多くの雨が降った日、道路に大きな水たまりができて、その上を通過した車の水しぶきで歩行者の衣服がぬれることがあります。車が「水はね」をして歩行者の衣服などをぬらしてしまうことは道路交通法で禁止されていると聞きますが、実際、水はねをした車の運転者が何らかのペナルティーを科されたと聞いたことがありません。

 もし、歩行者として歩いているとき、車の水はねで衣服がぬれてしまった場合、現状では泣き寝入りするしかないのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

道交法で反則金規定

Q.車が水はねをして、歩行者の衣服などをぬらすことは道路交通法で禁止されているというのは本当でしょうか。

牧野さん「本当です。道路交通法71条1号では、運転者が車などでぬかるみや水たまりを通行するときは、泥よけ器を付ける、または徐行するなどして、泥土や汚水を飛散させ、他人に迷惑を及ぼさないようにすることが定められています。違反した場合、反則金として大型車7000円、普通車・二輪車6000円、原付き車(原動機付き自転車など)5000円が求められます。反則金を支払わなかった場合、5万円以下の罰金が科せられます(同法120条9号)」

Q.水はねでぬらされた歩行者は衣服のクリーニング代など、損害賠償を求めることは可能でしょうか。

牧野さん「可能です。水はねによって、歩行者は衣服がぬれてしまう他に、持ち物のスマホなどが水浸しになって壊れてしまう可能性もあります。そうした損害を被った場合、歩行者は運転者に対して、衣服のクリーニング代やスマホの修理、購入料金などについて、民事上の損害賠償請求ができます」

Q.とはいえ、水をかけた車は通常、すぐにその場を走り去ってしまうため、どのような車に被害を受けたか、明らかにすることは難しいと思います。歩行者は泣き寝入りするしかないのでしょうか。

牧野さん「先述したように、車が水はねをして、歩行者に迷惑を及ぼすことは道路交通法で禁止されていますし、反則金や罰金も定められています。また、損害賠償請求も可能です。

ただし、民事上の損害賠償請求をしたり、警察に訴えたりするには、車から水をかけられたという事実を客観的に証明できる証拠が必要になります。車の色や車種、ナンバーを覚える、メモを取る、スマホで加害車の写真を撮るなど、証拠を残すことができれば、民事上の損害賠償請求をしたり、警察に被害届を出せたりするでしょう。

とはいえ、ほとんどの人は突然、車から水をかけられるわけですから、かなり動揺すると思います。その動揺した中で、証拠を残そうとするのは難しいでしょう。よく、『泣き寝入りするしかない』と言われてしまうのはこうした事情があると思われます」

Q.水はねをしてそのまま立ち去り、その後に事実が明らかになったときは、ひき逃げのように運転者の罪が重くなるのでしょうか。

牧野さん「交通事故を起こした場合、加害者は被害者の救護義務(道路交通法72条)が定められているため、車を停車させて救護しなければいけません。もし、事故を起こしてそのまま立ち去った場合、救護義務違反、いわゆる『ひき逃げ』となり、罪が重くなります。一方、水はねの場合は、法律で救護を義務付けているわけではないため、仮に水はねをしてそのまま立ち去り、その後に事実が明らかになっても、罪が重くなるようなことはありません」

Q.水はねによるトラブルを防止するためには、歩行者が注意し、ぬれないようにすべきなのでしょうか。それとも、運転者が注意すべきことなのでしょうか。

牧野さん「運転者だけではなく、歩行者も気を付けておくべきだと思います。歩行者は水たまりがあれば、車の水はねを想定して、できるだけ、水たまりから離れて歩くなどの注意を日頃から心掛けましょう。運転者は道路交通法の規定を守り、歩行者が走行道路の近くを歩いているのを見つけた場合、できる限り徐行運転に努めるべきです。

とはいえ、車の水はねによる反則金や罰金などのペナルティーが決まっていても、残念ながら、歩行者が泣き寝入りせざるを得ないことが多いのが実情だと思います。雨の日には、歩行者が水たまりと車に気をつける方が現実的かもしれません」