主治医とは別の医師の診察を受ける「セカンドオピニオン」は、主治医の診察に不安を覚えたことをきっかけに利用するケースが多いようです。複数の医師の診察を受けることで、患者が納得のいく治療法を見つけることができるといった利点もありますが、主治医との関係悪化を懸念する声もあります。また、コロナ禍で「受診控え」の動きもある中、セカンドオピニオンを得たい場合、どのような点に注意すればよいのでしょうか。医療ジャーナリストの森まどかさんに聞きました。

多くはがん治療の選択の場で

Q.セカンドオピニオンの認知度や需要は高まっているのでしょうか。

森さん「セカンドオピニオンが求められるのは、がん治療の選択の場が多いですが、心臓の手術、未破裂の脳動脈瘤(りゅう)の手術などでもあると思います。また、加齢に伴う機能の低下を改善するための歯科治療や眼科手術、整形外科手術などにおいても、将来の生活の質を左右することがあるため、セカンドオピニオンを希望する人が増えてきました。症例数が少ない、『希少疾患』といわれる病気では、高度専門医療に取り組む医療機関に意見を求めたいという声もあります。

一般的にセカンドオピニオンのニーズが高いがんについては、がん患者が増えたことや、治療技術の進歩によって選択肢が増えたこと、民間の保険会社が『がん保険』の契約者へのサービスとしてセカンドオピニオンを実施していることなどから、認知度、需要が上がっているといえます」

Q.セカンドオピニオンの利点は。

森さん「どんな病気にも『標準的な治療』というものがあり、医師はそれにのっとって、患者さんを治療します。しかし、治療する医師にも得意不得意があり、病院の環境によってできる治療、できない治療があるのも実情です。セカンドオピニオンでは、そうした事情に左右されることなく、患者さん本人が選び得る治療法それぞれのメリット、デメリットを明確に知り、納得した上で治療の選択をすることができます。

これは病気と向き合う上でとても大切なことです。受け身ではなく、自ら治療方針の決定に参加することで、今後の治療に前向きに取り組めます。特に、がんのように治療後の人生そのものを左右するかもしれない大きな決断となる場合などに、主治医から提案された治療以外に選択肢がないかどうかを探る目的でセカンドオピニオンを受けるケースが多いです。最も大切なのは、患者さん本人が納得して治療を受けることなので活用するのは問題ありません」

Q.現場の医師はセカンドオピニオンについて、どう思っているのでしょうか。

森さん「都市部の病院を中心にセカンドオピニオンが一般的となり、多くの医師は患者の当然の権利だと思っています。しかし、すべての病院で快く対応してもらえるわけではないのも事実です」

Q.セカンドオピニオンの課題は。

森さん「公的保険(健康保険)の対象外のため、全額自費診療となり、医療機関によって費用が異なります。医療機関によっては、1回の相談で数万円かかる所もあります。また、どのような医師にセカンドオピニオンを求めればよいかという情報が少ないのも課題です。間違ったものも含め、病気や治療に関する情報があふれているので、患者さんの思い込みで治療に不満を持つケースもあるようです。

特定の情報だけをうのみにせず、さまざまな情報を客観的に判断する、いわば、『聞く耳』を持つことがベストな治療を選択する上で大切です」

Q.セカンドオピニオンの医師の選び方は。

森さん「いくつか治療法があるならば、専門の異なる医師に見解を求めることで、選べる治療のメリット、デメリットがより明確に分かるでしょう。例えば、がんの場合、放射線治療医や病理診断医の意見を聞いてもよいでしょう。また、『この治療で大丈夫』という確信を得たいのであれば、同じ専門でも別の医療機関の医師に意見を求めるのもよいと思います。

しかし、自分の思い描いた通りの答えを求めて、セカンドオピニオン、サードオピニオンと重ねてしまい、逆に自分に最も適した治療を見つけられなくなってしまうケースもあります。まずは『第一選択』として提案された治療について理解することを大切にした上で、別の角度からの意見を聞く場がセカンドオピニオンであるということを知ってほしいです」

Q.患者は不安な気持ちが強く、客観的に判断できないのではないでしょうか。

森さん「病気と診断されたら不安になるのは当然の反応です。しかし、一度落ち着き、現在の主治医に対しての不安は治療への不安なのか、主治医の人柄への不安なのか、病気への漠然とした不安なのか、まずは『何が不安なのか』を整理してみましょう。

例えば、主治医の説明に疑問を感じた場合、どこが疑問かを具体的に箇条書きにして持参し、再度質問してみる、主治医に直接聞きにくければ、看護師にメモを手渡してもよいと思います。その質問に対する説明でも治療に不安を覚えた場合は、セカンドオピニオンを検討するとよいでしょう」

Q.もし、「大したことはない」と診断した主治医と「症状が深刻」と診断した医師がいた場合、どちらの意見を信じればよいでしょうか。

森さん「これは難しい問題ですが、『深刻』だと診断した医師には、検査結果などそれなりの診断の根拠があるはずです。どのような治療になるのか、治療しなかった場合はどのようなリスクが考えられるかなどをしっかり説明してもらい、納得できる内容であれば、その医師の治療に進みましょう。

その場合、並行して、もう一方の医師を受診すると治療方針がブレるので、治療を決めた方の医師に任せましょう。主治医にその旨を伝える際は、患者さんの当然の権利なので、人間関係の気まずさを気にする必要はありませんが、医療は人と人との信頼関係で成り立っていることも確かです。感情的にならず、コソコソせず、自分の希望をしっかり伝えてください」

Q.コロナ禍で「受診控え」が増えているようです。その中でセカンドオピニオンを得たい場合、どのような点に注意すればよいでしょうか。

森さん「新型コロナウイルスの感染が拡大している時期は医療機関側が提供する医療を縮小することもあり、セカンドオピニオン外来が休止になったり、人数が制限され家族が同席できなくなったりすることがあります。一方、コロナ禍での『オンライン診療』の拡大によって、遠隔でのセカンドオピニオンが可能になった医療機関も多くあります。地域を問わず、希望する医師に見解を求められるのは、オンライン診療のメリットとも言えるでしょう。

現在は全国的に感染が落ち着いていますが、感染状況によって、セカンドオピニオンを受ける環境が変わる可能性があることを知っておきましょう。コロナ禍であっても、治療後の自分の人生を考える上で、納得して治療を受けることは何より大切です。客観的な意見を求めたい場合や別の治療の可能性を検討したい場合などは、さまざまな方法を模索しながらでも、セカンドオピニオンを受けることをおすすめします」