寒い季節になると、「おしるこ」「ぜんざい」といった温かい甘味が食べたくなります。おしるこ、ぜんざいといえば、「甘く煮た小豆に、餅や白玉を加えた食べ物」ですが、ネット上では両者について、「どちらも同じもの?」「違いがよく分からない」「意識せずに食べていた」「地域差はあるのかな」など疑問の声が多く上がっています。

 見た目や材料がよく似ている「おしるこ」「ぜんざい」は何が違うのでしょうか。和文化研究家で日本礼法教授の齊木由香さんに聞きました。

いずれも、小豆を砂糖で煮て餅などを入れる

Q.「おしるこ」と「ぜんざい」は何が違うのでしょうか。

齊木さん「『おしるこ(汁粉)』と『ぜんざい(善哉)』はどちらも『小豆を砂糖で甘く煮て、餅や白玉団子を入れたもの』ですが、関東では汁気の有無、関西では使う餡(あん)の違いで区別されています。

関東では、おしるこは『汁気があるもの』、ぜんざいは『汁気がなく、餅や白玉が添えられているもの』とされています。おしるこの中でも、粒あんを使っているものは『田舎汁粉』、こしあんを使っているものは『御膳汁粉』と分かれています。関東では角餅を使うのも特徴です。

関西では、おしるこは『汁気があり、こしあんを使ったもの』、ぜんざいは『汁気があり、粒あんを使ったもの』とされています。他にも、汁気がなく、粒あんを使い、餅を添えたものを『亀山(かめやま)』『金時(きんとき)』と呼び、関西では丸餅を使うのが特徴的です」

Q.おしるこ/ぜんざいの見分け方を教えてください。

齊木さん「関東においては、粒あん/こしあん問わず、汁気のあるなしで見分けます。粒あんでもこしあんでも『汁気のあるもの=おしるこ』『汁気のないもの=ぜんざい』です。関西においては、共に汁気のあるもので、粒あんかこしあんかで見分けます。『粒あんの場合=ぜんざい』『こしあんの場合=おしるこ』になります」

Q.「おしるこ」「ぜんざい」の発祥や成り立ちを教えてください。

齊木さん「もともと『しるこ』は小豆料理のことではなく、『汁の具』のことを指していた言葉です。江戸時代の句集『寛永発句帳(かんえいほっくちょう)』に載っている『芋の子もくふやしるこのもち月夜』という句は、『十五夜の満月の夜に、芋の子を汁の実(しるこ)として食べた』という意味です。つまり、寛永(1624〜44年)のころの『しるこ』は『汁の実』を指していました。その後、江戸時代後期には、甘い小豆の汁を広く庶民も食べるようになり、現代の『しるこ』につながったと思われます。

ぜんざいは、室町時代の公卿(くぎょう)である一条兼良が『新年の善哉(ぜんざい)』という言葉を残しています。『善哉』は『感動や褒めたたえる言葉』の意味、あるいは『良いと感じるさまや、喜び祝うさま』として使われており、祝いの意味を込めた食べ物だったようです。

また、一説には、10月に全国の神様が集まって会議をするという出雲(島根県)で、『神在祭(かみありさい)』という神事が行われるのですが、その際に振る舞う、小豆と餅をだしで煮た雑煮『神在餅(じんざいもち)』が出雲弁のなまりで『ぜんざいもち』と変化していったともいわれています」

Q.おしるこ/ぜんざいの正式な食べ方はあるのでしょうか。

齊木さん「おしるこやぜんざいは、基本的に和の食べ物なのでお箸でいただきます。しかし、お店によってはスプーンも出るところがあります。おしるこやぜんざいに限ったことではないのですが、スプーンを使う際には、食中は椀(わん)の中にスプーンをおいて箸休めをし、食べ終えたら椀の向こう側ではなく、必ず自分の手前側に置きます。これは、口をつけた部分を向こう側にいる方に向けないよう配慮するためです。なお、箸休めの際、椀に対してスプーンが大きい場合は椀の外においても構いません。

食べる時期としては、本来はお正月の伝統料理の一つとしていただきます。年神様(としがみさま)が去った後のお下がりの鏡餅をいただくのが『鏡開き』となり、ぜんざいに、このお下がりのお餅を入れて食べます。これは古来、赤い小豆に邪気を払う魔よけの意味があり、武家社会において新年の仕事始めや道場開きに小豆を甘く煮て、鏡餅を食べていたことが由来とされ、その年の幸福を願っていただくものです」

Q.関東と関西以外では、おしるこ/ぜんざいはどのように食べられているのですか。

齊木さん「北海道では、おしることぜんざいは、はっきり区別されていません。一部の地域では、餅や白玉団子ではなくカボチャを入れて『かぼちゃしるこ』として食べられています。沖縄では、かき氷に餡と白玉を乗せたものがぜんざいとして食べられています。地域によってさまざまな食べ方があるので、各地にお出かけの際は、地域の気候や歴史に思いを寄せて食べてみてはいかがでしょうか」