雨の日が続くと困るのが、洗濯物を干す場所です。晴れてさえいれば外に干せますが、ずっと部屋の中だと、洗濯物から独特の「部屋干しの臭い」が発生しがち。一度あの臭いがしみついてしまうと、何度洗っても干すたびに臭いが気になるようになってしまいます。

 外干しと比べ、どうしても臭いがついてしまいやすい部屋干しですが、臭いを抑えるためのポイントとはどのようなものでしょうか。雨の日の洗濯を乗り切る「部屋干し術」について、東京・旗の台にある三共クリーニングの田村嘉浩社長に聞きました。

雑菌の代謝物が臭いの正体

 部屋干しの臭いは、服そのものが乾けば気にならないことが多いものです。「雑巾の臭い」「生臭い」などと表現されることもある、あの独特な部屋干しの臭いは「生乾き臭」とも言われ、湿度と共に戻ってくることもあります。

 臭いの正体は、雑菌の代謝物(排せつ物)です。目に見えない雑菌は多く存在しますが、部屋干しの臭いの原因菌は、皮膚に常在する「表皮ブドウ球菌」「モラクセラ菌」が代表格。洗濯物についた皮脂や汗をエサにして分解した時に悪臭が発生します。

 表皮ブドウ球菌は、表皮で皮脂を分解し、肌を弱酸性に保つ脂肪酸にする働きをする、いわゆる「善玉菌」です。ところが、部屋干しの場合、洗濯物に残ったタンパク質や皮脂を代謝することにより、納豆のような酸っぱい臭いがします。

 一方、モラクセラ菌は、人や動物の口腔・上気道・性器の粘膜に存在する常在菌です。こちらもタンパク質や皮脂を分解して、雑巾のような悪臭の原因となる「4−メチル−3−ヘキセン酸」を生成します。これらが混じり合い、部屋干し特有の不快な臭いになるのです。

臭いを防ぐ4つのポイント

 一度部屋干しの臭いが発生すると、ただ洗濯しただけではなかなか取れません。菌が少しでも残ると、湿気が増えるたびに再繁殖するためです。乾いた洗濯物の臭いがさほど気にならなくなっても、もう一度洗ったり、汗や雨で濡れたりすると再び臭ってしまうのは、しぶとい菌が生き残って再繁殖してしまうことによるものです。

 部屋干しの臭いを防ぐ有効な対策は、菌をなるべく洗い落とし、少しでも早く洗濯物を乾かすことです。その際に意識しておくべき4つのポイントをご紹介します。

【洗濯槽の汚れを落とす】

 洗濯槽が汚れていると、どんなに洗濯物を洗っても繰り返し、菌が移ってしまいます。洗濯槽を必要以上に汚さないために、次の5つの注意点を守るようにしましょう。

・洗剤の使用量を守る
・縦型洗濯機の場合、洗濯時以外はふたを開けておく(ドラム式洗濯機は、扉が開いていると生活の邪魔になり、ぶつかると破損する場合がある)
・洗濯物は洗濯機に入れてためずに、洗濯カゴを利用する
・月1回は洗濯槽を洗浄する
・槽乾燥機能がついているなら、洗濯のたびに毎回利用する

 月1回の槽洗浄は、市販の酸素系漂白剤と湯を準備すれば簡単に行えます。漂白剤は液体ではなく粉末を用意しましょう。雑菌は酸性のため、効率よく菌を除去するには、アルカリ性の「酸素系漂白剤(過炭酸ナトリウム)」が最適です。猛毒の塩素ガスが発生するため、絶対に塩素系と酸素系を混ぜてはいけません。漂白剤は必ず1種類のみ投入してください。

 まず、洗剤投入口、排水溝、ごみ取りネットなどを掃除しておき、たっぷりの湯(ドラム式の場合はバケツ1杯程度)を洗濯機に入れます。酸素系漂白剤の効果を引き出すために、湯の温度は40〜60度がお勧めです。これ以上熱い湯は洗濯機を傷める可能性があるため、適温の湯を使用しましょう。

