岸田文雄首相が自民党総裁選で勝利した9月29日、ツイッターに投稿した、岸田家の「お好み焼き」の画像がネット上で話題となりました。手作りした妻の裕子さんに「いつも最高に美味(おい)しいけど、今日は一生忘れられない美味しさでした。ありがとう」と贈った言葉もですが、その画像に写っていたソースが、お好み焼きソースで最大手のメーカーのものではなく、「ミツワお好みソース」だったからです。

 SNS上では「渋いチョイス」「岸田新総裁はミツワソースですか」といった声が上がっています。岸田首相は衆院広島1区(広島市南区など)の選出ですが、ミツワソースは、地元広島では有名なソースなのでしょうか。製造元のサンフーズ(同区)の担当者に聞きました。

「お好み村」全店が使用

Q.ミツワソースの歴史を教えてください。

担当者「ともに広島で創業した、1916(大正5)年創業の食酢製造販売の中東商店(1920年にヒガシマルソースを発売)と1924(大正13)年創業のソース製造販売のミツワソース商会が1973(昭和48)年に合併して、現在の『サンフーズ』となりました。

現在では、広島の食の観光スポット『お好み村』全店でお好み焼きソースを使用していただいているのをはじめ、広島のお好み焼き用『ミツワお好みソース』をメインに、焼きそばソースなどのミツワブランドと、ヒガシマルブランド、そして、冷凍冷蔵お好み焼き『お好み村』シリーズ、焼き肉のたれといった製品を製造販売しています」

Q.「お好み村」といえば、ビルの中にたくさんのお好み焼き店が並んでいる観光スポットですが、どのような経緯で、お好み村が誕生し、その全店にミツワソースが導入されるようになったのでしょうか。

担当者「広島のお好み焼きのルーツは、第2次世界大戦後の1947(昭和22)年ごろに登場した、小麦粉を水で溶いて薄く焼き、ネギなどの具を入れて焼き、ソースを塗ったものといわれています。初期のお好み焼きは、そばも入っておらず、キャベツとネギに肉片が入った薄っぺらなもので、使われていたのはウスターソースで、味も単純なものだったようです。

そんな、食料などの物資が不足する時代、キャベツやモヤシがたっぷりのった、ボリュームのあるお好み焼きを出す屋台が登場し、流行しました。その後、広島市中心部の『新天地』に50軒ほどの屋台が集結し、広島へ取材に来られた作家のきだみのるさんが『お好み村』と命名されたそうです。

お好み村の発足当初は、それぞれの店舗が各メーカーのソースを使用していたようですが、ウスターソースがお好み焼きに染み込み、鉄板に流れ落ちていました。味もぴりっと辛く、酸味が強かったため、まろやかで甘くとろみもあり、お好み焼きになじんで、食べ終わるまで飽きのこないソースを目指し、お好み村と当社が共同で改良を重ね、1957年ごろに当社のお好みソースの原型が完成しました。

その後も、お好み焼き専門店の厳しい意見やアドバイスを頂きながら、さらなる改良を続け、多くの店から支持されて、1973年ごろには、お好み村全店舗で当社のお好みソースが使用されるようになりました」

Q.ミツワのソースの特徴は。

担当者「ミツワのお好みソースはトマトやリンゴなどの野菜、果物に砂糖類、食酢、食塩、および十数種類の香辛料を加えて、手作りで製造しています。お好み焼きやその他の料理素材を引き立てる味作りにこだわり、コクのある甘さの中にも、癖のないすっきりとした味わいが特徴です。

お好み焼きだけでなく、焼きそば、たこ焼き、目玉焼き、ポテトサラダ、春巻き、シューマイ、天ぷら、唐揚げ、野菜炒め、とんかつ、ハンバーグ、オムレツ、カレー、サラダなど、さまざまな料理にご利用いただけます」

Q.お好み焼きソースといえば、オタフクソースが最大手だと思うのですが、失礼ながら、広島ではオタフクさんと同じくらいの知名度があるのでしょうか。

担当者「広島で主にお好み焼きに使われるソースは4ブランド(オタフク、ミツワ、カープ、センナリ)ありますが、一般消費者の皆さまには、オタフクソースさんほどの知名度はありません。しかしながら、お好み焼きの著名店ではミツワソースが愛用されており、お好み焼き好きの皆さまには、知名度のあるブランドです」

Q.広島県以外では、どのような地域、場所で買えますか。

担当者「2019年にブルドックソースの傘下に入ったこともあり、グループ会社の販売網を使って、北海道から九州の主要なスーパーマーケットの一部店舗で取り扱っていただいています。また、東京・銀座にある広島県のアンテナショップ『TAU(たう)』」や、Amazon、楽天市場などの通販サイト、当社のオンラインショップでも購入できます」

Q. 岸田文雄首相のツイッターから、ミツワソースが話題になっていることはご存じでしたか。

担当者「はい。『一生忘れられない美味しさ』を演出できて光栄です。やはり、広島のお好み焼きには、ミツワお好みソースが一番おいしいと思います」

Q.ツイッター投稿後の反応は。「渋いチョイス」という声もありました。

担当者「『どこで販売していますか』というお問い合わせを頂いたり、当社のオンラインショップで、ミツワお好みソースをご注文いただいたりといった反響がありました。『渋いチョイス』とおっしゃられた人はきっと、ミツワソースの味をご存じなのだと思います。今後も一人でも多くの皆さまにミツワソースのおいしさを知っていただけるよう、努力してまいります」

Q.岸田首相に期待することがあれば、お聞かせください。

担当者「新型コロナウイルス感染症が一刻も早く終息するよう尽力していただき、修学旅行生など、たくさんの観光客が広島にやって来て、広島のお好み焼きの味を堪能してもらえる世の中になればと思います。当社はこれからも、お好み焼き店さんと共に成長し、一般消費者の皆さまにも、おいしいソースをお届けしてまいります」