東京・池袋で2019年4月、暴走した車に母子がはねられて死亡した事故を巡り、自動車運転処罰法違反(過失運転致死傷)の罪で東京地裁から禁錮5年の実刑判決を受けた飯塚幸三被告(90)=旧通産省工業技術院元院長=の控訴期限が9月16日に迫っています。実刑判決が確定した場合、飯塚被告は高齢ですがどのように収監されるのでしょうか。また、禁錮生活に耐えられないとなった場合、どうなるのでしょうか。佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。

検察から呼び出し状

Q.禁錮や懲役の実刑判決が確定した被告(受刑者)が在宅で裁判を続けていた場合、収監(刑事施設への収容)はいつ、どのように行われるのでしょうか。

佐藤さん「裁判が確定した時点で勾留(身柄が拘束)されていない場合、禁錮や懲役の実刑判決が確定すると検察庁から呼び出し状が届きます。その呼び出しの指示に従い、自ら検察庁に出頭することになります。検察庁から呼び出しがあるのは、判決が確定した後、1週間以上たってからになるケースが多いようです。もし、呼び出しに応じず、出頭する意思がないことが明らかな場合、検察官は収容状を発して(刑事訴訟法484条)、場合によっては警察官同行のもと、強制的に身柄を拘束しに行きます。

なお、いったん勾留された後、裁判所に保釈を認められて、保釈保証金を納めて保釈中の場合、一審の裁判で実刑判決が宣告されると法廷で身柄が拘束されます。法律上、実刑判決の宣告により、保釈の効力が失われるからです(同343条)。控訴・上告する場合には、改めて保釈の申請をすることが可能です」

Q.受刑者が高齢の場合、一般的なケースと違う手続きがあるのでしょうか。

佐藤さん「高齢の場合も、収容にあたって特に特別な手続きはありません。飯塚被告の場合も、裁判には車いすで出廷していたと報じられており、実刑が確定すれば、一般的なケースと同様、自ら検察庁に出頭することになるでしょう。

なお、刑事訴訟法482条は『70歳以上であるとき』など一定の場合に、検察官の判断で刑の執行を停止することができると定めていますが、刑の執行停止はよほど重大な事由がある場合に限られており、年齢だけでなく、健康状態、犯罪の重大性、社会的影響、被害者の処罰感情なども考慮される可能性が高いです。従って、車を運転することができていた飯塚被告の刑の執行が停止される可能性は低いでしょう」

Q.受刑者が刑務所で要介護の状態になった場合、どうなるのでしょうか。

佐藤さん「受刑者が刑務所で要介護の状態になった場合も、刑事収容施設での生活を継続する運用がなされています。具体的にどうするかというと、若い受刑者の刑務作業として、着替えやおむつ交換の介助をさせたり、ペースト状の食事を用意したりして対応するのです」

Q.医療処置が必要となった場合、医療刑務所に入る場合もあるのでしょうか。

佐藤さん「刑事施設においては受刑者の心身の状況を把握することに努め、健康保持のため、社会一般の水準の医療を受けられることになっています(刑事収容施設法56条)。病気の疑いがあったり、飲食物を摂取できず、生命に危険が及んだりする場合は、速やかに刑事施設の職員である医師による診療を行い、医療上の措置をとり、例外的に、刑事施設外の病院に入院させることもあります(同62条)。

服役中に医療処置が必要となった場合、医療刑務所に入るケースもあります。医療刑務所は主に精神疾患のある受刑者を対象にする施設ですが、その他、身体の病気や重い障害で通常の刑務所での服役ができない受刑者を収容しており、施設によって一定の手術も可能です」

Q.医療刑務所は通常の病院のようなケアが受けられるのでしょうか。もし、通常の病院と同じであれば、刑務所よりはずっといい生活のように思えるのですが、実際はどのような生活なのでしょうか。

佐藤さん「医療刑務所にいる間は一般的な刑務作業ではなく、治療に役立つ軽作業を実施したり、治療やリハビリに取り組んだりすることになります。先述したように、治療の水準などは通常の病院と同等になりますが、刑務所なので、当然、介助の内容や日常生活に制約はあります。

例えば、病室には外側から鍵が掛けられ、医師や看護師も自由に出入りできず、刑務官に鍵を開けてもらう必要がありますし、受刑者には、刑務所の規律を守ることが求められます。看護師による介助においても、私語を慎む運用がなされていることが多いようです。また、医療刑務所で症状が改善すれば、元の刑務所に戻されることになります」

刑務所で一生終える場合も?

Q.一部の医療刑務所では、終末期ケアも行っているとの情報があります。医療刑務所で一生を終える受刑者もいるのでしょうか。また、一般の刑務所で偶発的な事故や突然死でなく、一生を終える受刑者もいるのでしょうか。

佐藤さん「医療刑務所では、高齢で重篤な患者を受け入れることも少なくないため、ここで一生を終える受刑者もいます。医療刑務所も原則、通常の刑務所と同様、家族などとの面会について、回数や時間の制限があります。看護師との私語も制約され、家族などとの面会も制約される中、終末期の受刑者は1人、死の恐怖や不安と戦わなければならなくなるそうです。一般の刑務所にも高齢受刑者は増えており、刑務所で亡くなる人もいます」

Q.医療刑務所や刑務所で一生を終える場合、親族が最期をみとることは可能なのでしょうか。また、遺体はどのようになり、葬儀等は行われるのでしょうか。

佐藤さん「親族が最期をみとることは難しいです。先述したように、家族などとの面会には回数や時間の制限があるからです。刑務所内では、他の受刑者との関係があるので、危篤になったからといって、家族を待機させたり、最期の時まで長時間、面会を許したりすることが困難です。たまたま面会中に亡くなった場合は、みとることが可能ですが、その可能性は高くないでしょう。

みとりを希望する場合は刑の執行停止を申し出て、検察官に審査してもらう方法が考えられます(刑事訴訟法482条)。検察官は法定された執行停止の事由があり、かつ、刑の執行停止が相当であると認めれば、刑の執行を停止します。遺体を引き取る人がいない場合、刑務所が手配した火葬場で火葬され、可能であれば、遺骨を遺族に引き取ってもらいます。引き取り手のない遺骨は刑務所で一定期間保管後、公営墓地に合葬されることになります」