 次に、酸素系の粉末漂白剤を入れます。目安は水10リットルに対し50グラムです。その後、洗濯槽全体に行き渡るように3分ほど空回しをして、2〜3時間放置します。可能なら一晩置いておくのがよいでしょう。時間を置いた後は通常の洗い・すすぎ・脱水の工程を1〜2度空回しで行い、黒っぽい汚れが出なくなれば完了です。

【菌を洗い落とす】

 重要なポイントは、洗濯物を詰め込み過ぎないこと。1回の量は洗濯機の7分目を目安にし、面倒でもこまめに洗濯するようにしましょう。また、使用する洗剤量が多すぎると、粉末洗剤の場合は溶け残りが出て石けんカスが菌のエサになってしまい、液体洗剤の場合は衣類に残留してしまいます。洗剤は必ず適切な使用量を確認してください。

 普段の洗濯には、殺菌効果の高い成分が配合されている「部屋干し専用」の洗剤がお勧めです。タンパク質や皮脂の除去には、湯(40〜60度)が効果的。お風呂の残り湯を使うのも手ですが、湯船の雑菌が繁殖するのを防ぐため、すすぎは必ず水道水を使ってください。洗濯が終わったら、できるだけ早く干すようにします。

 既に臭いが付いてしまっているものを洗うときは、洗濯前に熱湯に浸してみましょう。熱湯の使用が可能な素材であれば、50〜60度以上の湯に粉末酸素系漂白剤を入れ、そこに1〜2時間浸け置きしてから、通常の洗濯をすると効果的です。絹・毛・ファスナーなどの金属類は漂白剤、化学繊維の衣類は熱湯がそれぞれNGなので必ず洗濯表示を確認してください。

【早く乾かす】

 洗濯し終わってからすぐ干すことに加え、とにかく素早く乾燥させるのがポイントです。洗濯物を効率よく乾かすためには、衣類の風通しをよくすること。服と服の間隔を拳1つ分(10センチ程度)空けるようにし、厚手と薄手、丈が長い物と短い物をそれぞれ交互に干すようにします。ハンガーそのものを太めにすると、洗濯物の前後の生地に隙間ができるため乾燥時間の短縮に有効です。

「風を当てる」「除湿する」「室温を上げる」ことも早く乾かすコツ。扇風機やエアコンの風を当てたり、除湿器を使用したりするのも効果的です。カーテンレールにかけて干すと、カーテンや窓に付着した部分の乾きが遅くなる上、窓際の汚れ・カビなどが付着して汚れてしまう場合があり、お勧めできません。スペースがない場合は、風呂場のドアを締め切って換気扇をつけたまま干すのもよいでしょう。

 浴室乾燥機があるなら、迷わず乾燥機を使用することをお勧めします。表皮ブドウ球菌なら、紫外線や乾燥で、ある程度の除菌が期待できますが、モラクセラ菌は非常にしぶとく、天日干しや乾燥でも死滅しないため、乾燥機の熱が最も効果的です。素材にもよりますが、干す前にアイロンをかけるとモラクセラ菌対策になる上、素早く乾かすことができます。

【濡れたままで放置しない】

 濡れた物が重なった状態で放置すると、菌が繁殖してしまいます。洗濯物は、バスケットなど穴の開いた通気性のよいカゴに入れましょう。特にバスタオルやフェイスタオルは、直接水気を拭き取る上にたっぷり水を吸い込むため、乾きにくい性質です。洗濯する前であっても、ハンガーなどで一度乾燥させるだけで、部屋干しの臭いを防ぐ効果が期待できます。

 化学繊維は、綿製品より比較的すぐ乾かすことができますが、毛足が長い生地やタオルなどはどうしても乾きが遅いものです。分厚いものはこまめに洗濯し、別干しにするのもコツでしょう。

臭いが付かないためのコツをマスター

「本来、洗濯物は晴れた日に屋外に干すと最も効果的に乾かすことができます。しかし、雨の日でなくとも、花粉などのアレルギーや大気の状態によってやむを得ず部屋干しをしなくてはならないこともあるでしょう。一度付いてしまった不快な臭いは、どうしても完全に取り切ることが難しいものです。臭いが付かないようにするための工夫とコツをマスターし、部屋干しの臭いを最大限カットしましょう」(田村さん)