商業施設内で子どもを遊ばせることのできるプレールームに赤ちゃんを連れて行くと、備え付けのおもちゃをなめることがあります。赤ちゃんは、いろいろな物をなめたり口に入れたりしますが、衛生的に不安を感じる人もいるようです。赤ちゃんが物をなめる行為は、やめさせた方がいいのでしょうか。子育て心理アドバイザーの雨宮奈月さんに聞きました。

大切な情報収集の時間

Q.そもそも、なぜ赤ちゃんは物をなめるのでしょうか。

雨宮さん「何かを見て、『これは何だろう?』と興味を持ち、どのような物かを確認するためです。人間には、目で見る『視覚』、耳で聞く『聴覚』、鼻で感じる『嗅覚』、味を感じる『味覚』、触って感じる『触覚』という5つの感覚がありますが、中でも『触覚』は一番早く発達し、新生児の段階で大人と同じくらいに完成しているものだといわれています。物をなめる行為は大切な情報収集の時間で、赤ちゃんの五感や脳が発達してきた証拠です」

Q.衛生的に不安を感じる人も多いようですが、物をなめる行為はやめさせた方がいいのでしょうか。それとも、子どもの自由にさせておく方がいいのでしょうか。

雨宮さん「赤ちゃんが物をなめるのは、脳の発達にとても大きな意味があると同時に体を強くするという効果もあります。なめていても、そのままやらせてあげてください。

実は、通常の生活の中にある菌で赤ちゃんにとって危険なものは、ほとんどないといわれています。それどころか、体の免疫力を高めるためには、適度に雑菌に触れることが大切だそうです。体質は善玉菌、悪玉菌という腸内細菌のバランスで、1歳半、または3歳までに決まるといわれています。風邪をひかない丈夫な体、アレルギーの少ない体を作るには、おなかの中で良い菌を増やし、それを助ける日和見菌を生活の中にある雑菌に触れることで増やすことが大切で、除菌し過ぎるのもよくないのです。

公共の場で、おもちゃの雑菌が気になるようでしたら、使用前にノンアルコールティッシュなどで拭くといいかもしれません」

Q.子どもがなめた物は使用後に消毒をした方がいいのでしょうか。それとも、そのまま放置しても問題ないのでしょうか。

雨宮さん「場所によって異なります。ご自宅であれば、そのまま放置しても問題ないでしょう。ただし、赤ちゃんがなめて濡れた部分は、放置するとカビが発生する可能性もありますので、乾いたタオルで拭き取ってあげてください。私は子どもが小さいうちは常に拭き取り用タオルを持ち歩き、おもちゃに限らずなめて回った後をさっと拭き取っていましたし、布製のおもちゃは洗濯していました。

プレールームの場合、自分の子どもがなめた後は次に使う人のためにも、戻す前にノンアルコールティッシュやおしりふきで拭きましょう。支援センターや有人のプレールームであれば、スタッフの人に『なめてしまったのですが、掃除をお願いできますか』と預けてもよいでしょう。

友達の家で遊ばせる場合は、事前にお互いがどのような考え方をしているかを共有するとよいでしょう。風邪やウイルスもそうですが、虫歯菌がうつるのが嫌で、わが子のおもちゃを友達がなめるのは嫌だと思う人は少なくありません」

Q.物をなめることで、感染症など病気のリスクが高まることはないのでしょうか。

雨宮さん「先述したように、生活の中にある雑菌は体を強くしますが、病原菌は別です。子どもの体調が悪く、免疫力が低下しているときは感染のリスクが高まりますから、『子どもがなめるもの』=『菌をもらう可能性がある』と考えて、公共施設に備え付けられたおもちゃの使用を控えることも大切です」

Q.物をなめる行為に対し、親が注意すべきことは。

雨宮さん「まずは誤飲のないようにサイズや材質に気を付けてください。小さい物を飲み込んでしまうことや、有害な物をなめてしまうことのないように、何でも口に入れてしまうということを前提に、周りに置いてある物に注意しましょう。

プラスチックのスプーンでも折れてしまうことがありますから、折れない安全な物に触れさせてあげてください。また、歯が生え始めるとむずむずして積極的に物をかむようになります。そのときも、危ないものは遠ざけつつ見守ってください。

そして、先ほども申し上げましたが、物をなめるという行為は、五感の発達段階で必要なステップです。必要以上に制止したり否定したりせず、おおらかな気持ちで見守ってあげてください。神経質になり過ぎると、赤ちゃんにも伝染してしまい、かんしゃくやぐずりにつながってしまうこともあります」