「猫」と赤ちゃんが一緒に寝ている様子や、仲良く遊んでいる場面を収めた動画・画像がSNS上で公開されることがあります。ほほ笑ましい光景ですが、赤ちゃんの衛生面への影響や、けがの危険性を心配する人もいると思います。赤ちゃんがいる家庭で猫を飼うことに問題はないのでしょうか。乳幼児など幼い子どもがいる家庭で猫を飼うときの注意点について、獣医師の増田国充さんに聞きました。

大きな音や急な動きを警戒

Q.幼い子どもがいる家で猫を飼おうと考えている人たちは、どのような心配事を抱えているのでしょうか。

増田さん「小さいお子さんがいる人が自宅で猫を迎え入れるとき、心配な事柄はいくつかあると思います。中でも『小さい子どもも含め、家族と猫とが仲良くやっていけるのか』『子どもにアレルギーが出ないか気になる』といった声が多く聞かれます。人によって、環境や条件などが異なる部分もあるため、『すべての人に当てはまることではない』という前提でお話しします。

確かに『猫アレルギー』という言葉が存在する通り、猫のフケや毛に対してアレルギーを持っている人が一定数います。これに該当する人が猫と一緒に生活をすると、その症状が悪化することがあります。また、『猫が子どもを引っかくのでは』と心配する人もいるでしょう。猫が何らかの危険を感じた場合は、防衛反応として手を出してしまうこともあるかもしれません。

猫は小さなヒトでも犬でもなく、『猫』という動物種なので、その特性や習性を理解した上で共存、共生することが重要です」

Q.一方で「赤ちゃんの頃から、犬や猫のような動物と慣れ親しんでいる子はアレルギーに強い」という話を聞きますが、本当なのでしょうか。幼い子どもがいる家で猫を飼うときのアレルギー対策について、教えてください。

増田さん「これについてはいくつかの研究論文が発表されています。これらの文献では『幼児期に家庭で犬や猫を飼っている場合は、アトピー性皮膚炎をはじめとしたアレルギーにかかる確率が低い』といわれています。そのため、こうした研究結果を踏まえると『生まれたときから、犬や猫と暮らしている小さいお子さんにはアレルギーが出にくい』ということになります。

しかし、これもすべての人や家庭に当てはまるものではなく、アレルギーに関する親の体質にも関連してくる部分があるため、例外が存在することを理解しておくことが重要です。また、アレルギーは、その置かれている環境やアレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)に触れる機会、時間の経過などによって変化していきます。

そのため、家族ですでにアレルギーを持っている人がいる場合や、アレルギーが心配な人がいる中で猫の飼育をする場合は、事前に必ず、専門医に相談してください。また、『猫を飼った後に子どもが生まれた』など、すでに自宅に猫がいる場合は、できるだけ、子どもがアレルギーにならないように、掃除や猫に対するシャンプーの実施、空気清浄機の設置などの対策をするのが望ましいでしょう」

Q.SNS上では、赤ちゃんと猫が一緒に寝ている場面や仲良く遊んでいる場面を収めた動画・画像が複数公開されています。幼い子どもと猫は基本的に相性がよいのでしょうか。それとも、猫の種類にもよるのでしょうか。

増田さん「私も人間の赤ちゃんや小さな子どもと猫が仲良く遊んでいる風景や動画を見ると、ほほ笑ましい気分になりますし、癒やされます。そもそも、猫がヒトの赤ちゃんに対して、敵意むき出しになることは少ないと思います。猫自身も、対象となる人が著しく危険な存在でなければ、嫌う必要がないからです。

まれに、とある一瞬の怖い記憶がフラッシュバックして、どうしてもその恐怖心がついてしまうことで、子どもに対して距離を置いてしまうことがあるかもしれません。しかし、互いが愛情をもって接していくうちに距離感がより近づくことはあると感じます。猫の品種や年齢、発情期であるかなどによっていくらかの差はありますが、猫が小さな子どもと全く相いれないということを耳にする機会はほとんどないというのが、個人的な印象です」

Q.子どもがどのような行動を取ると、猫は驚いたり、警戒したりするのでしょうか。子どもが猫と触れ合うときの注意点や対処法も踏まえて、教えてください。

増田さん「猫が驚いたり、危機感を持ったりするのは『急に大きな音がした』『何かがいきなり動いた』などに起因します。これらは、小さい子どもが日頃やりがちな行動の一つかと思いますが、子どもが成長していく上で避けて通れないものなので、完全に除外することは難しいものです。

ただし、先述のように、猫自身も子どもを全く受け入れないということはありません。猫にとって危険でない相手と分かれば、意味もなく攻撃していることは、ほとんどないでしょう。発情期になると、猫も気が立っていることがあるため、普段と異なる行動をすることがあり、時にはやや攻撃的になることもあります。解決手段の一つに避妊手術や去勢手術があります」

引っかかれたときの注意点は?

Q.もし、子どもが猫に引っかかれたり、かまれたりした場合、どのようなことに気を付けるべきなのでしょうか。

増田さん「猫に引っかかれたり、かまれたりして、痛みや出血を引き起こした場合、傷の見た目をチェックしたり、手当てをしたりすることはもちろん重要ですが、その他にも気を付けるべきことがあります。それは『人畜共通感染症』という、ヒト以外の動物からヒトに感染する疾患が存在する点です。

例えば、『猫ひっかき病』『カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症』『パスツレラ症』『重症熱性血小板減少症候群(SFTS)』などが該当します。これらはヒトにも感染し、発症します。猫に引っかかれたり、かまれたりした後、発熱や倦怠(けんたい)感など体調に異変があったときは、すぐ病院に行って、猫に引っかかれたことなどを医師に伝え、診察を受けましょう。

予防策として、猫ひっかき病やSFTSなどは感染経路として、ノミやマダニの猫への寄生が関与していることから、定期的な駆除を行うことで、これらの感染症のリスクを低減することができます。猫の適正飼育を行うことが、子どもを含む、家族の健康と安全に大きく寄与するということを認識しましょう」