12月は公務員や会社員など多くの人にボーナスが支給される月ですが、ネット上で、「育児休業を取った夫のボーナス査定が最低になった」という投稿が話題になっています。一方で、丸山穂高衆院議員ら、本会議や委員会を長期間欠席した国会議員には、ボーナスに相当する「期末手当」が満額支払われ、批判の声が上がっています。ボーナスに関する疑問について、グラディアトル法律事務所の井上圭章弁護士に聞きました。

法律ではなく労働契約などに規定

Q.まず、ボーナスや期末手当の一般的な位置付けを教えてください。

井上さん「年末のこの時期、『ボーナス』『賞与』の支給を受ける人も多いかと思います。他方、自分の会社では、ボーナスや賞与とは無縁だ…という人もいます。ボーナスや賞与は、会社と締結する労働契約や、会社の定める就業規則の中で支払いを定めた場合に限り支給されるものです。これは、民法や労働基準法で支払い義務が定められている『賃金』と性質が異なります。

他方、国会議員や国家公務員などの職にある人の歳費・給与などについては『国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律』『一般職の職員の給与に関する法律』といった法律などによって定められ、これらに従い、歳費・給与などが支払われることとなります。これらの法律に、『期末手当』(私企業のボーナスのようなもの)の支給について定められており、一定の計算方法に従って計算された額が支給されることになっています」

Q.一般的な会社員が病気やけがで長期間欠勤した場合、ボーナスはどのようになることが多いのでしょうか。

井上さん「先述したように、ボーナス・賞与については、労働契約や就業規則に定めがある場合に支払われるものです。そのため、長期間欠勤した場合の取り扱いについてもこれらの定めによることとなります。

ボーナス・賞与の査定期間に長期間欠勤した場合、その査定期間に出勤日数がほとんどないとなれば、ボーナス・賞与が支給されないということもあります。また、仮に支給されるとしても、金額的には少額で寸志程度となります」

Q.育児休業をしていることを理由に、不利益な扱いをしてはいけないと聞きます。その法的根拠を教えてください。

井上さん「『雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律』(男女雇用機会均等法)や『育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律』(育児・介護休業法)で、妊娠・出産、育児休業などを理由とする解雇などの不利益な取り扱いを禁止しています」

Q.育児休業を取得したことでボーナスの査定を最低ランクにしたり、ボーナスを支給しなかったりすることは合法でしょうか、違法でしょうか。

井上さん「妊娠・出産、育児休業などを理由に不利益な取り扱いをした場合、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法に違反すると考えられます。例えば、育児・介護休業法10条では『事業主は、労働者が育児休業申出をし、または育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない』と規定しています。

育児休業を取得したことの一事をもって、ボーナスの査定を最低ランクにしたり、ボーナスを支給しなかったりすることは、育児休業の取得を理由とした『不利益な取扱い』にあたるものとして違法となるでしょう。

ただし、就業規則などの定め方にもよりますが、判例上、育児休業期間について、『欠勤として減額の対象とすることはできる』と判断されています。そのため、査定を最低ランクにするなどの措置が、労働者が育児休業を取得しにくくなるなど、労働基準法などが育児休業を保障している趣旨を実質的に失わせるといえるような場合を除き、違法ではないとされています。

つまり、先ほど述べた、病気やけがで長期間欠勤したケースと同様の扱いであれば、違法とはいえないでしょう。また例えば、ボーナス・賞与に代わって育児休業中、法律に定める以上の条件での賃金や手当などの支払いがあるなど、労働者に有利な事情があり、どのことについて労働者も同意しているなどの場合も、例外的に、ボーナス不支給のような取り扱いが違法とならない場合があります」

国会を長期欠席、期末手当は…?

Q.国会議員の場合、国会を長期欠席していても期末手当には影響しないのでしょうか。また、自主返納はできないのでしょうか。

井上さん「国会議員の期末手当については『国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律』に定められており、基準日(6月1日、12月1日)に在職する者は、期末手当を受ける旨、規定されています。この規定から、基準日に在職していれば期末手当を受け取れると考えられます。国会を長期欠席していたとしても、議員として在職している限り、期末手当をもらうことができるでしょう」

Q.「一般企業で長期間欠勤した場合、ボーナスは支給されないことが多いのに?」「自主返納してはどうか?」といった声が聞こえてきそうです。

井上さん「国会議員の場合、歳費を返納すること自体が法律違反となる可能性があります。公職選挙法では、公職の候補者など(公職にある者を含む)が寄付をすることを禁止しており、歳費の返納は、この寄付に当たるものと考えられているからです。

もっとも、今年8月1日に施行された『国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律案』(いわゆる歳費返納法)によって、参議院議員が歳費の一部に相当する額(月額7万7000円が目安)を国庫に返納する場合、公職の候補者などが寄付することを禁止する条項は適用しないことを規定したことで、歳費の返納が認められることとなりました。ただ、返納するかどうかは、議員の自主的な判断に任されています」