お笑いコンビ・トレンディエンジェルの斎藤司さんが10月上旬、番組のロケ中に背骨を圧迫骨折するなど全治3カ月の大けがを負いました。通常であれば、入院してもおかしくないほどのけがですが、齋藤さんは骨折翌日から、テレビ番組の収録をこなしており、ネット上では「圧迫骨折はやばい」「後遺症が怖い」「ゆっくり休んでください」などの声が寄せられました。背骨を骨折した後、すぐ仕事を再開しても問題ないのでしょうか。また、骨折後に後遺症が出る可能性はあるのでしょうか。

 骨折後の治療や注意点について、医療法人社団鎮誠会顧問で理学療法士の金川潤也さんに聞きました。

極力負担かけなければ可能だが…

Q.一般に、骨折が完治するまでにはどの程度の期間かかるのでしょうか。

金川さん「一口に『骨折』といっても、その部位や程度、患者さんの年齢によって状況はさまざまですが、一般的に、完治までには数週間から数カ月必要です。

そもそも、骨にはいくつかの種類があり、細長い『長骨(ちょうこつ)』といわれる骨や手首の骨のような『短骨』など実にさまざまな形があり、全身では200個以上の骨が存在します。また、骨には、体を支えたり、心臓や脳、胃、腸などを守ったり、血液を造ったり、体内のカルシウムを貯蔵したりとたくさんの役割があります。そのため、骨折の起きた部位やその程度によって状況がかなり異なります。

骨折の治癒過程も状況により異なりますが、一般的には、骨折による炎症が生じた後、新たな組織が造られ始めます。そして、軟骨が形成されて新しい骨ができ、新しい骨と古い骨が入れ替わる形で、骨折の状態から、いわゆる完治の状態へと変化していきます」

Q.背骨の骨折の主な原因や治療期間を教えてください。

金川さん「一般的に、脊椎(背骨)の圧迫骨折は骨粗しょう症によって、高齢者に多く起きる骨折ですが、今回の斎藤さんのような比較的若い人の骨折は少し意味合いが異なります。若い人の脊椎圧迫骨折の場合、多くは不意の転落などによって起きます。また、物を持ち上げるなどの力仕事が多い人は仕事上で骨折する人もいます。今回の斎藤さんの骨折は報道されている内容から考えると、不意の転落が原因と考えられます。

そもそも、背骨(脊椎)は日常生活を行う上で、体重を支えると同時に、床面から体に伝わる反力(体重分の力を押し返す力)をたくさんの骨や筋肉の組み合わせによって、うまく力を分散し体を支える役割をしています。そのため、脊椎の圧迫骨折の治療は圧迫された骨を守るため、日常生活が制限されることが腕や脚の骨折との大きな違いといえます。

また、治療期間については、腰などの脊椎に負担がかかりにくい姿勢をいかにして保つかで異なってきます。なぜなら、姿勢によって、脊椎にかかる負担が倍以上異なるからです。例えば、寝ている姿勢と比較すると、前かがみで椅子に腰掛けている姿勢は腰にかかる負担が2倍程度になります」

Q.背骨を骨折した場合、どのような治療を行うのでしょうか。また、背骨以外の部位を骨折した場合も治療法は同じなのでしょうか。

金川さん「一般的に、脊椎の圧迫骨折などの治療は脊椎に負担がかかる姿勢を極力避けることが重要です。そのため、まずは腰の周辺をコルセットなどで固定し、背骨に負担のかかる姿勢になりにくいようにした上で、医師から脊椎(圧迫骨折の場所)に負担がかからない姿勢や動作などの指示を受けながら、リハビリを進めます。

寝る姿勢は腰に負担がかかりにくい一方、洋式便座で排せつする際や、前にしゃがみこんでスマホを操作する姿勢などは腰に大きな負担がかかるので注意が必要です。治療中は、おへその向きを床面と平行にする姿勢を意識することがコツです。また、コルセットなどで固定している期間は飲酒をできるだけ控えてください。

腕や脚などの骨折の場合も、骨折した部位を一定期間固定し、負担をかけないようにしながら、リハビリを進める点は一緒です。ただ、脊椎の骨折よりも比較的自由な姿勢で過ごせると思います。そのため、筋力低下を防ぐためにも、治療中はできるだけ体を動かした方がよいでしょう」

Q.背骨を骨折した場合、歩けなくなるなどの後遺症が出る可能性はありますか。

金川さん「『骨折後の適切な姿勢の保持』『一定期間の日常生活時のコルセットなどによる適切な固定』『背骨に負担のかかりにくい姿勢の保持』など一連の適切な対応ができれば、歩けなくなるほどの後遺症が出現することはあまりないでしょう。ただし、足のしびれ、足の力が入りにくいなどの症状がある場合はすぐ医師に相談してください」

Q.斎藤さんは骨折翌日から、仕事をこなしていたようですが問題ないのでしょうか。本来であれば、安静が必要なのでしょうか。

金川さん「斎藤さんの骨折の状態をエックス線検査などで評価しているわけではなく、痛みや骨折の程度にもよるので非常に答えにくい質問ですが、脊椎に負担を極力かけない姿勢でできる仕事で、しかも、痛みのない範囲であれば、就労が可能な場合もあると思います。長期的な安静もまた、筋力が低下することなどで、あまりメリットはありません。

ただし、整形外科医が画像診断などを行い、どのような方向に対しての運動がリスクを伴うのかということをしっかり判断してもらった上で、就労の可否を判断することが条件です」

Q.もし、骨折をした場合、どのように対処すればいいのでしょうか。

金川さん「骨折が疑われる状況であれば、速やかに近くの整形外科を受診してエックス線検査を行い、その部位や程度を診察してもらうことが必要です。また、先ほども申し上げた通り、骨折後に安静を意識し過ぎると筋力低下など体調に支障をきたすことが多いです。担当医師やリハビリの担当者に体の適切な動かし方などをしっかり確認してください」