新型コロナウイルスワクチンを接種した人が増えてくるにつれ、「副反応」が話題になることも増えました。一般的には、接種部位の痛みや頭痛、発熱などが副反応として多くみられるようですが、中には「何も副反応がない」という人もいて、「副反応がないということは、ワクチンが効いていないのでは?」と不安になるケースもあるようです。副反応の有無はワクチンの効果と関係があるのでしょうか。医療ジャーナリストの森まどかさんに聞きました。

副反応の強さと中和抗体量、相関なし

Q.新型コロナウイルスのワクチンを打った際、一般的によく出るとされる副反応と割合を教えてください。

森さん「経験する人が多い代表的な副反応には、発熱(37.5度以上)▽接種部位の反応として、赤くなる/腫れる/しこりのようになる/痛み/熱を持つ/かゆみ▽頭痛▽倦怠(けんたい)感▽鼻水――などがあります。ワクチン接種を受けた人を対象に、最終接種から4週後までに起こった症状などを調査する観察研究(順天堂大学の伊藤澄信教授チームによる研究)が行われて、9月10日に最新の中間報告が厚生労働省より公表されました。

中間報告では、ファイザー製ワクチンを接種した約2万人、モデルナ製を接種した約1万人、アストラゼネカ製の1回目を接種した153人のうち、情報を回収できた31人についての結果がまとめられていて、それぞれの副反応がどのくらいの割合で起きたかが分かります。

1回目接種後の『発熱』はファイザー製で3.3%、モデルナ製は7.2%でしたが、2回目接種後はどちらも発熱の割合が高くなり、ファイザー製は38.1%、モデルナ製は76.7%でした。モデルナ製では59.5%が38度以上の発熱があったと報告され、高い熱を出す人が多い傾向です。アストラゼネカ製の1回目でも3割程度に発熱がみられたことが分かりました。

『接種部位の痛み』は、ファイザー製とアストラゼネカ製では1回目も2回目も9割程度の人が自覚し、アストラゼネカ製では6割弱の人が感じたようです。『倦怠感』はファイザー製で1回目が23.2%、2回目が68.8%、モデルナ製では1回目が26.1%、2回目が81.9%、『頭痛』はファイザー製で1回目が21.4%、2回目が53.1%、モデルナ製で1回目が16.8%、2回目が66.6%でした。いずれも、2回目接種後の方が高い確率で副反応が出ています。

モデルナ製では1回目接種の7日目ごろから、接種した部位に『かゆみを伴う発赤』がみられたことが特徴的といえます。この遅延性皮膚反応は『モデルナアーム』と呼ばれることもあり、頻度が高かった30代以上の女性では10%程度にみられたと報告されています。ファイザー製でも0.23%と頻度が低かったものの報告はありました」

Q.副反応はなぜ出るのでしょうか。

森さん「ワクチンは新型コロナウイルスに対する免疫を得るために接種しますが、体内に“異物”が入ったと認識されて、免疫システムが働き始めると、その反応として、さまざまな症状が現れることがあります。これが副反応です。現在、日本で接種されている新型コロナワクチンは2回接種しますが、2回目の方が強い免疫応答が起こるため、副反応が出る割合が高くなります」

Q.「副反応がないと、ワクチンの効果もないのでは」と不安になる人がいるようです。副反応が全くない場合、効き目はないのでしょうか。

森さん「現時点では、副反応の有無や強さとワクチンの効果は関係ないと考えられています。国立国際医療研究センター研究所の満屋裕明所長は6月に『20歳〜70歳のファイザー製ワクチン接種者の中和抗体量を定期的に調べた研究で、接種後の副反応の強さと中和抗体量に相関関係はなかった』という内容を発表しています。その発表に関する同センターのSNSには『高齢で副反応が少なくても、ワクチン効果が弱いわけではありません』とも記されています。

また、米国内科学会が発行する医学誌『JAMA Internal Medicine』において、『954人を対象に抗体量を測定した研究の結果、免疫抑制剤を使用している1人を除いた953人は副反応の症状に関係なく、全員が抗体を獲得できた』という内容の論文が8月に公表されています。この論文は、ノーベル賞受賞者の山中伸弥氏も自身の新型コロナウイルス情報発信サイトで紹介しています」

