会社法違反(特別背任)などで起訴された日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告が昨年末に国外逃亡し、年明けにはレバノンで記者会見を開きました。国外逃亡によって、保釈保証金(保釈金)計15億円は没収されます。

 15億円は一般市民には大金ですが、ゴーン被告は海外にも莫大(ばくだい)な資産を持っていたとされるだけに、ネット上では「保釈金が安すぎたのでは」「15億くらいなくなってもどうってことないんだろう」といった声が上がっています。ちなみに、麻薬取締法違反罪で起訴された沢尻エリカ被告の保釈金は500万円といわれています。

 保釈金の仕組みについて、芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

過去最高額は20億円

Q.そもそも、保釈金とはどのようなものでしょうか。

牧野さん「刑事裁判で起訴された被告人が、保釈、つまり身柄の拘束を解かれるされる際の保証として、裁判所に納める金銭をいいます。保釈の制度は、刑事訴訟法に定められており、被告や弁護人、家族などが保釈を請求でき、裁判所が可否を判断します」

Q.保釈金の額は、どのようにして決まるのですか。

牧野さん「法律には『被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額』(刑事訴訟法93条2項)と書いてはありますが、具体的な金額の規定はなく、裁判所が相場、つまり過去の金額を考慮して決めているようです。相場は、普通のサラリーマンの場合は200万円前後が多いといわれています。管理職になると500万円くらいのこともあり、会社の規模にもよりますが、大企業の経営者の場合は億単位の保釈金が求められることもあります。

起訴された事件の重大性や、前科の有無、被告の資産・収入なども金額に影響するようです」

Q.保釈金はどうやって入金し、誰がどこで保管するのでしょうか。

牧野さん「保釈金は裁判所に納めることになっています。入金は現金や振り込みなどで行い、裁判所が保管します」

Q.没収されるのはどのような場合で、誰が決定するのですか。

牧野さん「保釈金は、被告人が一時的に身柄解放されるための『担保』ですので、保釈時の条件に違反した場合は没収される可能性があります。ゴーン被告のように、許可なく国外に出た場合はもちろんですが、被告人が裁判期日に正当な理由なく出頭しないときや、国内であっても逃亡したとき、証拠を隠滅したとき、被害者やその親族に危害を加えたとき、怖がらせる行為をしたときなども、没収される可能性があります。

没収については、裁判所が判断します。没収された場合、お金は国庫(一般会計)に入ります」

Q.過去の高額保釈金の例、高額没収の例を教えてください。

牧野さん「『ハンナン牛肉偽装事件』の浅田満受刑者が20億円で最高額とみられます。『イトマン事件』の許永中氏が6億円でした。許永中氏は保釈中に韓国で行方不明になり、保釈金を没収されました。没収額としてはこれまで、許永中氏が最高額といわれていましたので、今回のゴーン被告の15億円は、没収額としては最高額と思われます」

Q.今回、没収額としては過去最高額のようですが、15億円という保釈金は「ゴーン被告にとっては安かったのでは?」という声があります。

牧野さん「保釈金としては20億円が過去最高額とみられますので、これが基準となった可能性があります。ただし、ゴーン被告にとっては、先述の『被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額』(刑事訴訟法93条2項)とはいえなかったようです」

Q.ゴーン被告が一生、国外にいて日本に戻らなかった場合、会社法違反などの裁判はどうなるのでしょうか。

牧野さん「刑事訴訟法286条に『前3条(法人被告人、軽微事件、出頭義務の免除)に規定する場合のほか、被告人が公判期日に出頭しないときは、開廷することはできない』とありますので、裁判は開かれないことになります。

ただし、ゴーン被告は、日本と犯罪人引き渡し条約があるアメリカへの渡航はできなくなるでしょう。また、ゴーン被告とその妻は国際刑事警察機構(ICPO)に国際手配されました。レバノンに滞在している間は逮捕される可能性は低いですが、彼らの銀行口座凍結の可能性を含め、海外での活動は制限されます」