コロナ禍で大人も子どももストレスを感じる機会が増えていますが、そんな中、母親が子どもを叱り、父親が何もせずに成り行きを見守る状態の家庭で「何もしてくれない」「なんで、私だけが子どもを叱らないといけないの?」と不満を覚える女性も増えているようです。

 母親が子どもを叱るとき、父親はどのような対応を取る必要があるのでしょうか。子育て心理アドバイザーの雨宮奈月さんに聞きました。

「両親とも同じ意見」と明らかに

Q.そもそも、子どもが悪いことをしたとき、両親で叱った方がよいのでしょうか。それとも、いずれか一方が叱れば十分なのでしょうか。

雨宮さん「一般的に『両親そろって叱ってしまうと、子どもの逃げ場がなくなるからいけない』などと言われますが、叱る側が孤立するのもよくありません。『おうちで決めたルールがある』という理由があって叱っているので、両親とも同じ意見だという姿勢は示してほしいと思います。

例えば、おもちゃの出しっ放しはダメで、片付けないといけないというのが両親の総意であり、『今、片付けなさいと叱っている人は代表者として話しているだけ』ということを子どもに伝える必要があります。母親が叱っている場合、父親は必要以上の口出しや上乗せをせず、『お父さんもお母さんと同じ考えだ』と一言添えるだけで、お母さんの言葉の重みが変わります」

Q.母親が子どもを叱っているとき、父親はどのように対応すればよいのでしょうか。また、父親が叱っているときの母親の対応は。

雨宮さん「父親が目撃した場面が全てではない場合が多いです。これまでに何度も繰り返し注意している、何度も声を掛けているなどのプロセスがあって、叱っていることがあります。その因果関係を把握できていないときは、叱っている母親をフォローしてあげてください。『その程度でそんなに言わなくてもいいじゃないか』など思うことがあれば、子どものいないところで、次回以降のために伝えてください。

子どもの態度が悪いときは『ちゃんと話を聞きなさい』、話の終わりには『ちゃんと謝りなさい』などと、子どもに『どうすればよいのか』を伝えるとなおよいでしょう。逆に父親が叱っているときは母親はなるべく口出しせずに見守り、必要であれば、子どもと父親の両方をフォローしてあげるとよいでしょう。せっかく叱った父親の立つ瀬がなくならないよう、子どもの前で叱った内容を否定しないことが大事です。

また、『お父さんと同意見である』と言いつつも『いつもはもう少しできているのにね』と普段の子どもの頑張りをフォローしてあげると、父親が叱り過ぎてしまうことを防ぐことができます」

Q.育児に不慣れな男性の中には「叱っても言うことを聞かない」などと、叱ることに苦手意識を感じる人もいると思います。うまく叱れる方法はあるのでしょうか。

雨宮さん「育児に不慣れな男性は子どもとの信頼関係を構築している最中なので、まずは一貫性を持って話すことが望ましいです。

時と場合にもよりますが、昨日と今日とで話した内容が違ってしまうと子どもは混乱してしまいます。また、難しい話ですが『自分ができないことは強く言わない』『子どもが素直に聞き入れられるよう話し方を工夫する』の2点が重要です。いつも、奥さんに『靴下脱ぎっ放し、シャツ置きっ放しにしないで!』と注意されているお父さんに『置きっ放しにするな、片付けろ!』と言われても、子どもは『お父さんだってできていないじゃん!』と感じてしまいます。

そこで『置きっ放しにしないようにしよう、片付けよう!』と、子どもに行動を促す言い方に切り替えるだけでもうまくいくことがあります。叱るのはとても労力が要ることです。言い逃げにならないように、話がきちんと着地するまで付き合う必要があります。叱り始めたら、ゴールにたどり着くまで責任を持ってください。どうして欲しいのかを具体的にハッキリと伝えていくことも大切です」

Q.子どものしつけについて、夫婦間でもめないために必要なことはありますか。

雨宮さん「夫婦は元々、別の家庭で育ってきたということを忘れず、事前に価値観を共有し、意見をまとめておくとよいでしょう。『そこは別にいいんじゃない?』『ここはもっと厳しく伝えるべきだ』など、よしあしだけではなく、加減もある程度統一しておくとよいでしょう。例えば、『あいさつやお返事は大事』とする教育方針の中で『お片付けをしなさい』と声を掛けた際に子どもが何も返事をしなかったとき、以下のような選択肢が考えられます。

・『次からはお返事もするように気を付けなさい』と注意をする
・その場で、先ほどしなかった『返事』をするように促す
・片付けなさいという注意に、無言だが行動しているから、その部分については不問とする

これらは、実際に今まで出会ったご両親の価値観の一部です。何が正解かということではなく、夫婦間での正解をあらかじめ決めておくと、叱るときに一貫性を保つことができます」

Q.子どものしつけに父親が協力的でない場合、母親はどのように父親に協力を求めるとうまくいくでしょうか。

雨宮さん「相手に変わってほしいときはまず、自分の考えを変えることが必要です。『父親なんだからできて当然』という意識を捨てて、『少しでもやってくれたら上々』という考えで、少しずつ、具体的にしてほしいことを共有することから始めてください。

一般的に、母親に比べて、父親は子どもと接する時間が格段に少ないので同じようにはいきません。子どもと過ごす時間を仕事におけるキャリアと考えると、父親は『後輩』のような立場になります。まだ知らないこと、できないことがあっても、未来のために覚えてもらいましょう。男性と女性では考え方があまりにも異なるので、伝えずに『察してほしい』というのは難しいです。そこで、協力してほしい内容をできる限り具体的に、その理由とともに言葉にして伝えてみるとよいでしょう。

例えば、食事の際ですが、

・気付いたら注意してほしいポイントは?
→『前を向く』『口を閉じてかむ』『両手で持つ』『背中を伸ばす』『箸などを使う』

・どうして注意してほしいのか?
→子どもが上手に安全に食べられるよう、気付いた人がその場で子どもに伝えたい

・この声掛けをすることのゴールは?
→日々の積み重ねで、いつかできるようになればよいので今は完璧でなくてもよい

などとタスクを明確にして、『何をしてほしいのか』『どのタイミングで注意してほしいのか』と『どの程度の達成度が求められるのか』理由とともに伝えるとよいでしょう」