型免許・けん引免許・第二種免許で両目0.8以上、原付免許で両目0.5以上など、それぞれ基準があります。

子どもは学校保健安全法に基づき、学業に支障のない視力を維持する必要があります。そのため、小学校、中学校、高校のすべての生徒は在学時に、幼稚園児や大学生は必要時にそれぞれ視力検査を受ける規定があります。検査では、結果をABCDの4段階に分類することになっています。

Aは視力1.0以上に相当します。Bは視力0.7〜0.9に相当し、十分に見えるわけではないが、後ろの席でもおおむね見えるという状態です。Cは視力0.3〜0.6に相当し、席を前に移す必要があります。Dは視力0.2以下に相当し、最前列の席でも見えず、眼鏡やコンタクトレンズの使用が必要になります。

つまり、視力がCまたはDになると眼鏡やコンタクトレンズを使用する必要性が生じます。『Cの場合、席を前方にすれば眼鏡は必要ない』とも考えられますが、実際には前方の席でも見えにくい場合があります。

また、『A』以外の段階の場合、医学上、正常な視力に相当せず、近視や乱視、遠視、その他の目の病気が関わっているケースもあるとされています。そのため、保護者に対して、眼科の受診を勧める文書を配布するなど、子どもの目の健康に配慮する取り組みが行われています。

子どもが近視になるケースが非常に増えており、小学校の高学年の場合、クラスの過半数の子どもが健診で近視を指摘されるケースは珍しくありません。そのため、学校によっては、視力の関係で席順を配慮すべき子どもが多いという状況も考えられます」

Q.ネット上では「眼鏡を使うと視力が低下する」という内容の情報があります。眼鏡やコンタクトレンズを使用することで、視力が低下する可能性はあるのでしょうか。

岩見さん「大人が眼鏡やコンタクトレンズを使用後、視力がさらに下がったと感じるのであれば、眼鏡やコンタクトレンズそのものではなく、目の使い方が悪いのかもしれません。近くで物を見過ぎると、目のピントが近くに寄ったまま固まってしまう『調節緊張』の状態になります。

その場合、そのままさらに遠くが見えるような眼鏡をかけたり、レンズの度を上げたりすると、さらに調節緊張が増えるため、より遠くの物が見えなくなる可能性があります。

子どもの場合、見えにくいとさらに物に近づいて見ることが増える可能性があります。子どもも調節緊張の状態になると近視が進行することが知られており、注意が必要です。また、眼鏡などによる適切な視力矯正がされていない場合、姿勢が悪くなり視力低下が進行する恐れがあります」

Q.視力が低下したにもかかわらず、眼鏡やコンタクトレンズを使用しなかった場合、何らかの病気につながる可能性はあるのでしょうか。

岩見さん「大人の場合、運転免許の喪失や交通事故のリスクがあるほか、目が疲れる可能性があります。さらに、眼鏡で視力矯正ができていないと、物が見えにくいだけでなく、緊張性頭痛や斜視などを生じさせる恐れがあります。

子どもの場合は近視が進行する可能性がありますが、そうなると緑内障や網膜剥離のリスクが上がるため、物を近くで見ないようにさせたり、眼鏡を作ったりするなど、できるだけきちんとした対応をするのが望ましいです」

「最近、遠くの物が見えにくくなった」と感じたら眼科を受診し、必要に応じて眼鏡やコンタクトレンズを作りましょう。