「毎食後、時間をかけてしっかり歯磨きをしているのに、すぐに歯石ができてしまう」という人がいます。こうした「歯石ができやすい人」は、磨き残しがないようにチェックしたり、歯間ブラシを使ったりしていても、どうしても歯石ができるようです。一方で、歯磨きの回数や時間が少ないにもかかわらず、ほとんど歯石ができない人もいるようで、ネット上では「小まめに磨いているのに歯石ができるとショック」「歯石ができやすい理由が知りたい」「歯石ができにくい人になれる?」など、さまざまな声が上がっています。

 歯石ができやすい人と、ほとんどできない人とでは何が違うのでしょうか。五反田駅前歯医者(東京都品川区)院長で歯科医師の大木烈さんに聞きました。

唾液の量が多いほど歯石ができやすい

Q.そもそも「歯石」とは何でしょうか。

大木さん「歯石とは、『プラーク』とも呼ばれる歯垢(しこう)が、唾液中のカルシウムやリンと結合して固まったものです。歯石は突然できるわけではなく、歯磨きができていない部分の歯垢に、唾液中のカルシウムやリンが沈着して硬くなり、地層のように積み重なっていくことでできます。

歯石ができやすいのは、歯と歯の間や、歯と歯茎の境目です。特に、下の前歯の裏と、上の奥歯の頬側です。これはいずれも唾液腺の出口にあたるためです。

歯石を放置すると歯周病が進行し、歯を支える顎の骨が溶けていきます。一度溶けた顎の骨を元に戻すことは不可能です。歯周病の多くは無症状で進行し、徐々に歯と歯の隙間が広がって歯がぐらつくようになる他、歯茎が腫れ、出血するようになります。口臭もひどくなるため、日常生活上でもデメリットしかありません」

Q.歯石ができやすい人とそうでない人がいるのは事実でしょうか。

大木さん「事実です。歯石は年齢や性別に関係なく、誰にでもできるものですが、唾液の量や質によって、できやすさに個人差があるためです。

唾液の量が多いほど、歯垢に沈着するカルシウムやリンが多くなり、歯石ができやすくなります。唾液の質がアルカリ性に近いほど、唾液中に含まれるミネラル成分が多く、沈着しやすくなります。また、歯並びが悪い人も歯石ができやすいです。

そもそも歯を磨かない、もしくはしっかりと磨けていない人は、当然ながら歯石ができやすいです。毎日の歯磨きについては、研磨剤が多く含まれている歯磨き粉を使用するほど、歯石がつきやすいとされていますが、単純にきれいに磨けていないケースもあります。遺伝的要因は、歯周炎に関しては関与する場合がありますが、歯石の場合はほとんどありません」

Q.歯石ができやすいかどうかをチェックする方法はありますか。

大木さん「セルフチェックとしてはまず、鏡で自分の歯並びを見てみることです。いわゆる“理想の歯並び”と少しでも違っていれば、確実に歯石はつきやすいでしょう。歯と歯の間や、歯と歯茎との境目が空いていて、黒い三角の隙間(ブラックトライアングル)ができている人は要注意です。

歯科医院では、歯並びを含めて歯茎の状態などをチェックします。顕微鏡で細菌を調べたり、唾液検査をしたりすることもあります」

Q.歯石ができやすい人が、何らかの方法で歯石ができにくくすることは可能でしょうか。

大木さん「多くの場合、ブラッシングの徹底や、矯正治療などによる歯並びの改善、食生活の改善で、歯石はできにくくなります。これとは逆のことをすれば、自然と歯石ができやすいタイプになります。よくあるのが、抜歯をしてからそのまま放置し、歯並びが悪くなるケースです。食生活については、アルカリ性と酸性の食品をバランスよく取り、糖分の多い食事や飲み物(スポーツ飲料など)を避けましょう」

Q.歯科医院では、歯石をどのように除去するのですか。また、どのくらいの頻度で除去しに行くのがよいのでしょうか。

大木さん「超音波振動で歯石を砕く『超音波スケーラー』や、細いやすりのような道具で歯石をかき出す『手用スケーラー』を使って除去します。歯石除去の頻度は3〜4カ月に1度とよくいわれますが、患者さん本人の状態によって千差万別です。クリニックで最適な間隔を決めてもらうとよいでしょう。

自分自身での歯石除去は、厳密には不可能です。また、歯石が部分的に勝手に欠けることはありますが、自然に取れることは100パーセントありません」

Q.歯石ができやすい人が、日頃の口腔(こうくう)ケアで特に注意すべきことはありますか。

大木さん「歯科医院に通い、歯科医師や歯科衛生士の指導をしっかり受けて、それを実践することです。食後は歯を磨き、フロスや歯間ブラシなどの補助器具も併用しましょう。また、歯磨きには徹底的に時間をかけてください。まともにしっかり磨くと20分以上はかかるものですが、多くの人が、磨く時間が圧倒的に短いです。特に夕食後、就寝前に歯を磨いた後は『食べない、水以外は飲まない』を徹底しましょう」