先日、「SPECIAL PRICE」と書かれたシールがネット上で話題になりました。ある店舗で元の値札にこのシールが貼られており、「値引きされたお得な商品」と思って購入したところ、シールを剥がすと、元々の値段と同じ価格だったからです。このような「価格が安くなった」と誤解させる表示を見たことがある人も多いのではないでしょうか。

 では、「SPECIAL PRICE」という販売価格を表示したにもかかわらず、実は通常の販売価格と同じだった場合、違法なのでしょうか。あるいは、合法なのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

景表法「有利誤認表示」の可能性

Q.「SPECIAL PRICE」という販売価格を表示したにもかかわらず、実は通常の販売価格と同じ場合、違法なのでしょうか。あるいは、合法なのでしょうか。

牧野さん「『不当景品類および不当表示防止法(景表法)』に違反する可能性があります。景表法5条2号では、『取引条件について、実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示』を『有利誤認表示』として禁止しています」

Q.違反した店舗には、何らかの罰則があるのでしょうか。

牧野さん「該当する店舗に対して、有利誤認表示を行うことを差し止める措置命令など、消費者庁は必要な事項を命じることができます(景表法7条)。 さらに、この命令に違反した場合、2年以下の懲役または300万円以下の罰金(情状によりこれらの併科)に処される恐れがあります(景表法36条)」

Q.「SPECIAL PRICE」と同じように、消費者にお得感を与える表示の事例として、他にどのようなものがありますか。また、それらは違法でしょうか、合法でしょうか。

牧野さん「『優良誤認表示』と、有利誤認表示の一つに分類される『二重価格表示』があります。優良誤認表示とは、競合他社が販売する商品・サービスよりも特に優れているわけではないのに、あたかも優れているかのように偽って宣伝する行為を指しており、違法です(景表法5条1号)。

二重価格表示も、有利誤認表示として景表法で禁止されています。例えば、家電量販店が家電製品の店頭価格について、競合店の平均価格から値引きすると表示しながら、その平均価格を実際よりも高い価格に設定し、そこから値引きを行っていた場合です。あるいは、眼鏡店がフレームとレンズの一式で、『メーカー希望価格の半額』と表示していたものが、実際には、メーカー希望価格が設定されていなかったなどの場合です」

Q.値引きをして商品を販売する場合、表示方法に何らかのルールが存在するのでしょうか。存在する場合、どのように表示することが求められているのですか。

牧野さん「消費者庁の『価格表示ガイドライン』が2016年4月1日に改定され、どのような価格表示が消費者に誤認を与え、景品表示法上の『不当な価格表示』に該当する恐れがあるかを明らかにしており、『おとり広告』にならないように具体例で明記されています。

例えば、(1)衣料品店が『紳士スーツ 当店通常価格5万8000円の品を4万円』と表示しているところを、実際には当該商品と同一の商品について、通常4万5000円として販売しているとき(2)寝具店が『羽毛ふとん 当店通常価格1万5800円を1万2000円』と表示しているところを、実際には当該商品は(これまで販売したことがなく)今回初めて販売されるとき――などです」

Q.今回話題になった「SPECIAL PRICE」のように、値引きされた商品と思い購入したところ、最初の販売価格と同じだったと気付いた場合、消費者は商品の返品と代金の払い戻しを求めることは可能でしょうか。あるいは、不可能でしょうか。

牧野さん「購入した価格自体は、お互いの合意が成立しているので詐欺行為にはなりません。『景表法違反なのだから、返品に応じる義務があるのでは?』と思う人も多いかと思いますが、詐欺的な行為に該当しない以上は残念ながら、法的には困難です。売買契約の取り消しを主張して、商品の返品と代金の払い戻しを求めることは難しいでしょう。

景表法には、消費者の救済(損害賠償請求)は明示されておらず、民法や消費者契約法上の契約違反、不法行為などの要件を満たさないと救済されません。ただし、消費者庁が景表法違反を指摘した場合、業者側が自主的に返金する場合もあります。これは、違法行為をした業者に対して消費者庁が課す課徴金(行政上の措置として負担させる金銭)が、自主返金によって減額されるためです」

Q.消費者はいつの時代も「できるだけ安く購入したい」と思うものです。値引きされていると思う商品を見つけたとき、どのようなことに注意すれば、だまされずに済むでしょうか。

牧野さん「消費者は商品やサービスの購入時、表示されている価格や文言をそのままうのみにしてはいけません。競合他社の同じような商品やサービスが、どれくらいの価格で販売されているのか自分自身で調べ、市場価格として妥当であるかどうかの判断基準(相場観)を、ある程度持つ必要があると思います。その上で、最終的な商品やサービスの購入を行うべきでしょう」