10月1日のたばこ税増税に伴い、各種、たばこが値上がりしました。これを機に禁煙するという人のほか、妻の妊娠や出産を機にたばこをやめるという人も多いようです。妊娠中の喫煙は胎児に悪影響を及ぼし、先天異常の原因となることが知られていますが、受動喫煙による影響については喫煙者・妊婦ともに正しく理解していない人も少なくないとみられます。

 SNS上では「妊娠中に会社の飲み会に顔を出したとき、上司が無断でたばこを吸い始めて驚いた」「妊娠中、お酒は飲まないけど、全面喫煙可の居酒屋によく行っていた」といった体験談に対し、「妊婦の目の前でたばこを吸うなんて信じられない」「妊婦は喫煙できる店に行っちゃダメ」など、さまざまな声が上がっています。

 受動喫煙は妊婦と胎児に、どのような影響を及ぼしうるのでしょうか。医師の尾西芳子さんに聞きました。

低体重出生のリスクも

Q.まず、妊婦自身が喫煙した場合、母体・胎児にはどのような影響があるのでしょうか。

尾西さん「妊娠中にたばこを吸うとニコチンの作用で血管が収縮し、子宮や胎盤の血流が減ったり、一酸化炭素によって胎児が低酸素状態となることで、流産や早産、死産のリスクが高まったりします。さらに妊娠高血圧症や前置胎盤、胎盤早期剥離といった妊娠合併症のリスクや、生まれてくる赤ちゃんが小さい低体重出生児や、産後の乳幼児突然死症候群のリスクも増加します」

Q.妊婦が受動喫煙した場合の影響についてはどうでしょうか。

尾西さん「主流煙(喫煙者本人が吸う煙)よりも副流煙(受動喫煙者が吸い込む煙)の方が有害物質の量は多いですが、周りの空気で薄まるため、喫煙者本人ほどの害ではありません。ただし、受動喫煙の場合も喫煙しているのと同様に胎児への悪影響があります」

Q.近年は加熱式たばこも普及していますが、妊婦・胎児への影響はどのようなものでしょうか。

尾西さん「加熱式たばこは、たばこの葉を使用して、燃焼させず、加熱により発生した蒸気を吸引するたばこです。ニコチンはしっかり含まれているため、胎児へのリスクはあります。妊婦さん自身の喫煙だけでなく、受動喫煙も同様ですので、臭いがないことにだまされないようにしてください」

Q.妊娠中、たばことの関わり方で気を付けるべきことはありますか。

尾西さん「お母さんが妊娠初期に喫煙していると、子どもの学童期の肥満やADHD、成人してからの生活習慣病のリスクが増加すると報告されています。つまり、妊娠中だけでなく、子どもの未来に関わってくる問題です。また、出産後に赤ちゃんがたばこにさらされると乳幼児突然死症候群、ぜんそく、中耳炎、知能指数(IQ)低下などの悪影響があるため、子どもの将来を見越して、たばことの関わり方を考えましょう。

換気扇の下や室外ならば、たばこを吸ってもいいという人もいるかもしれませんが、煙の害を完全には取り除けない上、吸った後30分〜45分程度は、吐く息の中にたばこの成分が残っているとされます。妊婦さん本人だけでなく、周囲の人の配慮も必要です」