インフルエンザが流行中です。今日も発熱した子どもが次々にクリニックを受診しています。

 今朝から微熱があるという小学1年生を連れて、お母さんがやって来ました。

発熱だけでは判断困難

「先生、熱があるんです。インフルエンザではないでしょうか? 検査してください!」

「まあ、お母さん、落ち着いて。お子さんの様子を見ると、どう考えても普通の風邪です。焦る必要はありませんよ」

「でも、インフルエンザは脳症が怖いっていうし」

「うん、その気持ちは分かります」

「インフルエンザ脳症」を防ぐには、どうしたらいいのでしょうか。これには、はっきりした解答はありません。ただ、この病態は「インフルエンザの診断がつき、その後、数日たっても熱が下がらずにやがて発症する」というパターンにはなりません。いきなり「インフルエンザ脳症」という状態で始まることが多いのです。従って、次に挙げる2つのパターンの場合は、過剰な心配ということになります。

 1つ目は、インフルエンザ脳症を過剰に恐れて、お子さんが発熱間もない状態のときに慌てて医療機関を受診し、インフルエンザの検査を医師に希望するケースです。発熱から12時間以上たつと、鼻の粘膜にインフルエンザウイルスが出現してくるので、これを拭い取って検査を行うわけです。

「脳症」はウイルスが全身や脳に広がって発症するのではなく、ウイルスに対する過剰な免疫反応が引き金になると考えられているので、「少しでも早く抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ、イナビル)を使うことでインフルエンザ脳症を未然に防げる」という考え方は正しくありません。

 2つ目のパターンは、インフルエンザの診断後、抗インフルエンザ薬を処方されたにもかかわらず、発熱が3日も4日も続くというケースです。インフルエンザは本来、抗インフルエンザ薬を使用しなくても4〜5日程度で自然に熱が下がる病気です。抗インフルエンザ薬には、発熱の期間を短縮させる効果がありますが、半日か1日程度にすぎません。

 時に、抗インフルエンザ薬を使っても解熱しないことがありますが、だからといってインフルエンザ脳症の危険が迫っているというわけではありません。しっかりとお子さんを見守ってください。

解熱剤の種類に注意

 では、注意すべきことは何でしょうか。インフルエンザ脳症のある種のタイプでは、アスピリンなどの解熱剤が発症に関与しています。子どもには、「アセトアミノフェン」以外の解熱剤を使ってはいけません。

 薬局で販売している小児用の解熱剤は、商品名はさまざまでも成分はアセトアミノフェンのはずです。購入するときに確認してください。総合感冒剤の「幼児用PL配合顆粒(かりゅう)」には、サリチルアミドという解熱鎮痛剤が含まれているので飲んではいけません。

 ところが、医師の中には、サリチルアミドやメフェナム酸(商品名・ポンタール)、ロキソプロフェン(同・ロキソニン)など、アセトアミノフェン以外の解熱剤を処方する人がいます。そうした医師は、小児科専門でない場合に限られているようです。これらの解熱剤はNGです。

 結局、インフルエンザにかからないことが、インフルエンザ脳症を防ぐ最大の方法ということになります。私はお母さんに聞いてみました。

「お子さんは、インフルエンザワクチンは打ちましたか?」

「それが打っていないんです」

「来年からは必ず、10月と11月に打ってください。それから、手洗いはしっかりやっていますか?」

「ええ、一応」

「一応ではなく、しっかり手洗いをしてください」

 マスクの着用やうがいでは、インフルエンザは予防できません。最も効果があるのは手洗いです。私も診療の合間に、1日に何十回も手を洗っています。