テレビ番組などで根強い人気を誇るのが「物まね」です。全てを丸ごとコピーするかのような物まねや、一部だけを物まねするもの、本人のしぐさを誇張しすぎた物まねなど、その形態はさまざまです。ビジネスの世界で、企画や商品のコピーは権利関係の法律に抵触しますが、物まねにも権利関係の法律が適用され、無断で物まねを行うことはNGなのでしょうか。

 芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

誇張しすぎた「物まね」は名誉棄損も

Q.物まね芸人がテレビ番組などの営利目的で、無断で物まねを行うことは、何らかの権利関係の法律に抵触するでしょうか。

牧野さん「営利目的で、本人などに無断で物まねを行うことはNGです。まず、アーティストや芸人など著名人の名前や写真、サインなどを営利目的で利用する権利は、『パブリシティー権』として、法的に保護されています。その権利を侵害することは、民法の『不法行為』にあたります。

営利目的の物まねで、著名人の名前や姿を無断で使用すると原則として、パブリシティー権の権利者(著名人本人や所属プロダクション)から損害賠償を請求される可能性があります。

また、物まねが本人の名誉をおとしめたり、侮辱するものであったりする場合は、名誉毀損(きそん)や侮辱として民事や刑事の責任を問われる可能性があります。楽曲に合わせながら物まねをする場合は、著作者や著作権の権利者(作詞家、作曲家など)の許諾(使用料の支払いなど)が必要でしょうし、ドラマなどのせりふを利用して物まねをする場合は、ドラマの著作者や著作権の権利者(脚本家など)の許諾(同)が必要となるでしょう。

ただ、テレビの物まね番組では、著作権についてはテレビ局を通じて権利処理がなされていると思います」

Q.本人を丸ごとコピーするような物まねではなく、一部だけを物まねするもの、あるいは本人のしぐさを誇張しすぎた物まねも、何らかの権利関係の法律に抵触するでしょうか。

牧野さん「一部だけを物まねしても、本人にとっては重要な一部です。『本人であること』や『楽曲』を認識できれば、パブリシティー権や著作権侵害の可能性が出てくると思います。本人のしぐさを誇張しすぎた物まねも、『著作者人格権』の『同一性保持権』の侵害の可能性や、名誉毀損、侮辱の問題が出てきます」

Q.トーク番組に出演した物まね芸人が「まだ物まねをする本人に公認してもらっていない」と話す場面を見ることがあります。本人の公認を得ずに物まねを続けた場合、最悪、物まねされた本人から訴えられることもあるのですか。

牧野さん「本人の許諾は事前に得ておいた方がよいと思います。本人と物まねをする側とに『暗黙の了解』が成立している場合もありますが、物まねを無断で行ったことで本人との関係が悪くなれば、法的な措置がなされる可能性があるでしょう。

ただ、物まねされた本人側も視聴者に覚えてもらい、人気が出るなど、実は物まねをされていることでメリットを得られる側面があります。そのため、無断で物まねをされたからといって、いきなり裁判になるケースは少ないでしょう」

Q.私的な宴席の参加者が、余興で物まね芸を披露することがあります。営利目的ではありませんが、こうした行為も厳密には法的責任が問われることがあるのでしょうか。また、物まねが似ていなくても、法的責任が問われることはあるのですか。

牧野さん「私的な宴席の参加者が余興で物まね芸を披露することは、非営利目的であればパブリシティー権の侵害には問われません。著作権についても、著作権法38条の非営利演奏などにあたり、面白おかしく改変しない限りは(同一性保持権の侵害にならない限りは)著作権侵害には問われないでしょう。

物まねが似ていない場合は、そもそも法的責任が問われることはないでしょう。物まねの意図だけでは法的な責任は発生しません」

Q.本人の物まねを行うときには、どのような手続きが本来ならば必要ですか。

牧野さん「営利目的で本人の物まねをする場合ですが、一般的に、楽曲についての著作権の使用許諾は、一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)の手続きに従えばよいでしょう。ただし、楽曲を改変する場合は、著作者人格権(同一性保持権)が問題になるので、著作者(作詞者、作曲者、音楽出版者など)の許諾が必要でしょう。

パブリシティー権は、本人や所属プロダクションから許諾を得る必要があるでしょう。場合によっては、使用料が発生する可能性があります」