子育てで大切なのは、親子関係をよくすることです。なぜなら、親子関係がよいと、子どもの自己肯定感と他者信頼感が共に育つからです。では、どうしたら、良好な親子関係を築くことができるのでしょうか。

否定的な言葉を投げ掛けない

 それは一言で表現すると「言葉遣いに気を付ける」こと。全ての人間関係は言葉遣いによって決まるからです。相手が大人であろうが子どもであろうが、他人であろうが家族であろうが、この基本は変わりません。いくら、自分では相手を大切に思っていても、言葉遣いがまずいとその気持ちが伝わりません。

 まずい言葉遣いの代表が否定的な言い方です。例えば、「また○○してない。なんで○○しないの?」「○○しなきゃダメでしょ」「ダメダメ。それじゃダメだよ」などです。こういう言い方をされて、気持ちよくなったり喜んだりする人がいるでしょうか。いるはずがありません。誰でも不愉快な気持ちになります。

 そして、不愉快になるだけでなく、素直に心を開くことができなくなります。人間は相手の言葉の中にほんの少しでも自分を非難する要素を感じ取ると、その瞬間に心の窓が閉まってしまうからです。すると、たとえ相手が言っていることが正しいと頭では思っていても、また、たとえ自分のことを思って言ってくれているのだと分かっていても、素直に聞けなくなります。

 そして、同じ人にいつもこのような言い方をされ続けると、素直に聞けないだけでなく、相手に対する不信感も生まれます。「もしかしたら、この人は自分のことをよく思っていないのではないか?」という気持ちが出てくるのです。これでは、よい人間関係など望むべくもありません。

 人間関係をよくしたいと思ったら、このような否定的な言い方をやめて、肯定的な言い方をすることが大切です。例えば、「○○するといいよ」「○○するとうまくいくよ」「○○すると気持ちいいよ」などです。こういう言い方には相手を非難する要素が入っていません。肯定的で前向きな印象を受けるので、言われた方は自分が肯定されたような気持ちになれるのです。

 ついつい、「なんで○○しないの?」「○○しなきゃダメでしょ」などの言い方になってしまう人は言う前に自分の頭で翻訳して、肯定的な言い方に切り替えるようにしましょう。それだけで、自分の子どもに限らず、さまざまな人との関係がよくなっていきます。

 肯定的な言い方の中でも、特に大切で効果的なのが相手を褒める言い方です。人は褒められるとうれしくなって、心がほかほかして、幸せな気持ちになります。そして、自分を認めて褒めてくれた相手に信頼感を持ち、その人が大好きになるのです。

 また、褒められたことで自分に自信を持てるようになり、さらに頑張るエネルギーが湧いてきます。褒められたことがきっかけとなって、いい方向に進んでいけるのです。私たちは自分の人間関係をよくするためだけでなく、自分の周りの大切な人々をよい方向に伸ばしてあげるためにも褒め上手になりたいものです。

 褒め上手な人は子どもや家族、同僚、先輩、あるいはほんの少し関わっただけの人すらも幸せな気持ちにして、いい方向に伸ばすためのお手伝いができます。褒め上手になるためにはいくつかコツがあります。

 1つ目は「部分を褒める」ということです。例えば、子どもの絵を見たとき、「あまりうまくない」と感じたとします。そういうときは、いい部分に注目して褒める所を探すことが大切です。全体的にはそれほどよいと思えない絵でも、いい部分に注目すれば、「この花の色がすごくきれいだね」「ウサギが今にも動き出しそうに描けているね」と褒めることができます。

 あるいは、同僚が作った企画書を見たときも同じです。いい部分を見つけて、たくさん褒めてあげてください。もし、アドバイスしたいところがあるときも、たくさん褒めた後にしてください。そうすれば、たくさん褒められて心が開いているので素直に聞いてもらえます。

 2つ目は「ウソでも褒める」です。例えば、子どもの書き取り帳を見たときは「このごろ、字が丁寧になってきたね」と褒めます。特にそういった事実がなくても褒めるのです。小さい子どもなら、すぐその気になってくれます。小学校高学年以上の子どもであれば、「え〜、そんなことないよ。褒めてやらせようと思ってるでしょ」と言うかもしれませんが、それでも決して悪い気はしません。

 そして、1つ目の「部分を褒める」を使って、少しマシな字を5、6個見つけて、毎日褒め続けます。そうすると、丁寧に上手に書くようになります。

 3つ目は「一歩下がり法」です。これは、できて当たり前と思っていることを一歩下がって、素晴らしいことだと認め直すことです。例えば、「元気だけが取りえ」という子がいても、元気なことは当たり前のことと思われて褒められないことが多いものです。しかし、毎日生き生きと生活していることは素晴らしいことではないでしょうか。元気であることを大いに褒めてあげてください。

「あなたは毎日、元気いっぱいで気持ちがいいね。あなたを見ていると元気がもらえるよ。みんなに元気のエネルギーを分けてくれて、ありがとう」と心を込めて褒めてあげてください。子どもはとても喜ぶはずです。

短所を長所に変える

 4つ目は「リフレーミング」です。これは、いつも短所だと思っていることも見方を変えて言い換えれば、長所でもあると気付いて認め直すことです。例えば、何事もマイペースで人より遅くなっても焦らない子がいたとします。これは短所に見えるので、つい、「なんで、そんなに遅いの。早くしなさい」と叱ってしまいがちです。

 しかし、これは見方を変えれば、「人のペースに左右されずに自分のペースでじっくり行動できる」ということでもあります。こういう子は友達にも優しくおおらかであることが多いものです。

 5つ目は「熱中を褒める」です。人は誰でも好きなことや熱中していることがあります。ダンゴムシが大好きな子もいれば、オシャレが大好きな大人もいます。そのような、本人が熱中していて思い入れのあるところを褒めましょう。すると、相手はとてもうれしくなって、褒めてくれた人のことが大好きになります。

 ただし、実はこれがなかなかできません。人が熱中していることに自分が興味を持てないのは、それに対して価値を見いだせないからです。特に子どもが熱中していることはほとんどの場合、大人にとって価値のないことが多いものです。しかし、たとえ、それが自分にとって価値のないことでも相手の立場に立って褒めてあげることが大切です。言い換えると、「こちらが褒めたいことよりも、本人が褒めてもらいたいことを褒める」ということです。

 さて、褒めるコツをいくつか挙げてきましたが、大切なのは実行することです。ぜひ、「1日1回は褒める」と決意して、実行してください。そうすれば、間違いなく、人間関係がよくなっていきます。