道を歩いているときに、歩行者が自転車で走行中の人とぶつかってしまうことがあります。その際、自転車に乗った人が走り去ってしまうこともあるようです。実際に、SNS上では「自転車でひき逃げされた」「自転車にぶつけられた」という内容の声が上がっています。

 自転車に乗った人が歩行者にぶつかった後、そのまま走り去った場合、どのような法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。

「3月以下の懲役」を科される可能性も

Q.歩行者と自転車の交通事故があった場合、どちらが法的責任を問われることが多いのでしょうか。過失の割合も含めて、教えてください。

佐藤さん「一般的に、自転車側の責任がより重く認められます。なぜなら、自転車は、道路交通法上、軽車両とされており(同法2条11号)、歩道と車道の区別のある道路において、原則、車道を通行しなければならず(同法17条1項)、歩道上で歩行者と接触事故を起こせば、自転車側の過失(不注意の程度)が大きいと判断されるからです。具体的な過失の割合は、事故が起こった状況や場所などによって異なります」

Q.自転車に乗った人が歩行者にぶつかってしまった際にそのまま走り去った場合、どのような法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。もし自転車でぶつかったことが原因で、歩行者がけがをした場合はいかがでしょうか。

佐藤さん「自転車も自動車と同様、歩行者にぶつかったにもかかわらず、そのまま走り去れば、『ひき逃げ』として道路交通法違反の責任を問われる可能性があります。

自転車の場合も、交通事故の際、運転者は直ちに自転車の運転を停止して負傷者を救護し、道路における危険を防止するなど必要な措置を講じなければなりません(道路交通法72条1項前段、救護義務)。また、この場合、運転者は警察官に交通事故が発生した日時などを報告しなければなりません(同法72条1項後段、報告義務)。

歩行者とぶつかったにもかかわらず、警察官に報告せず現場から走り去った場合、報告義務違反となり、『3月以下の懲役または5万円以下の罰金』に処される可能性があります(同法119条1項17号)。さらに、けがをした歩行者を放置して走り去った場合、救護義務違反となり、『1年以下の懲役または10万円以下の罰金』に処される可能性があります(同法117条の5第1項1号)。

自動車やバイクのひき逃げによる救護義務違反の法定刑は、さらに重く、『5年以下の懲役または50万円以下の罰金』であり(同法117条1項)、ひき逃げによる人の死傷が、運転に起因するものであるときは『10年以下の懲役または100万円以下の罰金』に処される可能性があります(同法117条2項)。

自転車でぶつかり、人にけがを負わせた場合、先述の道路交通法違反の責任とは別に、過失傷害罪(刑法209条、30万円以下の罰金または科料)や重過失致死傷罪(刑法211条、5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金)に問われる可能性が考えられます」

Q.自転車に乗った人にひき逃げをされた場合、どのように対処すればよいのでしょうか。警察に届け出た場合、対応してくれるのでしょうか。

佐藤さん「自転車との接触事故に巻き込まれたら、必ず警察に届け出ましょう。警察に報告すると『交通事故証明書』を発行してもらえるようになります。交通事故証明書は、加害者に損害賠償請求するために重要なものですが、警察に届け出ないと発行してもらうことができません。

警察は現場検証を行ったり、目撃者情報を集めたりと、犯人を見つけるための捜査をしてくれます。自転車のひき逃げ事件で特に被害者が軽傷の場合、未解決となっている事件も少なくありません。可能であれば、走り去る自転車や運転者の写真を撮影したり、近くに目撃者がいれば、証言してもらえるよう連絡先を交換したりしておくとよいでしょう」

Q.自転車によるひき逃げで問題となった事例について、教えてください。

佐藤さん「自転車同士の衝突事故で、相手に右足首骨折のけがを負わせたにもかかわらず、そのまま走り去ったとして、大学生が重過失傷害と道路交通法違反(ひき逃げ)の容疑で書類送検された事例があります。

大学生は、テレビで事故のニュースを見た家族に付き添われ、事故当夜に自首しました。報道によると、大学生は警察に対し、通学で急いでいたことのほか、事故発生時は『自転車の事故なのでお互いさま』と思い、立ち去ってしまったことなどを話したということです」