Q.副反応が出た場合、どのようにするのが望ましいか、教えてください。

森さん「発熱は接種翌日が多いと報告されています。水分を十分に摂取して、症状がつらければ、解熱鎮痛剤を服用して様子をみるよう、厚生労働省や多くの医師が助言しています。

解熱鎮痛剤は商品によって、含まれる成分が異なりますが、『アセトアミノフェン(商品名ノーシン、セデス、バファリンルナ等)』でも『イブプロフェン(同イブ、リングルアイビー等)』でも『ロキソプロフェン(同ロキソニン等)』でも、どの成分のものを使用してもよいとされています。頭痛の場合も同じ対処法でよいでしょう。

また、接種翌日に発熱等の副反応がある場合は無理をせず、仕事や学校を休むことも検討してください。副反応で活用できる休暇制度を設けている企業や団体もあるようです。副反応とみられる症状は、接種3日後までには消失する人が多いようですが、それ以降も発熱や頭痛が続くようであれば、副反応以外の原因も考えられます。自己判断せず、医療機関などに、まずは電話で相談することをおすすめします。

『モデルナアーム』とも呼ばれる遅延性皮膚反応は1回目接種7日目ごろからみられ、12日目前後に自然に消失することが多いと報告されています。かゆみがある場合について、厚生労働省の『ワクチンQ&A』では『冷やす、あるいは抗ヒスタミン剤やステロイドの外用薬(軟こう等)を塗ると症状が軽くなります。こうした成分は市販の虫刺されの薬などにも含まれています』と示しています。症状がなかなか改善しない場合は、皮膚科を受診してください」

ブレークスルー感染はまれ?

Q.副反応を怖がって、ワクチンを敬遠する人もいるようです。ワクチン2回接種後の感染も報道されています。改めて、ワクチンの意義を教えてください。

森さん「先述した一般的によく出る副反応以外に、まれに起こる副反応として『アナフィラキシー』『急性心筋炎・急性心膜炎』などがあります。なじみのないこれらの反応を『怖い』と感じるのは自然なことです。接種後30分以内に起こるアナフィラキシーについては8月22日時点で、ファイザー製では100万回接種あたり4件、モデルナ製では1.5件と報告されています。また、接種後の急性心筋炎・急性心膜炎はファイザー製で100万回接種あたり0.6件、モデルナ製で1.6件と報告されています。

まれであると同時に、アナフィラキシーは治療法が確立していて、接種会場や医療機関で適切な処置がされていますし、ワクチン接種後の急性心筋炎・急性心膜炎は、ほとんどが軽症で経過すると報告されており、『軽症の心筋炎・心膜炎は治癒する病気であり、通常の循環器の診療体制で対応できる』という見解が示されています。一方、新型コロナウイルスに感染し、発症した場合は重症化や死亡のリスクがあり、若年層は重症化のリスクは低くても、長期にわたる後遺症のリスクがあります。

また、感染が急拡大した場合に十分な医療を受けられない可能性、経済活動や社会生活のさまざまな場面において、行動制限が必要になる可能性などを考えると、ワクチン接種によって重症化する人を減らし、感染拡大を抑制することの意義は高いと考えられます。そうした理由からも、新型コロナウイルスワクチンは予防接種法の『臨時接種の特例』に位置付けられ、接種を受けるよう努めなければならない『努力義務』があるとされています。

2回接種後の感染である『ブレークスルー感染』の報道もありますが、9月9日の『東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議』において、宮坂昌之氏(免疫学の第一人者。大阪大学免疫学フロンティア研究センター招へい教授)は『感染が1回接種で55%減少し、2回接種で93%減少した』という和歌山県のデータを紹介し、『2回接種した35万3430人のうち感染したのは25人(0.007%)、日本ではブレークスルー感染はまれであると考えられる』と話しました。

そうした調査結果からも、ワクチン接種の意義が高いことが分かります」