飲食店では食事をした後の退店時、店員に「ごちそうさま」と感謝の気持ちを伝える客をよく見ます。しかし、コンビニやスーパーのレジで会計を終えた後に「ありがとう」と感謝を口にする人は少ないのではないでしょうか。なぜ、飲食店では「ごちそうさま」と言う人が多く、コンビニやスーパーのレジでは「ありがとう」と言う人が少ないのでしょうか。経営コンサルタントの大庭真一郎さんに聞きました。

「お礼は必要ない」と考える店員も

Q.飲食店やコンビニ、スーパーなど、接客業の店員は客から感謝の言葉が出ると、うれしいと感じたり、やりがいを感じたりすると思います。店員の成長にとって、客からの感謝の言葉というのは影響が大きいのでしょうか。

大庭さん「影響は大きいです。接客業務は『来店客に満足してもらうため、要望に基づき接待する』仕事です。商品購入などの際、客から感謝の言葉をかけられた場合、喜びややりがいを感じるとともに、客を満足させる能力に磨きをかけようとする気持ちが湧き、店員本人の成長へとつながっていくと思います」

Q.飲食店では「ごちそうさま」と感謝を言う客は多いですが、コンビニやスーパーのレジ会計後に「ありがとう」という人は少ないのが現状だと思います。なぜでしょうか。

大庭さん「料理を食べ始めるときに『いただきます』、食べ終えたときに『ごちそうさま』とあいさつする文化は第2次世界大戦前、日本が軍国主義化していく過程のしつけから根付いたものとされ、現在の日本でも定着しています。つまり、人と会ったときに『こんにちは』とあいさつをするのと同じようなことです。よって、飲食店で対価を支払った上で食事をする場合であっても、『いただきます』と『ごちそうさま』のあいさつを自然と口にする人が多いのが現状です。

一方、対価を支払った後、商品を受け取るときに『ありがとう』とあいさつをする文化は日本に根付いていないため、このことが、コンビニやスーパーのレジ会計後に『ありがとう』と言う人が少ない理由ではないでしょうか」

Q.「対価を支払っているのだから、感謝の言葉まではいらないのでは?」という声もあります。少し冷たい対応のように思えますが、どのように考えられますか。

大庭さん「対価を支払って、目的の商品を得ること以上の満足を客が得られた場合、期待値とのギャップから、感謝の言葉を口にすることはあると思います。例えば、店員の丁寧な説明によって、よりよい商品を手にすることができた場合や、店員の心のこもった接客によって、気持ちよく買い物ができたと感じた場合などです。しかし、単に対価の支払いと商品の受け取りを行う場面では、店員も客も事務的に接するため、感謝の言葉を口にすることが少ないのは当然のことではないかと思います」

Q.コンビニやスーパーの店員の中には、レジで会計をした後、「わざわざ、お礼を言われなくてもいい」と思っている人もいるようです。多くの客の会計業務を行わなければいけないので、こうした考えになることもあるのでしょうか。

大庭さん「レジ業務の担当者は、会計を済ませるためにレジの列に並んでいる客の会計を正確、迅速に行う責務を担っています。会計の誤りや時間がかかることは客の不満足に直結することだからです。さらに、釣り銭ミスが生じた場合、営業時間終了後の確認作業が大変です。このことにより、レジ業務の担当者にとっては、集中して会計ができる環境が望ましいのです。

そのような中、レジを終えた客からお礼の言葉をかけられた場合、お礼への対応を行わなければならず、それにより、レジ業務の流れが途切れ、ミスや次の客を待たせることにつながります。そのため、コンビニやスーパーの店員の中には、レジで会計をした後に声を掛けられたくないと思っている人が多いのではないでしょうか」

Q.特に欧米では、レジで会計をした後、「ありがとう」と店員に言うのが当たり前だそうです。文化の違いもあると思いますが、日本人もスーパーやコンビニのレジで会計後、感謝の気持ちを言いたければ、口に出して言った方がよいのでしょうか。

大庭さん「レジで自分の後に会計を待っている人がいない場合は、一言、感謝の言葉を口にするのは問題ないと思います。そうすることで、店員との間でコミュニケーションが図れ、客にとっても今後買い物をすることが楽しくなる雰囲気が生まれてくると思うからです。しかし、レジが混んでいるときは遠慮をした方がよいでしょう。店員側も『ありがとう』という言葉が返ってくることを通常は想定していないので、先述したようにレジ業務の流れを止めてしまい、その結果、他の客や店員に迷惑をかけることも起こり得るからです」