スーパーやコンビニで商品を購入したとき、新札で「お釣り」をもらうことがあります。新札は札(さつ)同士がくっつきやすく、店員が1枚の1000円札を客にお釣りとして渡したら、結果的に2枚渡していたというケースも可能性としては考えられます。このように、お釣りが多いことを客が気付いたとき、「ラッキー!」と思い黙っていた場合、法的責任はあるのでしょうか。弁護士の藤原家康さんに聞きました。

「欺罔行為」とは何か

Q.レジでお釣りを渡されたとき、金額が多いと気付いても黙っていた場合、客に法的責任はありますか。

藤原さん「客に法的責任はあります。金額が多いと気付いても黙っていた場合、刑事では詐欺罪(刑法246条1項)となると考えられます。この罪の法定刑は10年以下の懲役です。客には、お釣りが多いときはそのことを店に伝える義務があり、その義務に違反して、黙ってお金を受け取ることは、相手を欺いて錯誤に至らせる行為で、詐欺罪の要件である『欺罔(ぎもう)行為』(人を欺く行為)となります。

一方、民事では(1)不法行為に基づく損害賠償責任(民法709条)(2)不当利得に基づく返還義務(民法703条、704条)――を負うと考えられます。これらにより、客は余分に受け取ったお釣りに相当する金額を支払わなければなりません。また、(1)により、さらに高額の支払いをしなければならないこともあり得ます。例えば、店側が、余分にお釣りを受け取った人を探すためにかかった費用を賠償しなければならないこともあり得ます」

Q.客が店を退店して、帰り道や家に到着してから、お釣りが多いことに気付いた場合、店に余分のお釣りを返さないと法的責任が問われますか。

藤原さん「こちらも法的責任が問われます。刑事では遺失物等横領罪(刑法254条)となると考えられます。この罪の法定刑は1年以下の懲役、または10万円以下の罰金、もしくは科料です。客が退店後、お釣りが多いことに気付いた場合、余分のお釣りは刑法254条が定める『占有を離れた他人の物』となり、これを返さないと遺失物等横領罪に当たることになります。

民事は(1)不法行為に基づく損害賠償責任(民法709条)(2)不当利得に基づく返還義務(民法703条、704条)――を負うと考えられます。(1)については、お釣りが多いことに気付かなかったことに過失があるか、あるとして、どこまでの過失か(客の過失と店側の過失との割合がどうなるか)により、損害賠償の額が異なります。また、レジでお釣りが多いことに気付いた場合と同様、余分に受け取ったお釣りの額より高額の支払いをしなければならないこともあり得ます。

(2)については客がお釣りが多いことに気付いた時点で、残っている『現存利益』を返すことになります。この『現存利益』は客がお釣りが多いことに気付くまでに、浪費で使用した分は返さなくてよく、日常生活費として使用した分は返さなければならないと一般的な法解釈では考えられますが、ケースによって異なる場合もあります。

なお、浪費した分を返さずに済んで、生活費として使った分を返す必要があるというのは釈然としないかもしれませんが、法解釈上はそのようになります」

Q.後日、余分のお釣りをもらっていたのに黙っていたことが明らかになった場合、最悪、逮捕されることもあるのでしょうか。

藤原さん「逮捕される可能性はあります。先述したように詐欺罪や遺失物等横領罪といった罪になることが考えられ、『罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由』があれば、通常の逮捕ができます(刑事訴訟法199条1項)」

Q.やはり、客はお釣りの金額が正しいか、その場で必ず確認し、余分のお釣りがあれば、金額の多い少ないにかかわらず、素直に店側に申し出た方がよいのでしょうか。

藤原さん「頻繁にあるわけではありませんが、思いがけず、お釣りを多くもらうケースを今までに経験した人は一定数いると思います。しかし、先述したように懲役刑になったり、逮捕されたりする可能性もあります。多くもらったときは、その場では得した気分になるかもしれませんが、素直に店側へ申し出るべきです」