テレビのバラエティー番組の中には「子どもに見せたくない」といわれる番組が時々あります。乱暴な言葉が飛び交ったり、暴力的な行為が行われたりする番組がよく、批判の的になります。

 しかし、最近では、ニュース番組についても「子どもに見せたくない」と思う人がいるのではないでしょうか。「女性はいくらでもうそをつく」「総合的、俯瞰(ふかん)的な視野で判断」「コメントを差し控える」など、政治家の発言や態度に関する話題が取り上げられることが多く、子どもが「偉い人が言っているのだから」と政治家の悪い言動をまねることも考えられます。

 もし、子どもがテレビやインターネットを通じて、大人の悪い言動をまねた場合、どのように注意したらいいのでしょうか。また、テレビやネットとどう向き合わせるべきなのでしょうか。子育てアドバイザーの佐藤めぐみさんに聞きました。

発言に過度に反応しないこと

Q.子どもに見せてもよい番組や情報、できるだけ見せない方がよい番組や情報の基準について教えてください。

佐藤さん「やはり、暴力シーンや性の話題などは、親が子どもの年齢を踏まえて判断すべきポイントになると思います。また、私の専門である心理学的な観点でいえば、『人の不幸をネタにするコンテンツ』はおすすめしません。専門用語で『シャーデンフロイデ』といわれるもので、要は『他人の不幸は蜜の味』ということです。

4歳から8歳の子を対象にした研究では、この全年齢でシャーデンフロイデは見られたものの、大人と比べると低い数値だったそうです。つまり、『他人の不幸は蜜の味』という感覚は後学的な要素が大きいということです。

人の失敗を笑ったり、人をばかにして喜んだりというのは、親としては絶対にやってほしくないことだと思います。小さい子どもほど、他者のやっていることを見て学習することも多いので、親がこういう視点を持つことは大事なのではないかと思います」

Q.では、子どもがテレビやネットから悪い影響を受けないために、親が気を付けるべきことはありますか。

佐藤さん「子どもがテレビを見て、そのキャラクターのまねをすることはよくあります。かわいらしいポーズはもちろん、大人の悪い言葉などもそうです。よいことも悪いことも起こりうるのがテレビやネットの世界です。先述のように、親として気になるのは、暴力シーンではないでしょうか。例えば、『戦闘シーンのあるコンテンツをどこまで見せていいのか』『正義の味方だからといって暴力を行使していいのか』といったことが気になると思います。

子どもに暴力シーンの映像を見せると、その後の暴力性が一時的に増すことは心理学の実験でも分かっており、これは『観察学習』と呼ばれています。低年齢の子どもほど影響を受けやすく、見た直後に興奮状態となったり、思考、感情に変化が起こったりしりやすいことが指摘されています。そのため、小さい子どもほど、親が番組を吟味することが大切だと思います」

Q.もし、子どもがテレビやネットを通じて悪い言動を覚えた場合、どう注意するのが望ましいのでしょうか。

佐藤さん「基本的には、端的に『その言い方はよくない』と注意するのが望ましいでしょう。特に小学校未満の子どもはまだ、相手の立場になって物事を考えるのが難しく、『こういうことを言われたら、どんな気持ちになると思う?』といった形で説得しても伝わりにくいことがあります。小学生になれば、なぜよくないのかを理解できるようになるため、道徳的な観点で教えることも大切です。

また、小さい子の場合、その言葉の意味が分からないまま使っているケースもあります。その場合、もし、周囲の人が笑ったり驚いたりすれば、子どもは『反応してくれる』と考え、その言葉を積極的に使おうとします。そのため、大人が子どもの悪い言動に乗らないことも大事になってきます」

Q.子どもは芸能人や政治家など社会的地位のある大人の言動をまねたがります。例えば、「宿題をやらなかったのは総合的、俯瞰的な視野で判断した結果」「テストの点数についてはプライバシーに関わることなのでコメントを控えたい」などと口答えをしてきたら、どのように対処したらよいのでしょうか。

佐藤さん「こういう形で子どもに反応されると、確かにカチンときます。普通に反抗してくれた方がまだましだと思う人も多いかもしれません。そのため、思わず感情的になってしまいそうですが、そうすると子どもの意図するところとなり、反省を促しにくくなってしまいます。

こういうときに大事なのは『宿題をやらなかったこと』『成績が悪かったこと』など、元の論点に目線を戻すことだと思います。政治家などの発言をまねることで、一度そこに親の視点がそれるのは子どもにとって好都合なことです。なぜなら、親が政治家の発言に対してくどくど言ってくれた方が、成績のことを怒られるより、ずっといいからです。

まずは親が冷静になり、子どもの発言に乗せられないことが大事であり、そのためにはその言葉を無視するのも手だと思います。何もなかったかのように『宿題をやらなかったこと』『成績が悪かったこと』に話を戻すことで、『この言葉は親に言っても効果がない』と分からせれば、こうした言い訳は自然と消えていきます」

テレビやネットを禁止すべきか?

Q.もし、子どもが悪い言動を改めない場合、テレビやネットの閲覧を禁止するのは有効なのでしょうか。

佐藤さん「テレビやネット上の発言をそのまま繰り返している場合、それを言うことで何かしらの恩恵を受けていることが多いものです。多くは相手のことを操作できている感覚です。これは子どもに限らず、人は誰でも自分が思ったような反応が得られれば『しめた』『ラッキー』などと思います。

よくあるケースは仲間同士でブームになっていることです。悪い言葉でありながら、仲間内の共通言語になり、互いにその言葉を言い合うことで笑いを取れたり、連帯感を高められたりするため、その言葉を使う動機付けになることが多いです。自分の子どもだけを叱ったところで効果が得られないことが多く、たとえ、テレビやネットを禁止しても、友達のルートで情報が入ってくればあまり効果がないといえます。

小さいうちは親同士で協力し合うのも手だと思いますが、思春期以降はそういう手だてが通用しづらくなります。もちろん、きちんと注意することは大切ですが、飽きてその言葉を使わなくなるのを待つ方が現実的です」

Q.子どもがテレビやインターネットと適度に接するために親ができることはありますか。

佐藤さん「子どもにテレビやネットと適度に接するための自制心を身に付けさせるためには、やはり、幼少期の子育てが重要となります。親が育児に丁寧に関われば、成長してからの逸脱は起こりにくいです。逆に、小さい頃から、子どもに制限なくテレビやネットに触れさせていると、成長してから制御が難しくなるといえます。

つまり、事が起こってから手だてを考えるよりも未然に防ぐ方がおすすめです。先述したように、幼少期から、テレビやネットを見せるときは時間的にも内容的にも子ども任せにせず、まずは親が『○時から○時までの○○という番組はこういう内容だ』という情報を得た上で、子どもに見せることを意識していき、子どものメディアとの付き合い方の土台を育てていくのがよいと思います」